十四話 ノアの力
はあ……爆発魔法使えない事は別にいいけど、スケルトンしか召喚できないっていうのはなァ。
なんかもっとこう精霊とか魔獣とか、そういうのも召喚したいな。
「ユウカ」
「ん、何?」
「落ち着きましたか?」
「ああ、大丈夫。はは」
うう、心配されてる。
まあそうだよね、あんなにショックを受けてるのを見たんだから。
「それなら良いのですが……それとユウカ、遺跡の事なのですが」
「ああそうだ、攻略しないとね」
そういえば、あの魔法使いの遺言なんだよね。
あの人、結局不老不死にはなれなかったし……予言であの塔が焼け落ちるのがわからなかったのかな?
そんなことを考えながらふとノアの顔を見てみると、少し俯いた表情をしていた。
すると突然私のほうを向き、口を開いた。
「いえ別に、その……ユウカが嫌なのなら攻略は」
「え、それで……いいの?」
「私は今まで、あの人の為にユウカと行動を共にしていました。ですが、もうあの人のことをどうとも思わなくて」
どうとも思わない……か。
やっぱりそれって霊体になった事と関係あるのかな……?
いや、そもそもあの魔法使いに対して好意的な感情を抱いていたのがおかしかったんだ。
「だから」
「ねえノア。私は嫌だと思ってないよ」
ノアがこの身体になってから昔のノアに戻ったように思ってたけど、そうじゃなくて何かの洗脳が解けただけなのかも。
そうだとしたら、魔法使いには何かしら思うところがあるかもしれない。
「ユウカがそれでいいのなら」
「それにね。私、気になるの!」
「え?」
「いやほら、この遺跡のボスはどんなのかとかさ……それに、この世界のことはいっぱい知っておきたいから」
私は知りたいと思っている、この遺跡のことを。
私の力のことを。
そしてこの世界のことも……。
あと進化とかスキルとかそういうのがあるかどうかも知りたいよね。
いや、むしろそれが一番気になる。私が進化したら……幽霊の進化って何?
「………フッ。ユウカは最初から好奇心で動いていたのですね」
「エヘヘ」
ノアの表情には少しだけ笑みがこぼれていた。
「ユウカのことが段々わかってきました」
「フッフッフ。もっと私の事を知るがいい。その為に、いっぱい話をしようね」
「……はい!」
ノアの表情は今まで見た事ないほどに笑顔だった。
「ウガァァ」
すると突然下へ続く階段から数体のアンデッドが這い出てきた。
そのアンデッドは真っ先に私達のほうへ向かってきた。
「ガァァ」
「アンデッドか。ノア、私の後ろに」
「ユウカ、私はこれからユウカのために生きます。だから、私はユウカの力になりたいです」
そう言うとノアはフワッと身体を宙に浮かせ、右手をアンデッドのほうへかざした。
するとノアの右手から青白く光る炎が現れた。
『ドォン!!』
そしてその炎をアンデッド達の足元に飛ばした。
放たれた炎は眩い光と爆音と共に、付近の地面に大きい穴をあけた。
「こ、これは!」
「この威力は、一体……?」
な、なにィ!
あれは、まさか……爆裂魔法少女、だと。
ま、まさかノアが……というか、なんなんだあの爆発は……物凄い威力だったけど。
「ノア、大丈夫?」
「大丈夫です。でも一体あの威力は」
「爆裂魔法少女の称号は譲るよ」
私はノアの肩に手を置きながら語りかけた。
そしてノアは戸惑った表情で私を見ていた。
「えっと、ユウカ? 爆裂……なんですか?」
「爆裂魔法少女だよ、ノア」
私はノアの顔じっと見つめながら、その単語を言い放った。
それを聞いたノアはさらに困った表情をしていた。
「私の意志を継いでくれ、ノア」
「意志……それはどういう?」
意志、か………考えてなかった。
うゥん、意志意志。
「なんかこう……崇高な意志を」
「えっと、私に何を継がせたいのですか………ユウカ、何も考えていませんね?」
「…………エヘ」
私はしばらくの沈黙の後、明るい声で返事をした。
ノアは少しだけ笑っていた。
「それにしても、あの青い火はなんだったの?」
「わかりません……ですが、さっきからとても力が溢れ出てきます。これは、魔力なのでしょうか」
「……魔力」
そういえばノアの身体がさっきよりも濃い色になってるような……気のせいかな?
なんかどんどん透け透け具合が無くなって………て、私なに言ってんだ。
「そういえば、私の身体は霊体ですから魔力も弱まっていくはずなんですが……」
「今は逆ってことか……」
うゥん……そう考えると、謎ばかりだな。
ノアのこの状況もそうだけど、魔眼のことも。
でも、あんなことが出来るならこの先も安心だな。
スケルトンは遠いところまで攻撃できなかったから、不安材料も大分減った。
「まあ今考えても答えはわからないし、遺跡の攻略に集中しよう」
「ええ、そうですね」
私達は散らばっていた荷物をまとめて、遺跡攻略の準備をした。
いくつか壊れて使い物にならない道具もあったが、概ね破損せずに残っていた。
「お!」
「どうかしましたか、ユウカ?」
「いやァ、地面がもう直ってるなとおもって」
さっきまで大穴が空いていた地面は、すっかり元通りになっていた。
「さっきのミノタウロスが遺跡の主ではない証拠ですね」
「ああ、そっか、そうなるのか」
「はい。この遺跡はどこまで続いているのでしょうか……?」
うゥん。もう次で終わってほしいな、いい加減。
というか、このまま下の階層に行き続ければ、上に上がるの面倒になるんじゃ。
一気に出口まで瞬間移動できる魔法陣かなにかが設置してあったりするといいけど。
「ユウカ、準備はできていますか?」
「うん……あ!」
「どうかしましたか?」
そうだ、私の体って動きにくいから正直歩きたくないんだよね。
だからあのとき。ミノタウロスと戦っている時に閃いたあの方法で。
私は近くにいた一体のスケルトンの背中に乗って、そのスケルトンにお辞儀をさせるかの如く、背中を曲げさせた。
「ユウカ、これは」
「フフンッ、ノア見てよコレ。今まで苦労していた移動をスケルトンに任せる事で、私の安全性はより一層増した」
「おお……ですが、誰にでも思いつきそうですよ」
ぬわッ、ノアがそんなに辛辣だったとは。
まあ、自分の考えを主張しているのはいい事だよね……でも、少しでいいから褒められたかったよ。
「スケルトンはその体勢で歩けるのですか?」
「あ、確かに。ちょっとやってみる」
私は自分が乗っているスケルトンに前へ進むように命令した。
するとスケルトンは前屈みの状態で器用に歩き始めた。
「おお! できてるよ!」
「はい、凄いバランスです」
なんだろう、肉が付いてない分楽なのかな?
というか、よくよく考えてみればスケルトンっておかしくない?
体を動かすのには筋肉が必要だし……んん、気になる。
「ねえノア、ふと思ったんだけど」
「なんですか?」
「スケルトンってどうやって動いてるの?」
「……召喚されたスケルトンは魔力で動いています」
まあ、魔力だよね。
アレ? でも私の魔眼にはスケルトンの霊体が見えないな……魔力を見ることが出来るなら、見えないのはおかしいよね?
「スケルトンの霊体が私には見えないけど」
「本当に見えないのですか……? それなら魔眼をうまく扱えていないのかもしれません」
え、私まだ未熟者?
というか私は魔眼を常に発動してるんじゃ……。
「ユウカは無意識に、魔眼で見たいものを選んでいるのかもしれません」
「ん、魔力って種類があるの?」
「いえ、種類というより濃さですね。ユウカは魔力の濃いものだけを見ているのかも」
ああ、なるほど。
まあそうだよね、小さな魔力まで見ていたら目の前が見えなくなりそうだし。
「調節は難しいですか?」
「うゥん。やり方がわからない」
「そうですか。まあ別に困る事は無いと思いますけど」
確かに困る事は無いだろうけど、自分の魔眼は上手く扱いたいな。
今後の課題にしておこう。
「それでは行きましょうか」
「うんそうだね、行こう」
私達は階段を降りて下の階へ向かった。
そこは奇妙な模様が壁や床全体に彫られた迷路だった。




