暗雲
「何があったか、話してくれませんか?」
「…」
思い出せるのはあの目だけ。
あの目が。
あの目は。
「お腹、減ってませんか?」
「…。」
なんで?
減ってないのに。
「やっぱり君達は…
今用意しますね。」
「お待たせしました。
お口に合うといいですけど。」
「…」
匂いで分かった。
「もちろん毒なんて入ってないませんよ。」
それも匂いで分かる。
分かってしまう。
やはりまだ自覚が足りていない。
私は人じゃない。
そしてあの目は、さらに化物の目。
死なないためには、もう、
「…」
人ではいられない。
それでも私が生きたいのなら。
ここでタつ必要がある。
「急かさないので、食べ終わったら教えて下さい。
2人が帰ってこない理由を。」
「…」
なんと言えばいいのだろうか。
結果から言えば、彼らはただ、ただ犬死しただけ。
私が逃してもらえた理由もハッキリとは分からない。
それをどう伝えれば私はまだここに居られるだろうか。
「…大方予想はついてますので、確証が欲しいんです。」
「狩の帰り際に、あの目に会った。
2人は多分殺された。
私はただ逃げた。
それだけです。」
「覚えてるのはそれだけ、って事ですか。
その『目』は何と呼ばれていました?」
その目を持つものの名は、
人形人食種、高崎綺音、
「まあ、その予想も付いていますが。
あの2人が帰ってこない、つまりその目は死神と呼ばれていませんでしか?」
頷く。
「よく、逃げられましたね。」
「…」
「大丈夫ですよ、私も逃してもらった事がありますから。」
「!」
「そんな事でここを追い出したりはしませんから。
ここはそういう者達の集まりなんですから。」
笑う浦野さんに少し安堵した。
窓が割れた。
振り返ると人が転がっていた。
見上げると人が居た。
「やっと見つけたぜ。
嬢ちゃん案内ご苦労さん。」
耳障りの悪い声。
「あなた達は!?」
「知ってどうする?
どうせここで死ぬのに。」
「マズイ!」
浦野さんがボタンを叩いた。
「安心しろよ。
全員殺してやるからよ。」
警報が鳴り響いた。




