九綴目 『横水貴予』
「私、人の『考え』ているコトが見えるんです。」
なるほど、だから若く見えるのか、と、青山は一人で納得した。
「中学生の頃から動植物の『考え』が見えていたんですが、二十歳の誕生日でレヴェルアップして、人間の『考え』も見えるようになりました。ただ私に見えるのは、いい人の『考え』だけです。悪い人の考えはその前に雲があって中身が見えません。無理に見ようとすると体調を崩して、嘔吐するコトもあります。まぁ中途半端な能力です。」
と、横水は苦笑いしながら自嘲気味に応えた。
「なるほど、それは大変ですね。ちなみに貴女が能力者であるコトを知ってる人は他にいますか?」
「ええ、伯母と親友の二人にはバレちゃいまして。」
”てへっ”と舌を出しながらウインクをする。漫画でしか見たことのない仕草にちょっとドキッとしながら青山が続ける。
「では、私とこの大崎についても既にご存知なんですね?」
「勿論、ホントいいカップルで羨ましいなぁと思います。」
「いや、そっちじゃなくて、能力の方。」
「あ、失礼致しました。はい、少し分かります。」
「いずれにしましても、吾々の能力について口外なさらぬようお願いします。」
「承知しております。」
「…と、大崎についての諸々と私との関係についても、貴女の胸に収めておいて頂けると助かります。」
「ええ、彼女を危険に晒したくないんですね?」
と、大崎に目線を送る。大崎も会釈する。
そしてもう一つ、青山の気になっているコトがあった。
「私、失礼ではありませんでしたか?」
「例えば?」
「貴女が傷つくようなコトを考えてなかったかなぁと。」
苦笑いしつつ、恐る恐る訊いてみた。
「いえ、全然。因みに私、先日三十八になったばかりですが、『二十四歳にしか見えない!』と、しきりにお褒めいただいて、とっても嬉しかったですよ?こんなナイスガイに褒められて幸せな気分になったコトしか記憶にありませんよ。」
と応えて青山を安心させた。
青山が安堵する傍らで、大崎がムッとしている。一重瞼の長身スレンダー美女である横水を見て、「スゲー美人!」とか考えたんだろうと青山に目配せする。その大崎の『考え』が見えたのか横水が大崎の前に立ち、
「あ、大崎さん、大丈夫ですよ。貴女方の間に入り込む隙間なんてありませんからね。ホント、仲がいいですね。」
と笑顔で宥める刹那、大崎は「あ…」と心中で思ったが、横水と目を合わせて、いつもの秘書スマイルに戻った。
横水はクルッと青山の方を向いて、
「私もいい殿方が欲しいデス!」
と半ギレの素振りで云って『場』が和んだところで青山が提案する。
「それで横水さん、既に私の『考え』を見ておられるかも知れませんが、私と大崎の知り合いで某IT大手の神崎会長に貴女を紹介したいと思ってます。よろしいでしょうか?」
すると、今までの落ち着き払った態度が一転、興奮しながら横水が応える。
「ホントですか!?神崎会長は経営手腕も技術も素晴らしい上に大変な人格者と聞いてます。それに、私も投資しています。是非、お会いしたいです!」
と大興奮。どうやらそこまでの『考え』は見てなかったようだ。
「まぁ、彼は貴女の能力を調査したがると思います。彼の変態的な探究心がちょっとウザいかも知れませんが、ご協力頂けると彼は喜ぶと思います。」
「そんな、私でお役に立てるのであれば、いくらでもお使い頂きたいです!寧ろ結婚したいくらいです!」
…結婚はアカンやろ、と青山は心中でツッコミを入れつつ、本人の了承を得たので、神崎に連絡取るべくスマフォを取り出した。ら、横水がこのスマフォを指差して驚いた。横水は冷静を取り戻そうと深呼吸しながら、
「立ち話も何ですから、ちょっとお茶でも如何?」
と青山達を誘う。冷静を装いながら隠し切れない興奮。”入れ!入れ!”と、すごい勢いでその手が誘う。勢いに呑まれるように、二人は横水の家の中に吸い込まれていった。
◇ ◇ ◇
リビングは相当広く、アイランド式キッチンの前に上品なテーブルと白い椅子が六脚。テーブルにはティーセットとクッキーが用意されていた。恐らく見えないところでキッチンスタッフが働いているのだろう。と思っていたら、青山達の訪問の連絡を受けて、自分で用意したとのコト。資産家だけど、家事をこなせるのはなかなかだと青山は感心している。
「ささ、こちらへ。」
と、椅子を引いてエスコートしてくれる。青山が「お手伝いとかいないのかなぁ?」とフッと思ったら、
「一人暮らしなので何かと大変です。」
と、青山の疑問を見透かしたかのように応える。
お茶を淹れたあと横水も席に着いて、「どうぞ」と云うや否や、興奮を抑えながら青山に訊く。
「そのスマフォは非売品ですよね?特別仕様の?」
刹那、青山は少し固まった。が、横水に『考え』を見られたと思いつつ説明する。
「よくご存知で。私の口から多くは言えません。神崎さんに連絡しますので、あとはご本人から聞いて下さい。」
…もの凄く物欲しそうにこのスマフォを見つめてる。なんだか話しにくいなぁ、と思いつつ、連絡を入れた。
「お、青山さん!私のバームロールを盗んだ犯人分かりましたか?」
…スマヌ、今の今まですっかり忘れてた。新たな能力者に出会ってすっかり吹っ飛んでいた。
どう言い訳しようかなぁと思いつつ、目の前にいる能力者を生贄?として差し出そうとしていたのを思い出した。
「申し訳ございません。まだ現場を見ていないのでなんともです。」
神崎がちょっとガッカリしているが、『拾い屋』の仕事で一杯一杯な事情を理解しているので特には追求はなかった。と云う神崎の表情を確認して、青山が続ける。
「それより、新たな能力者を見つけましたが、お話されますか?」
神崎の表情が職人になった。
「おお、なんと!是非、お話させて頂きたい!」
その後しばらくは神崎と横水の『電話会議』が三十分程度続いて、後日、青山と大崎が『バームロール窃盗犯』の現場を見るのと並行して、横水を神崎の別荘に案内するコトになった。
◇ ◇ ◇
二六九〇年六月十五日、梅雨入りしたとは思えない程の晴天の下、神崎の運転手が青山達を迎えに来た。途中で横水を拾う。
車中、青山と神崎だけの時は静かに窓から流れる景色を楽しみながら大人の会話をしているのだが、横水が車中に入るや否や、そのテンションの高さに体力が奪われそうになる。
「神崎会長のご趣味は?好きな食べ物は?好きな音楽は?オンナのタイプは?」
など、質問に応える前に質問を被せてくるので応える余裕がない。
「横水さん、その訊き方では青山さんが応えられませんわ。質問は一つずつ端的にお願いしてよろしいかしら?」
と、大崎が苦笑いしながらあやす。
「ハイッ、でも、嬉しすぎて、言葉が止まりません。どうしましょう?大崎姉さん?」
”大崎姉さん”って、いつの間にそんな仲になったのか?と青山が思ったら、大崎が横水を抱きしめている。
「いいのよ、分かりますわ。ホントにお会いしたかったのですね?」
と言葉を掛けている。横水は沈静化し、”ゴロニャン”と言わんばかりの表情で心地よさそうに大崎に抱かれている。そして眠ってしまった。
「大崎さん、どこでその技身につけた?」
と、なんとなく小声で訊いてみた。
「何を仰いますやら。所長が直々に教えて下さったんですよ。」
と、照れくさそうな微笑みに喜びを込めて云い放った。
「あ…」
と、思い当たる節があるのだろう。青山の目線が大崎から外れる。
そして別荘に到着するまでの間、車内は静寂に包まれる。
◇ ◇ ◇
「到着しましたよ?」
大崎が横水を起こす。クルマの外には既に青山がドアを開けて待っている。
「ご、ごめんなさい!なんだか寝ちゃったみたいですね。」
と横水は恥ずかしそうに謝罪する。
「構いませんわ。お疲れだったんでしょうね。」
微笑みながら大崎が語りかける。
「はい、楽しみで楽しみで昨晩は一睡も出来ませんでした。」
と、遠足前日の小学生みたいな応えに青山が笑った。
すると、こちらもかなり興奮気味でクルマまで早歩きで近寄る神崎が登場した。
「ようこそ!遠いところご苦労様でした。さ、こちらにどうぞ!」
神崎がエスコートする。
「ところで、陽子さんとは仲直りできたんですか?」
二人とも興奮気味なので、落ち着きを取り戻させるべく青山がわざわざ水を差す。
「ああ、ルマンドを褒め称えたらすごく喜んでくれてね。」
チョロい夫婦だなぁと青山は思った。
すると陽子もクルマまで来た。
「いらっしゃい!」
青山が一番気になっていたのは陽子のご機嫌なんだが、満面の笑顔だったので、青山は安堵した。
「若い女と二人きりにすると何しでかすか分からないから、今日はしっかり監視させて頂きます。」
…ちょっと棘がある。陽子サン、まだ怒ってるのかな?とか青山が思っていると、
「わぁ!生奥様!写真よりも全然お美し〜!こんな超美人に私をしっかり監視して頂けるなんて、メッチャ幸せ!是非とも宜しくお願い致します!」
と横水は大興奮で陽子に云い放つ、
「興奮を重ねて何云ってるか分からなくなってるんじゃなかろうか?だいたい「生奥様」って…」
青山がそんなコトを思ってると、
「ああ、分かりますわ。」
と、大崎も乗っかっちゃった。どうしよう。まぁおかげで陽子も喜んでるみたいなので良しとしよう。
「ひとまず、リビングで落ち着きましょうか。」
興奮冷めやらぬ感じではあるが、神崎夫妻と横水は青山の提案に乗る。
◇ ◇ ◇
陽子がみんなのお茶を淹れる。今日のお茶菓子はルマンドがメイン。
「何もかもステキ!」
横水が陽子の淹れたお茶に一々感動する。青山の記憶では、お茶もスーパーで買ってきた普通のティーバッグだったと思うが、まぁ黙っておこう。『考え』を読まれてるかも知れないが。
「いや〜申し訳ない。新たな能力者とお会い出来るなんて思ってもみなかったので、昨夜から全然寝付けなくてね。」
デジャヴ。青山が笑いそうになる。そんな青山を見て、大崎もつられて笑いそうになる。「お前ら小学生か!」とツッコミたくなる衝動を抑えているが、大崎に湯気を当てて十一歳に変化させたらそれこそ小学生トリオや!と思いついたらさらに笑いがこみ上げそうになる。そんなしょーもないコトに冷や汗をかいてる二人をよそに神崎が質問する。
「で、『考え』が見えると云うのは具体的にどんな能力ですか?」
さすが研究者、本質を突く質問だ。
「はい、今考えておられるコトが視覚的に見えるコトがあるのです。例えば今、神崎会長がバームロールを召し上がっている映像ですね。コレが何を意味するのか全然分かりませんが。」
神崎は「あ…」と。陽子と青山と大崎はすぐに理解した。
つまり、その人の心を読むとか思いが見えるとかではなく、『考え』ているコトが映像となって見えるようだ。確かにお茶菓子にバームロールが入っていない。大崎はバームロールを欲しているのだろう。
まだ根に持っていたのだろうか、陽子は故意にバームロールを用意しなかったらしい。さすがに陽子も反省して、バームロールをお茶菓子に追加させるべく、お手伝いを呼んだ。
「陽子ちゃん、ありがとう。」
「私も悪かったわ。ごめんなさい。」
どうやらホントに仲直り出来たみたい。
「ホントにステキなお二人です!お二人と結婚したいなぁ。養子にしてくんないかなぁ。」
と、横水が呟く。そんな妄想で念を新規作成しているので、青山は慌てて制止すべく、神崎に訊く。
「では、私どもは調査に入らせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ああ、そうでした。思う存分お願いしますね。」
神崎の許可が出たので、青山と大崎は調査を開始する。
◇ ◇ ◇
別荘の全部屋から渡り廊下について、綿密に『場念』のスキャンを試みたが、従業員以外の念が見当たらない。また、従業員を疑ってみたが、怪しい念が感じられない。食品倉庫や神崎達のお菓子箱付近をウロつく念をボンヤリと感じられるが、極めて微弱で、恐らく作業の部類だろう。
何もなかったが、神崎夫妻から昼食を誘われて、五名でテーブルを囲んだ。
「いや〜実に有意義でした。ありがとう!」
と、神崎が横水に礼を述べる。
「いえいえ、お役に立たせて頂けるなら何なりとお申し付け下さい。養子にして頂いても構いませんよ。」
と、しれっと要望する。陽子もすっかり打ち解けたようで、
「もう娘のようなものよ。貴女が嫁に出るまで面倒みちゃおうかしら?」
とノリノリ。大丈夫か?
それはさておき、昼食はどんなご馳走が出てくるかと思ったら、
「サッポロ一番味噌ラーメンでございます。」
と、料理長が説明。青山は一瞬ガクッとしたが、何かが違う。ヴィジュアル的には野菜ラーメンだが、香りが矢鱈美味い。思わずスープで口を浸してみたら、思わず溶けそうになった。凄い!袋ラーメンの域を超えている。
シェフにレシピを訊ねたが、企業秘密で教えられないと、キッパリと断られてしまった。
大崎も唸っている。大抵の料理は一度食えば再現出来る大崎サンも、さすがにコレは難題なようだ。横水は長身をのけぞらせて失神している。
青山は成果が伴っていないのにこんな美味い料理を頂いて恐縮していたが、神崎の興味は既にバームロールではなく、横水の能力に転位しているようで、青山に議論を持ちかけてくる。青山も『別件』への謝罪と言わんばかりに真摯に応対する。
暫くして、「ハッ!」と目を覚ました横水が、幸せそうに残りを頬張る。神崎が、
「そんな表情で食事する貴女の『考え』を見てみたいものです。」
などと神崎が横水に冗談めいたコトを言っているが、当の本人は食事に夢中で全然聞こえていないようだ。
「寧ろ、そんな神崎さんの『考え』を横水さんに見られているのでは?」
と青山が問いかける。すると横水は意外なコトを暴露する。
「自分の意思で見たコトはないんです。浮き上がるのを見てるだけです。今現在、神崎さんの『考え』は見えません。」
青山は半分納得しつつ、もしかすると神崎が悪い人で『考え』の前に『雲』が見えたりしてるのかな?と思ったが、すぐさま横水は、
「あ、ちなみに『雲』も見えませんので、神崎さんが悪い人だから見えないワケではありません。誤解なきよう。」
と神崎に云いつつ、青山の『考え』を否定した。青山はすかさず、
「今、私の『考え』見えてました?」
と問いかけたが、「ニッ」と笑みを返されただけで応えてくれなかった。
まぁ冗談だから『考え』そのものが無いのかも、と思った。
◇ ◇ ◇
いろいろ話していく中で、一番問題なのは、横水が能力を持つ『リスク』に対しての危機感が全く無い点だ。投資家・資産家だけに、口は堅いのでむやみに他言しないのは確認出来たが、リスクについて神崎や青山が話ししても、「ふ〜ん」とか「へぇ〜」と納得した素振りだけして、あまり響いていないようだ。
『危険が危ない』と判断した神崎は、自身の研究所スタッフとして雇用するコトを提案するが、自由な投資家でありたいと固辞しつつ、
「それならば私を養子にして下さい。」
と要望する。神崎は陽子の手前、困ったカオをしている。
「まぁ、それはまた後日検討しましょう。ひとまず、コレをお渡しします。」
と、一旦は養子の話を終わらせて、神崎仕様のスマフォを横水に手渡した。
「わぁ!ホントに頂けるなんて、夢を見てるようで失神しちゃいそうです!」
と大喜び。そして神崎がスマフォの説明をする。
今使ってるスマフォは廃止、キャリア解約。そのあと、データを移行して、独自キャリアに接続する。一見、今までのスマフォと変わりないが、セキュリティーは万全。侵入者を受け付けない。且つ、通話時に位置データーが準天頂衛星システム『みちびき』を介してこの研究所に送信される、その目的を説明。そしてさらに付け加える。
「何かあったら、と云うか、身の危険を感じたら、すぐさま通信ボタンを押して下さい。可能な限り、私の屈強な部下がすぐに駆けつけます。」
「ありがとうございます。神崎さんのスマフォが欲しかっただけなのに、こんなに至れり尽くせりで恐縮です。」
横水がその頭を低くした。長身にはちょっとキツい体勢に見えたが、それだけに感謝が伝わる。
そしてボソリと、
「こんな殿方が欲しい…」
と誰にも聞こえない声で呟いた。
◇ ◇ ◇
神崎夫妻に見送られながら帰路に就く。太陽光パネルに侵されていない森林を抜けて街に戻ってきた。
そして青山の事務所に戻ってきた。客人一人を事務所に招き入れる為に、セキュリティーシステムに登録する。コレで横水は客人として扱われるコトになり、青山もしくは大崎が在席であれば、横水も一緒に事務所に入るコトが可能となる。
「ごめんくださ〜い。」
と、横水は少々緊張しながら事務所に入った。とは云え、神崎の別荘で神崎夫妻と面会し、神崎仕様のスマフォを受け取って、まだ興奮冷めやらぬようで、ニヤニヤしながらスマフォにスリスリしている。
ちなみに横水はタブレットとPCも欲しがっていたが、タブレットはメモとプレゼンソフトしか使用していない。であれば、新調するのも勿体ないので却下。PCはガッツリ投資で使用するそうで、デイトレードではスピードが極めて重要だが、神崎仕様ではセキュリティーに重きを置いて速度を少々殺しているので、コレもまた現在使用しているPCの方が適している、と云う結論に至り、スマフォのみ神崎仕様にした。
「少々お掛けになってお待ち下さいませ。」
と大崎がお茶を淹れ、青山が神崎夫妻から貰ったバームロールとルマンドを容器に移し替えて出した。
横水がお茶を一口飲んで驚いた。
「コレ、私が先日お出ししたお茶と同じ風味です!美味しい!」
「ええ、あの時頂いたときに、茶葉はすぐに分かりましたが、蒸らし時間と温度の追求に少々手間取りましたわ。ほぼ再現出来ているとは思いますが、大丈夫かしら?」
大崎は淡々と説明する。
「全然大丈夫ですよ!完璧です。余所では絶対に飲むコトが出来ないので、とても嬉しいです!母から教わった思い出の味なんです!」
「それは良かったわ。そんな風に喜んで頂けたら私も嬉しいわ。」
と、二人で喜びと感謝の合戦。そして、
「大崎姉さん、ホントにありがとう!」
と横水が大崎に抱きつく。なんだかホントの姉妹のような、不思議な光景だ。
二人の話から、身長は大崎が百五十六センチ、横水が百六十五センチだそうだ。身長差九センチ。それでも大崎がちゃんと姉に見えるから不思議だ。身長序でにスリーサイズとか話さんかなぁとコッソリ思う青山だが、残念ながら。
そんなこんなで、本題は、横水の新しいスマフォケースと液晶フィルターを買いに行くこと。さすがにスマフォショップに神崎の高級車と運転手を市井のショップに連れていくのも物々しい。なので、青山の事務所に集合する形を取った。マッタリ時間は10分程度のつもりでいたのだが、気付けば小一時間程度の時間を浪費していた。
如何せん、女性のショッピングには時間が掛かる、且つ、うら若き?女性をお連れするコトを考慮しつつ、せめて日暮れまでにはご自宅に送り届けるつもりでいたのだが、ちょっとギリギリになりそうで、大慌てで青山の車でスマフォショップに向かった。
駐車場に到着後、青山が先頭で、大崎と横水は談笑しながら後ろをついて来る。
すると、店頭の自動ドアを前にして青山が絶句する。自動ドアのガラスの向こうに店員と談笑する一人の老人の姿が見える。反射的に怒りがこみ上げてきたが、青山の背後にはスマフォケースを楽しみにしている横水がいる。ココで留まっては横水に失礼だと思い、平静を装いながら店内に入る。
客が店内に入ったコトを知らせるチャイムが鳴り、その老人がコチラを振り向く。
「なんだお前、青山か。随分久々じゃねーか。」




