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最弱の王  作者: ぱるお。
2話 魔法を使わない魔法使い
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種明かし

 

「じゃあ早速、教えてもらおうじゃねえか」


 放課後、ヤマトの発案で四人は闘技場に集まっていた。大会に出てしまえば敵同士だが、今は手を取り合って互いを高めあうことが最善だと話が纏まったのだ。四人はそれぞれが得意とすることも違うため、色々な視点で物事を判断できる。


 そしてここは昨日ヒノワとヤマトが闘った場所だが、今日は貸切許可を取っている為、彼ら以外誰もいない。ただでさえ広い闘技場がより広く見えた。


「なにを?」


「とぼけてんじゃねぇよ、昨日見せたあの移動術のことだ」


 昨日のヒノワの攻撃は直線的なものだったにも関わらず対処することができなかった。それほどに速かった動きを、魔力の少ない彼が一体どうやったのかが知りたかった。


「ヒメも観てたな? 昨日の闘い。どうだった?」


「う、うん。足に魔法を感じたけど、よく分からなかった……」


 ヒメは内向的な性格を除けば非常に優秀な魔法使いである。特に魔力の流れに対して敏感で、ヒノワに対しても身体強化以外の魔法の力を感じ取っていた。


「ヒメちゃん凄いね。あんなに速かったのにそんなところ気づくなんて」


 ツキヒが称賛の声をあげる。実際、その魔法の発生は一瞬であり、且つ当の本人は瞬きの間に移動していた。大勢いた観客の中でもそれに気づけたのはほとんどいないだろう。


「仕掛けは、これ、だよ」


 そう言ってヒノワは床を指差した。床には二箇所、砕かれた跡がある。彼が突っ込んだ際に元々立っていた位置だ。


「……力強く蹴って飛んだ……ってことか?」


「いや、それにしては足跡っぽくないし、なんかすすもあるよ」


 よく観察してみると、ツキヒの言う通り踏み抜いた跡とは思えない。円形に近い凹みの周りはほぼ均等に土が盛り上がり、顔を近づけると若干焦げ臭い。まるで何かが爆発した跡のようだ。


「……爆発魔法、ですかぁ……?」


「その通り、よく分かったね」


「爆発魔法ってお前、そんな素振りどこにも--」


 そこまで言って決闘のことを思い出す。彼は確かにあの技(・・・)を使っていた。


「--そうか無詠唱魔法か!」


 彼らの推測通り、ヒノワが使った魔法は初級火属性魔法である『爆裂弾』。初級魔法の中では詠唱文が長めで、消費魔力も少しばかり多い。本来の魔法は対象に向かって火の玉を放ち、着弾後小さな爆発を生み出すと言うものである。


「ヒノワ君は小さな『爆裂弾』を無詠唱で足から放ち、その爆風に乗って移動した、ってこと?」


「そういうこと。足にかけた身体強化は、足の負担を減らす為とカモフラージュの意味があったんだ」


(そんなこと言っても、簡単な話じゃねぇぞ)


 魔法は媒体を通じて魔力を外に放出し発動する。ヤマトの場合はメリケンサックを媒体としている為、『氷拳』を使った際も手から腕にかけて発動していた。ヒノワの媒体は右手に嵌めた指輪。だとしたら普通は右手から放つことになるが、それを体の中でも一番遠い足から放ったのだ。しかも移動のために通常よりも小さめの爆発を生み出していた。


 更には無詠唱魔法。魔法は魔力を体外に放出するだけでは発動されない。呪文によって目に見えない精霊達と契約を交わし、魔力の形を変換してもらい魔法となる。呪文を唱えたり精霊達との繋がりを意識することが重要になる魔法は、その発動だけでも途轍もない集中力を求められる。無詠唱魔法はその呪文を頭の中で唱え口に出さず精霊達と会話する技法であり、非常に精神を磨耗する為、実戦経験の無い学生程度では扱えるはずのない芸当だ。


 繊細な魔力コントロール力と強靭な精神力。痛みを伴うことを分かりつつも飛び出す勇気。どれを取っても努力だけでは身に付くはずもなかった。


「お前、一体何者なんだ? どこでこんな技を身につけた?」


 初等部から火那魔法学園に通っているヤマトやヒメはおろか、学園内の教師陣でも中々扱えないほど、ヒノワの使う技は一級品である。この学園は国内どころか世界中でも指折りの学園だが、それだけに編入前の段階でどのように力をつけたのかが一番の疑問であった。


「育ての親が優れた魔法使いで、その人に修行をつけてもらってたことがあったんだ」


「育ての親、ねぇ……有名な人か?」


 恐らく成人を迎えた魔法兵ですら使いこなすのに相当な訓練を積むであろう技術を、十六にも満たない少年に仕込めるというのは相当な実力者であるはず。そう踏んでの質問だった。


日ノ出(ひのいで)アキラって女魔法使いなんだけど……」


「日ノ出って、あの『聖母』か!?」


 ヤマトが目を剥いて驚いた。『聖母』日ノ出アキラと言われれば国内で知らない者などいないほどの有名人であり、そして魔法使いとしての能力も折り紙つきの人物だ。


「納得かも、ですねぇ……」


 ヒメも感嘆の声をあげる。日ノ出アキラは戦時中はいくつもの武功を挙げ、戦後も常に人々のために活動を続けた魔法使いの鑑である。魔法科目の最新の教科書に名前が載る程だ。


「……でも、ということは……」


「あ?」


 ヒメはその言葉の続きを口に出そうとして、しかし押し留めた。その様子にヤマトが首を傾げる。


 日ノ出アキラは度重なる戦に繰り出し、味方にいくつもの勝利をもたらした魔法使いの一人である。だが彼女が教科書に載るほどにまでになった理由はそこだけではなかった。


 彼女は戦後に特に活躍し、その中でも特に目につくのが彼女自身が院長を務める孤児院『たいようの楽園』の設立である。戦争によって親や兄弟を失った子供達の手を取り、怒りや哀しみを抱き締め、喜びや楽しみを振り撒くことを生涯の務めとしたその心意気を讃えられたのだ。


 そんな『聖母』が育ての親であり師と仰ぐヒノワを前に、ヒメは悟ってしまったのだ。


(……黒子君は、戦争孤児、なんですね……)


 それでも強く在る彼を見て、彼女は唇をそっと噛んだ。


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