です
「本当についてくるのか?」
「いつかは慣れなきゃいけないんでしょ?
なら早い方がいいじゃないですか。」
「お前がそれでいいならいいが、
ま、俺から誘った事だしな。」
人通りの少ない所を歩いていた。
「お前はどこまで自分の事を知っている?」
「だいたいは聞いたけど、実感があんまりないです。」
「じゃなかったら吐いたりしてないもんな。」
「やっぱり意識すると、まだどこかに抵抗があります。」
「そりゃそうだ。
だから時間をかけて慣らして行くんだ。」
「はい。」
「あまり生き急ぐなよ。
死にたくないなら尚更。」
それから標的を決めた。
「あいつがいい。」
「なんで?」
「直感だ。」
路地裏に入り込んだ男を背後から襲う。
頭を掴みそのまま力任せに地面に叩きつける。
そのまま何度も持ち上げて、打ちつけた。
「よし。まあこんなもんだ。」
その死体を背負う。
「さすがにここじゃ解体せないからな。
帰ろうぜ。」
「…」
「…」
「…ごめんなさい……。
「何に謝ってるんだよ。」
「……。」
「…ほら、ボサッとしてないで早く帰ろうぜ。
早く帰らないと…
「死神が来ちゃうよ」
何かが上から飛び降りてきた。
「最悪だ…
ああ、まあ、そういう事だ。」
「ふふふ、来ちゃった」
誰?
「まず、今すぐ逃げろ。
そして、俺の事は忘れろ。
最後に、無駄死にだけはするなよ。」
「もういい?」
「せめてコイツが逃げるまではダメか?」
「ふふ、そう言われるとダメって言いたくなるよね。」
「行け!!」
「私を見たからには
生きて返さないけどね。」
ダメだ。
逃げなきゃ!
あの目を知っている。
あの目に見られた事がある。
殺される。
だけど、足が竦む。
まるで自分の体じゃないかの様に動かない。
嫌だ、まだ死にたくない!
「ちっ」
山影さんが言ってる事は理解出来る。
出来るけど動けない。
山影さんが庇ってくれている事はわかる。
それでも動かない。
ここで死ぬ。
皆殺しにされる。
「情けないわね。」
背後から声がした。
その声はそのまま私の横を通り過ぎて山影さんの前にたった。
「あらあら、こんにちは〜。
殺されに来たの?」
「逆よ。
あんたを殺しに来た。」
「いやーん怖〜い。」
「すまん、少しの間頼む!」
「早くしてよ。」
「ああ!
そら、逃げるぞ!!」
ダメ!
振り返ったら!!
「行かせない!」
あれ?
生きてる?
なんで?
「大丈夫、あいつは強いから。
とにかくオレ達は生き延びなくちゃならない。」
山影さんに抱えられている。
「こんな所で死んでられない。」
「後ろ!」
「え?」
山影さんの胸を貫く手。
「言ったでしょ、生きては返さないって。」
山影さんに腕から解放され地に落とされる。
「ひっ!」
あの目が近付いてくる。
殺される。
無意識の震えと失禁。
祈る事すら忘れてその目に恐怖する。
「あっ…ぁっ……、」
「あっ!そうだ!
君、何処かで見覚えがあると思ったら!
あの町の子じゃん!
危うく食べちゃう所だった!
あっぶなーい。」
え?
「そういう訳だから、今回だけは見逃してあげる。
よかったね、長生きできて。」
血が染み付いたその笑顔を一生忘れる事はないだろう。
その後、死神と呼ばれる少女は後を追ってくることもなく、ただ微笑んで手を振っているだけだった。
私は何もかもを忘れてただ一心不乱に逃げ帰った。




