(30)遥か昔の現行犯
今回は残酷な表現があります。
苦手な方は飛ばして大丈夫ですっ
くぅん、と横で甘え鳴く愛犬の頭を撫でる。
カリカリと俺の膝辺りを引っ掻く愛犬に止せ、と笑った。
仕方無い、とハンドバッグに入っている小さな干し肉を愛犬に与える。
はぐはぐ、と美味しそうに干し肉を貪るのを見遣ってから立ち上がってランタンに火を灯す。
「・・・もう少し、此処に居ようか」
と振り返った先には小さな棺桶。
中は見ない。もう決めた。
見たって仕方が無いのだから。
中は見ない。もう見たくない。
バウ、と鳴くのは愛犬。どうやらもう干し肉を食べ終えてしまったようだ。しかし腹が満たされたのかもう催促するようなことは無かった。
「ダイ、もう今日は眠ってしまおう」
そうして、もう、
忘れてしまおう。
――――――――――――――――――――――。
蒼鷺はそれを見て顔を顰めた。
大型犬の死骸だ。もう随分前のものなのか、殆どの肉が腐って骨が出てしまっている。
首輪には何か名前が書かれていたんだろうが文字が掠れてしまっていてもう読めなくなっていた。
「蒼鷺先輩、こっちには壊れたランタンがありました」
「なあ、ヨシ」
「は、はい!」
「・・・・・俺ァ、この事件に関わらねぇ方がいいと思うんだよな」
「・・・この事件って・・・女児切断殺人事件ですか?」
蒼鷺は後輩のヨシに弱音を吐く。
ヨシは珍しいと思いながらもこんな異様な空間だから仕方無いなと蒼鷺の言葉を黙って聞くことにした。
「良くないもんが絡んでる気がする」
「・・・」
「見たろ、あのちっせえ棺桶の中」
そう言われてヨシは背後の棺桶を見遣る。
その中にピンク色の服を着た人形が入っているのをヨシは知っている。そしてその人形の頭と腕と足は胴体から切り離されていた事も。
「まるで今回の女児切断殺人事件の被害者のようだ」
「・・・ええ、被害者の笠木 藍ちゃんも事件当時、ピンク色の服を着ていましたしね」
嫌な沈黙が辺りを包む。
蒼鷺は舌打ちを零してからヨシを振り返る。
「・・・で? この地下室の奥にあった遺体の身元、分かったのか?」
「いえ、それはまだ。・・・何しろ完全な白骨死体ですから」
ヨシの言葉に蒼鷺は思わずヨシを睨みつけそうになる。
女児切断殺人事件が起こったのはつい先週。その被害者、笠木 藍の切り離された腕に油性ペンで書かれていたこの地下室の存在。
いざここに来てみれば酷い腐臭と死後何年かは経っているであろう白骨死体があるだけだった。
他に何かあるかと聞かれれば、
壊れたランタンに、一部白骨した大型犬の死骸に、あの棺桶の中の人形。
・・・気味が悪い。
『・・・い、』
「・・・? おい、ヨシ。なんか言ったか?」
「・・・? いえ、何も」
『・・・も、い』
――――ひもじい。
「・・・・・・っ!?」
「蒼鷺先輩? どうかしたんですか?」
「お前、聞こえねえのか・・・?」
「・・・? 何言ってんすか?」
怪訝な顔をしている後輩に蒼鷺は一先ず冷静さを取り戻す。そうして何故か棺桶の方を見遣った。
「・・・出るぞ、ヨシ」
「うぇ、っあ、はい!」
蒼鷺は外に出る。
もう廃れたビルの地下室。
蒼鷺は後ろを振り向いてその扉をしっかりと閉めた。
そうして慌てて後を追ってくるヨシをそのままに歩き出した蒼鷺が情けなくも震える手をポケットに入れた時だった。
――カサ、
紙・・・?
それを取り出した蒼鷺は今後一切この事件に関わらないでおこうと誓ったのだった。
〈 誰でも良かったんだ。
例えば、キミでも良かった。
残念だ。キミを喰えなくて。
ダイも、そう言ってるよ。 〉
END
多分作者はチビります。
閲覧ありがとうございました




