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たい焼きパーティ

たい焼き の続きです


『おい! 何があった!?』


休憩スペースに神代が飛び込んできた。


『……神代?』


突然の登場に、咲也が顔を上げる。


神代はスーツ姿で、息を切らしていた。

仕事中に慌てて駆けつけたのだろう。


『コウタロウ! 見ろよ、これ!』


レオンが満面の笑みでたい焼きを掲げた。


『……は?』


『タイヤキだ!』


しばしの沈黙の後、神代が口を開いた。


『なあ、レオン』


『ん?』


『お前、大変なことになったから、すぐ来てくれって言ったよな?』


俯いたまま話す神代の声は静かだった。


その静けさが、かえって不気味だった。


『そりゃ大変なことだろ! こんなすげーもん見つけたんだぞ!

仕事してる場合じゃねえ! 

一緒に食べようぜ!』


『なるほど。

つまり、そのタイヤキが“大変なこと”だったってわけだな』


『俺は……お前らに何かあったのかと思って、仕事を抜けてきたんだぞ……』


神代の肩が震える。


『それが、タイヤキを見せたかったからって……なんだよ、それ。理不尽すぎんだろ』


顔を上げ、きっと睨みつける。


『ジャイアンか、お前は!』


思わずずっこけそうになった。


ーー何故、ジャイアン。


確かに理不尽な存在といえばそうだが。


ーーもうちょっと、良い例えはなかったのか?


『神代。それ、レオンには分からねーだろ』


案の定、レオンが不思議そうに首を傾げる。


神代はハッとしたように咲也を見る。


そして、深いため息をついた。


『すまん。取り乱した』


神代は一度目を閉じ、額を押さえた。


『レオンには何を言っても無駄だしな。

ちょうど昼休みを取ろうと思ってたし。もういい……ことにする』


まるで自分に言い聞かせているようで、咲也は同情を覚えた。


しかし、神代の言った通りというかなんというか、

レオンはまったく気にしていない。


むしろ、何かを思いついたようにスマホを取り出した。

誰かに電話をかけ、短いやりとりの後、通話を終える。


『よし! これで全員集合だ!』


『……本当にマイペースだよな。お前』

神代の呆れた声など気にも留めず、レオンは上機嫌だった。


それから間もなく。

マイク、ジェイク、トムの三人が姿を現した。


『おお、すっげえな! なんだよこれ!』


テーブルいっぱいに並べられたたい焼きを見て、マイクが驚く。


『タイヤキっていう、魚の形のケーキだ。うまいぞ!』


レオンが得意げに胸を張った。


『へえ、ユニークだな』

マイクがたい焼きを一つ手に取り、ふと神代に目を向ける。


『お、コータロー。お疲れさん。今日はスカウトの仕事か?』


『……ああ』

神代が苦虫を噛み潰したような顔をした。


『俺、こいつに呼び出されたんだよ。これで』


テーブルに並んだたい焼きを指差す。


『仕事中にもかかわらず、だ』


『ハハッ! そりゃ災難だったな!』


マイクに笑われ、神代は唇を尖らせた。


『笑い事じゃねーよ。

お前らしっかり手綱握っとけよ』


マイクが笑いながら肩をすくめた。


『いや、無理だろ。それは。諦めな』


その横では、ジェイクが早速たい焼きを頬張っていた。


『へえ、本当に魚の形だな』


トムが興味深そうに覗き込む。


『ん? 中にも何か入ってるな』


『カスタード』


ジェイクがぼそりと答える。


『ほう。クリーム入りなのか』


『……うまいぞ』


『じゃあ、俺も食べてみるか』


トムはジェイクの手元にある紙袋へ手を伸ばす。


『……お前ら、自由すぎんだろ』


神代のぼやきに、咲也が小さく吹き出した。


『……まあ、せっかく来たし。食えよ。神代』


たい焼きを一つ差し出す。


『……ったく』

ぶつぶつ文句を言いながらも、神代はそれを受け取った。


一口かじる。


『……うまいな』


『だろ!?』


すかさずレオンが身を乗り出した。


『アンコっていうんだ! すげえだろ!』


『……ああ、知ってる』


神代がニヤリと笑う。


『だが残念だったな。

俺が今食べたのはチーズだ』


『何っ!?』

レオンが目を見開く。


『そうきたか!』

何がそんなに楽しいのか、レオンは腹を抱えて笑い出した。


『食べるまで何味か分からないって、いいな! びっくり箱みたいだ!』


『……店じゃ分けてあったんじゃないのか? お前が適当に並べたから分からなくなったんだろ』


咲也がそう指摘したところで、レオンは聞いちゃいない。


休憩スペースに、しばらく楽しそうな笑い声が響いた。


お読み頂きありがとうございました。

本当はエックスにあげるつもりだったんですけど、当初の予定より話が長くなって、エックスでは読みづらかったのでこちらに。番外編の項目を作ったのもこれをアップしたいがためでした^^;

不憫な神代が書けて楽しかったです。当初のイメージから大分変わりましたね。彼も。

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