(32)荒廃世界で
有り得るかもしれない未来のお話です。
「あ、そう言えば」
上司からの指示待ち中に相棒である女が声を上げた。だが傍らの男はそれに目を向ける様子もなく、頻りに自分の持つ武器の微調整をしている。
「アタシ、今日誕生日なんですよ」
「・・・へえ」
「いや、『おめでとう』くらい言って下さいよ、虚しい自己申告なんですから」
「へぇへぇ、オメデト-」
「うわ、吃驚するくらい心籠ってない」
そう女が言った時、無線から通信が入る。
どうやら彼等が倒す筈の敵が自爆して味方諸共巻き込んだらしい。その通信に舌打ちを零した男は女の話に生返事をするほど真剣にしていた武器の微調整をやめ、胡座をかいた。
「で、幾つになるんだ?」
「女に年齢聞くとかセンパイ、デリカシー無いですね」
「言ってろ」
女の方はぐいーっと伸びをして立ち上がった。
彼等が隠れていたのはもう長い間使われていない半壊したビルの屋上。そこから下を見た女の目には水に浸かった道路や信号機、民家が映っていた。
水自体は綺麗なものらしく時折、奇妙な形の魚が泳いでいる。
「誕生日プレゼントでも下さいよ」
「図々しいな、・・・ほれ」
「わあ、ありが・・・たくねぇ。何ですかこれ」
「その辺に生えてた草」
「まさかの雑草」
女はそんな誕生日プレゼントをぽいっとその辺に捨てると「さっさと戻りますよ」と歩き出す。
男は捨てられた雑草をわざわざ踏み付けてから女の後を着いていく。
が、そんな二人にまた通信が入る。
新手らしい。二人はニヤリと笑った。
「これ、神様からの誕生日プレゼントですかね!」
「神さんも随分物騒になったな」
「あ、センパイ! その敵アタシが狙ってた奴!」
「うるせぇ、早いもん勝ちだ」
半壊したビルの屋上から男女の楽しそうな笑い声が聞こえたがそれを聞いていたのはもう人の住めない水の中、奇妙な形の魚だけだった。
これは遥か未来、荒廃したどこかの国のお話である。
END
こういう世界観、とても好きです。
閲覧ありがとうございます。




