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秘密の一枚 ―後日談―

ハロウィン話は終わりと言いながら

続きを書いちゃいました。


時は流れて現在


仕事終わりに、いつもの場所で。昔の仲間と



午後十一時を少し回った頃。


Bar Havenには、落ち着いたジャズが流れていた。


奥のテーブル席では、レオン、トム、ジェイクの三人がグラスを傾けている。


カウンターには、咲也とマイク。


二人とも、すでに二杯目のウイスキーを楽しんでいた。


『……おっ、懐かしいな』

スマートフォンを眺めていたマイクが、不意に呟いた。


『サクヤ、これ覚えてるか?』


『ん?』


差し出された画面を覗き込む。


中央には、カボチャのトロフィーを掲げた魔女。

その周囲を、思い思いの衣装をまとった仲間たちが取り囲んでいる。


球団シアトル・ノクターンズのハロウィンイベントのものだった。


『……ああ、懐かしいな』


『球団の公式サイトに、まだ残ってたぞ』


『そうか』


『このとき、お前、人気投票で優勝したんだよな』


ため息をつく。

『……いまだに納得がいかない。悪役だったんだぞ、俺』


『ハハッ! 子どもたちに大人気だったじゃねえか』


咲也は苦笑した。

『あれ、人気だったのか?』

子どもたちにいいように遊ばれていた気がしないでもないが。


思い返せば、呆れるほど騒がしい一日だった。


しかし、子どもたちの笑顔を思い出すと、自然と頬が緩む。


「楽しそうですね。

何をご覧になっているんですか?」


グラスを片づけていた湊が、カウンター越しに声をかけてきた。


「ああ、昔の写真だよ」


『ミナト、これ見てみろよ』


マイクがスマートフォンを差し出す。


湊は画面を覗き込んだ。


「……あ、高宮さんですね」


湊は写真の中央で嫣然と微笑む魔女に目をとめた。

その口元が、わずかに緩む。


「……こんなふうに笑う高宮さん、初めて見ました」


「ああ。悪役をやらされたんだよ」


「ふふ。よくお似合いですよ」


「……それ、褒めてるのか?」


「もちろんです。

カッコいいですよ。

惚れ惚れします」


「……言い過ぎだよ」

咲也は困ったように笑った。


マイクは二人のやり取りを眺めていたが、ふと思い出したようにスマートフォンを操作した。


『……そういや、こんなのもあったな』


『ん?』


『ほら』

差し出された画面を見て、咲也の表情が固まった。


黒と深紫のドレス。

尖った帽子。


ソファに腰かけ、こちらを振り返る自分。


上着もケープも脱ぎ、背中の大きく開いた衣装のまま、帽子のつばに手を添えている。


――あの写真だ。


『……おい、マイク』


『いい写真だろ?』


『……まだ持ってたのか。消せ、今すぐ』


『いやあ、今見てもすげえ色気だな』


『……マイク』


『分かった分かった』

そう言いながら、マイクはカウンターの向こうへ目を向けた。


『なあ、ミナト。こっちも見てみろよ』


『……おい!』

制止する間もなく、スマートフォンが湊へ差し出された。


湊は画面を覗き込んだ。

そして、動きを止めた。


「……蒼井くん?」


返事がない。


「あ、いや。これは違うんだ。

あのときは上着も着ていてね。

それを脱いで休んでいたところを、勝手に撮られて……」


しどろもどろになりながら、咲也は思った。

――何を言い訳しているんだ、俺は。


やがて、湊がゆっくりと顔を上げた。


「……綺麗ですね」


「……え?」


「すごく、綺麗です」


湊はもう一度、写真へ目を落とした。


「……でも」


「ん?」


「こんな素敵な高宮さん、あまり他の人には見せたくないですね」


困ったように微笑む。


「……なんて。すみません」


どう答えればいいのか分からず、咲也は視線を逸らした。


顔が熱い。


『……なあ、サクヤ』

隣から、マイクが声を潜めて話しかけてきた。


『何て言われたんだ?』


『……別に』


『その顔で“別に”、はないだろ』


『……うるさい』

マイクは楽しそうに笑った。

『ま、写真はお前に送っとくよ』


『……いらない』


『そう言うなって。ミナトに見せてやれよ』


『……余計なお世話だ』


『ハハッ!』


マイクは写真を咲也へ送ると、咲也が見守る中、自分のスマートフォンから写真を削除した。


『ほら。これで満足か?』


『……最初からそうしてくれ』

咲也がため息をつく。


マイクはグラスを傾けながら、カウンターの向こうにいる湊へ目を向けた。


『……それにしても、ミナト、お前のこと、すげー好きなんだな』


『……何だよ、急に』


『いやあ。あんな顔で写真を見られちゃな』


咲也は何も答えず、火照った頬を感じながら、グラスを傾けた。


『で、どうなんだ? お前ら、もうヤったのか?』


『……っ!』

危うくウイスキーを吹き出すところだった。


『お? その反応は、もしかして、まだなのか?』


マイクの視線から逃れるように顔を逸らす。


『おいおい、マジかよ!』


『お前ら、ほんっと初々しいな』 


『……うるさい』

もう何を言う気にもなれなかった。


マイクはしばらく面白そうにこちらを眺めていたが、不意に口角を上げた。


『……そうだ。いいこと思いついた』


嫌な予感がした。

『……なんだよ』


『まあ、楽しみにしてろって』


『……おい、マイク』


『秘密だよ、秘密』


にやりと笑うマイク。


咲也は、深いため息をついた。


そのとき。


「……高宮さん?」


湊が近づいてきた。


「どうかしました?」


「……いや、何でもないよ」

咲也が首を振ると、湊は小さく微笑んで仕事に戻っていった。


その後ろ姿を見送りながら、マイクがぽつりと呟く。


『……いい子だな』


『……ああ』

咲也は素直に頷いた。


すると、マイクはますます楽しそうに笑った。


『秘密の一枚」の咲也を湊に見せたいがために書きました(笑)


そして続きます。


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