(23)訓練兵の憂鬱
今回はファンタジー系のお話です
『任務完了、直ちに部屋から脱出して下さい』
女性的な機械の声がした。
女が顔を上げれば足元にある白い箱の中からキーッという甲高い動物らしい声が聞こえた。
「煩い、叫ばなくても出してやるさ」
女は拳大の箱を拾い上げて横の凸を押した。
スイッチらしかったそれを押せばジーッと機械的な音を出して箱が開いた。
「キーッ!! キッ、キッーー!」
「喧しい、頭に響くだろう」
箱から飛び出たのは女の掌よりも小さな小さな黄色い猿だった。猿はキーキーと不満げに声を漏らしながらも女の肩に乗る。
「キー・・・」
「恨みがましい目をするな。コレが終わればお前も故郷に戻れるんだぞ」
「…………」
黙り込んだ猿に女は満足げに笑う。
それは馬鹿にしたようにも見える。
それに目敏く気付いて文句を言おうとした猿だったがビーッという警戒音と共に部屋の中で赤いライトが踊る。
「……油断禁物か」
「キーッ」
猿は上を見て鳴き声を零した。
そこにあった通気口に女はニヤリと笑った。
そうして御褒美と言わんばかりに猿の頭を雑に撫でてやると女は服を脱いでその袖を通気口へ結び付けた。
ぐ、と力を入れればビリ、と嫌な音を立てたのを気にせず勢いをつけて通気口へ手を掛けた。
そうして中に入れば少し埃っぽい空気に眉を寄せた。
「何処に出るか分からないなんて楽しいじゃないか」
誰に言うでもなく楽しげに呟いた女は狭い通気路の中を進んだ。
*
「まァたアイツは訓練かよ」
「シャぁっ」
無精髭を生やした男は首に巻きついた青い蛇を撫でながら女の着ていた服が垂れ下がる部屋が映る画面を見つめる。
警戒音はもう鳴っては居ないが白い箱が転がる部屋は既に白い煙に包まれていた。
「知ってるか? あれ毒ガスなんだぜ?」
「シャっ!」
「ああ、知ってるって? そりゃあ失敬」
更に巻きついた蛇に男は悪ィ悪ィと笑いながら画面から目を離して大きな会議室らしきそこで眠っているもう一人の男の頭を小突く。
「んあ?」
「寝惚けてんじゃねぇ、時間だぞ」
「あー……、アイツは?」
「通気口から脱走。滞在の時間制限あるの知らなかったみてぇだし」
蛇の男の言葉に嫌悪感を滲ませた男は頭をガシガシと掻いて立ち上がった。
「…お転婆にも困ったもんだな」
そうして男が出ていった会議室の通気口から出てきた女に蛇の男はニヤリと笑ったのだった。
「お前風呂はいった方がいいぞ」
「言われなくても」
END
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