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欠片《カケラ》はそこで呼んでいる  作者: 飛武伽


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9/9

八綴目 『バームロール』

「ちょっと陽子ちゃんと喧嘩になっちゃって…」


 神崎の(かげ)なる支えにより、面倒そうな事件がすごく簡単に片付いたことから、大崎も了承の上、神崎に連絡を入れて、なんなら一緒に乾杯しましょう、とでも声を掛けようと思ったら、第一声がコレ。


「何があったんですか?」

 少々慌てた声で青山が問う。すると神崎は


「私のバームロールが無くなった。」


 …聞かなきゃよかったかなぁと少々後悔しつつ、ひとまず仕方ないので続きに耳を傾けた。

()(かく)最近食品の減りが早くて、しまいには私の書斎に置いてるバームロールのストックも底をついて。」

 で、陽子を疑って問うたところ、「私はルマンドしか食べません!」とブチ切れられ、バームロール対ルマンドで大激論になったあと、神崎はリビングで寝る羽目になっているそうな。


 その後神崎は冷静を取り戻し、泥棒に食い物を盗まれている、と仮定しつつ、神崎システムは何故その犯人を捉らえてないのか?と思いつつ、別荘の方から侵入される可能性を考えた。


 研究所の方はそれこそ(ねずみ)一匹入り込めない最高のセキュリティーだが、通路で繋がる別荘の方は築二十年で、大津波や原発事故を引き起こした大震災でその堅牢さが実証出来たとは云え、システムの老朽化は否めない。ソフトウェアは二度のメジャーアップデートに加え、セキュリティー脆弱性や細かい不具合を修正したマイナーアップデートが度々行なわれてはいるが、研究所で使用しているソフトウェアには到底及ばない。研究所のソフトウェアを別荘側に適用したくも、AIが普及する前のハードウェアではパフォーマンスが発揮出来ない。


 それはさておき、別荘の従業員は見たところ十三名。

「『場念(フォット)』のスキャンが大変そうだなぁ。先ずは従業員を疑うべきか否か。」

 そんなコトを思案していたら、キャッチが入った。汗だく爽やかイケメン警部だ。切りたい衝動に()られるが、仕事だからと自制した。神崎には後ほど連絡する旨を伝えて、桜田警部の通信に接続した。


 ◇ ◇ ◇


 二六九〇年五月、資産家の別荘を狙った空き巣が乱発して、容疑者はある程度絞り込んではいるが、決定的な証拠がない。そこで青山に白羽の矢が立った。


「それにしても、いろんな事件を扱ってるよなぁ。」

 ポツリ青山が呟く。スパイ防止法や入出国管理新法の成立後、人手不足を補うべく、時限立法で警察業務の一部を民間に委託する法律が発布する際に設立された部署で、あらゆる部署から依頼が飛んでくる。

「面倒くさそうな部署だなぁ〜(なか)ばパシリだな。」

 と感心しながら呟く。

「そんなパシリ部署から依頼されるオレはなんとやら。」

 と思いつつ、仕事をもらえることに感謝した。


 それはさておき、”資産家の別荘”だが、そこに神崎は入っていない。青山への信頼と、盗られたモノが食品だけなので、届け出る程でもない、と云う判断だ。


 ◇ ◇ ◇


 関連性も考慮して、先ずは被害に遭った資産家四名の別荘を順に訪れる。


 先ずは一軒目、中堅ガス会社の取締役、|日野《ひの義彦(よしひこ)四十八歳。コチラは金庫破りに()ったらしく、金庫に納めていた美術品を一つだけ持ち去られていた。他には財布から大きい額の紙幣が一枚抜かれていた。


 青山が尋ねる。

「金庫を開ける頻度は?あと、今回は何故金庫を開けようと思ったんですか?」

「年に一、二回程度です。そう滅多には開けません。差出人不明のメールが届いて、気になって、金庫を開けて中を確認しました。」

 と、スマフォの画面を見せられた。ショートメールに一言書かれていた。

「金のリュトン。」

 そして異常の無いコトを確認して金庫を閉じたのだが、翌日、被害にあったとのこと。

 恐らく、犯人はどこからか眺めていて、日野が回す金庫のダイアルをしっかり記録されたのだろう。


 二件目は投資家の横水(よこみず)貴予(たかよ)

「若いなぁ、二十四歳くらいかな?」

 青山はそう思って桜田警部からもらった資料を見たら三十七歳と書いてある。

「いや〜人は見かけで判断しちゃいけないって云ういい見本だなぁ〜」

 と思っていた。と云うか、素の大崎や神崎陽子もいい見本のはずなのだが、なかなか学習しない。

 そう思って横水の一重まぶたの美人に見とれていると、

「ありがとうございます。」

 と笑顔で感謝された。まぁいろんな人に同じコトを云われてきたので察したのかな?と思いつつ、調査を開始する。

「何を()られましたか?」

「お気に入りの香水とネックレスです。」

「この別荘で?」

「ええ、ネックレスは常に身につけており、香水は常にバッグに入れておりまして、いつでも使えるようにしております。シャワーを浴びる際に鏡台にネックレスを置いていたんですが、外出しようと鏡台を開けたら忽然(こつぜん)と姿が消えていました。」

 クールな表情(かお)で横水は説明するが、実はとても危険な状況だ。

「なるほど。それは災難でした。あなたと犯人が同じ時間帯に居たコトになります。犯人と遭遇しましたか?」

「いいえ、幸いにして遭遇しておりません。」

 この返答の真偽は今のところ不明だが、偽であれば『共犯説』若しくは『犯人でっち上げ説』が浮上する。いずれにせよ、今こうして傷一つ無い様子で会話出来ている。

「それは良かった。ご無事で何よりです。」

 と月並みな言葉で返した。そしてさらに続ける。

「他に盗られたものはありますか?」

「もしやと思いバッグを確認したら、香水もなくなっていました。さらにクローゼットに片付けていた香水のストックも全部持っていかれてしまいました。」

「何か美容関係者でしょうかね。犯人に心当たりは?」

「全く思いつきません。」

「金庫は無事だったんですか?」

「ええ、金庫は無事でした。ただ、他の方と同じく、財布から大きい額の紙幣が一枚消えていました。」

 大崎がピクリと反応する。思わず青山が返してしまった。

「…ご愁傷様です。。。」


 青山と大崎は、この時点で横水が犯人だと確信した。(しか)しながら、物証が無い状況には変わりないので、一応あとの二人にも話を訊く。


 三件目は弁当チェーンの総元締め会社社長、木地光(きじみつ)智依(ともよ)、六十八歳。こちらも高級エメラルドのアクセサリーがごっそり盗られたそうで、他には財布から大きい額の紙幣が一枚抜かれていた。普段からバッグの中に入れて度々人に見せびらかして自慢していたそうで。

「別荘で被害にお遭いになられたんですか?」

 ココから先は大崎がMCを務める。青山はコッソリ『場念(フォット)』のスキャンに専念する。

「ええ、朝、帰宅しようと思ってバッグを抱えたらとても軽くて、中を見たらアクセが全部消えてたの!」

 と憤慨している。さらに続ける。

「あとは大きい額の紙幣が一枚が財布から無くなってたわ。前から欲しかった新しいネックレス買おうと用意していたのに、一万円足りなくてお店でエラい恥かいたわ。」

 青山の『場念(フォット)』のスキャンが完了したので、適当に話を切り上げて、次の被害者の元へ向かった。


 四件目はインフルエンサーでバズりまくってるモデルの白金みぃ。盗まれたモノは写真立てと、開運ブレスレット、他と同様財布から一万円が抜かれていた。写真立てが飾ってあった付近には破り捨てられた紙くずが散らかっていた。

「コレは写真?犯人が破ったのかしら?」

「そうですよ!マジムカつく!人気俳優とのツーショット写真を飾ってたのに、写真立てを奪われた上に、入れてた写真もこんなビリビリに引き裂かれて、心底殺してやりたい!」

「それは大変だわ。どうかお気を確かに。」

「イヤ!ムカつく!あんた達ツーショット写真持ってないの!破り捨ててやる!」

 …八つ当たりもいいとこだ。と青山が思っていたら、大崎が白金をすかさず抱きしめる。

「大丈夫。破り捨てられた写真を超える思い出を、沢山お撮りになればいいのよ。貴女のお立場なら可能でしょ?」

 以後、白金は沈静化し、”ゴロニャン”と言わんばかりの表情(かお)で心地よさそうに大崎に抱かれている。その隙に、青山は徹底的に『場念(フォット)』をスキャンした。

 離れる際、名残惜しそうに白金みぃが大崎を離さない。

「お姉さん、また来てね。」

 そう云って、大崎を見送った。特に返事はしなかったが、大崎もステキな笑みで白金を包み込んだ。

「…あのぅ〜、ボクも居るんですケドー」

 と、青山は何だか取り残された気分で現場を後にする。


 ◇ ◇ ◇


 事務所に戻って、桜田警部に少し事実確認だけした上で、横水を軸に調査することにした。


場念(フォット)』をスキャンした結果も、各々の建物に横水の念が確認された。ただ腑に落ちないのは、全員の別荘には監視カメラが付いているにも拘わらず、犯行日時前後、横水の姿が一切記録されていない。なので、警察は横水を単に被害者として扱っている。


 その代わり、犯行日時に付近をウロつく若い少年の姿が記録されている。残念ながら顔がハッキリ映っていないので個人を特定するには至らず、且つ、建物に侵入した形跡が認められないので、警察の容疑者リストからは外されている。


 警察はとある老紳士を犯人だと思って追ってるようだ。彼は町工場の元社長で、世界的な経済危機を察知して、経営難に陥る寸前に競合する大手企業に業務の請負を持ち掛けて、その企業の人員削減に貢献しつつ、自社の社員を一人も減らすコト無く危機を乗り切った、人格・能力共に素晴らしい経営者だった。ちなみに横水は当時からその老紳士の会社に出資している。それはさておき、彼が犯人とは考えにくい。『場念(フォット)』のスキャンにも彼の念は存在しない。


 青山達は横水の一言に疑問を持った。


 −−他の方と同じく、財布から大きい額の紙幣が一枚消えていました。


 桜田警部に確認したところ、連続空き巣事件とだけ公表し、被害者の人数や一万円が抜かれていた話は公表していない、つまり、警察と青山・大崎、それに犯人だけが知りうる情報である。そこから容疑者だと確信した。が、『場念(フォット)』をスキャンした結果を乗せると、どうにも腑に落ちない。


 前述の謎の少年だ。建物に入ったワケではなく、ただ周囲をウロついていた。『場念(フォット)』のスキャン結果にも現れている。彼は多様な偽名を使い捨てで使用している為、名前の特定は難しい。また、彼の念は犯行そのものに限っていて、ノイズも無く個人情報が全く掴めない。何かしらの『覚悟』があるのだろうか?凄い集中力だ。抑も、少年のような見かけだが、どうにも普通の少年ではあり得ない『念』だ。そして彼の念の犯行の部分に、被害者が盗られたモノが強く残っている。横水も怪しいが、この少年も同時に捜索するコトにした。


 ◇ ◇ ◇


 当初、横水とこの少年の繋がりを調査していたが、全く見つからない。が、商店街で雑談するフリをして情報収集していると、向こうから手を振りながらダンディでマッチョなチョイ悪風の男性がフェードイン。と思ったら、

「コウちゃ〜ん!」

 と声高らかに青山を呼んでいる。商店街から少し入ったところにあるゲイバーのヤシャママだった。

 ヤシャママ、勿論源氏名で『金色夜叉』から取ったそうだ。理由は知らない。

 青山はノンケでゲイは苦手だが、(しか)(なが)らヤシャママの情報量の豊富さには目を見張るモノがある。()かなくとも、勝手にマシンガントークで暴露してくださる、有り難い存在だ。


 そんなワケで商店街のお姉様二名との座談会にヤシャママが加わる。程なくして「アクセサリーをジャラジャラ付けた弁当屋のババァがイケメン連れてお店に来たんだけど、全然釣り合ってなくてウケるぅ〜」と漏らしたのを聞き逃さなかった。

「アクセサリーって、エメラルド?」

 と訊いてみたら、

「アラ、よく知ってるわねぇ。そうよ、あのババァ社長。宝物を見せびらかすのがストレス解消だって。趣味悪いわぁ。連れのイケメンは何処に行ったら拾えるかしら?」

「そこらに落ちてるもんじゃないわよ。落ちてても、簡単に拾えないって。」

 別のお姉さんがそのように応えている隙に、青山はしれっとフェードアウトする。そして大崎と合流する喫茶店へと向かった。


 青山はすぐにでもヤシャママの店で『場念(フォット)』をスキャンすべきと思いつつ、行ったら変に絡まれるのは間違いなく、『場念(フォット)』のスキャンどころではなくなる。するとその心情を察して、大崎が提案する。

(わたくし)もそのお店にお供致しますわ!」

 いや、余計絡まれそう、と一瞬思ったが、大崎のトークスキルなら大丈夫だな、と考えていたら、

「大丈夫ですよ。所長がそちらの世界に引き込まれそうになったら、(わたくし)、全力でお助け致しますわ。」

 と、本気ともわざととも思える斜め上からの決意を表明しつつ、

「でも、ちょっと見てみたいですわ。ゲイ所長。ふふふ。」

 と、大崎がちょっと小悪魔的な笑みを浮かべつつ妄想に入り始めたので、青山は頭を抱えつつ、一緒にヤシャママの店に向かうことにした。


 とは云え、開店まで暫く時間があるので、神崎社長の消えたバームロール事件について、この一連の空き巣事件との関係性も視野に入れつつ、タブレットの資料を眺めて時間を潰した。


 ◇ ◇ ◇


 喫茶店でマスターに変な愛で見られながら、青山と大崎はタブレットを見て議論していたが、矢張(やは)り現場を見ないコトには分からないと云う結論に至った。


 と云うコトで、あまり気は進まないが、仕事の時間が来てしまったので、ヤシャママのお店に向かった。


「アラ、珍しいお客さんね?」

 大崎が先導して青山と入店すると、ヤシャママから歓迎のお言葉を頂いた。


「ちょっと友達との呑み会まで時間潰しなので、すぐに出る。軽く焼酎ハイボール二人分頂戴!」

 と青山はその一言だけ云って、店内の『場念(フォット)』のスキャンを開始した。大崎が、

「そちらのお姫様は?」

 と訊かれたので、

「同じ呑み会に行く友人。」

 と応えたら、

「へぇ〜、コウちゃんって、こんな女性(ひと)が好みなんだ。」

 面倒なので、肯定も否定もせず、

「じゃ、奥の席、ちょっと借りるよ。」

 と云って、一番奥の角に青山と大崎が座る。

 すると、ヤシャママが大崎の隣に座り、営業トークを繰り広げる。一旦『場念(フォット)』のスキャンは中止。すぐにハイボールが三人分届いて、三人で乾杯し、約十五分後にヤシャママが、

「じゃ、短い時間だけどゆっくりしていってね。」

 と、他のお客さん対応で席を立った隙に、『場念(フォット)』のスキャンを再開した。


 ◇ ◇ ◇


 なんだかんだでヤシャママのお店にトータル小一時間程度滞在した。(さいわ)いにして他のキャストの妨害もなかったのが救いだが、通常の三倍は疲労を感じる。然し成果はあった。


 木地光(きじみつ)があの少年とこの店の、まさに先ほど青山と大崎が座ったあのテーブルで、何やら怪しげな会話をしている念を感知した。

 封筒に入った現金とコインロッカーの鍵を少年が受領している。


 恐らく、この少年を追えば、盗まれたモノの隠し場所が明らかになる。恐らく木地光(きじみつ)はまだこのコインロッカーには行ってないハズだ。警察が動いている今だとバレる。だから潜伏している筈だ。


 と、これだけなら、青山しかこの少年の姿を知らないので、追うのは難しいのだが、ヤシャママの店で大崎が、

「そう云えばココにスゴいイケメンが来たって(おっしゃ)ってらしたわね?」

「そうそう、あのババァとは全然釣り合ってないんだけど、()(かく)美しくて心奪われたので、ババァがトイレに行ってる隙に写真撮らせて(もら)ったのよ。」

 と、自慢げにツーショット写真を見せびらかしてきた。

 大崎は、

「大変美しい殿方ですわねぇ。せめてそのお写真、(わたくし)にもお裾分け頂けませんか?」

 とお願いしたところ、ヤシャママは少し渋る仕草をしながらも、

「まぁ初見さんだから、いいわよ。貴女にも幸せを分けてあげる。」

 と、写真データを入手するコトが出来た。大崎、グッジョブ!


 とは云え、ヤシャママの自撮りで恐らく興奮していたのだろう。あまり写りが良く無い。ただ、恐らく科捜研なら鮮明化出来るレヴェルだろう。


 ひとまず、桜田警部にヤシャママの証言を証拠として、この自撮り写真を手掛かりに、監視カメラの映像を追ってコインロッカーを押さえるよう依頼した。


 ◇ ◇ ◇


 六月二日、「六十年前の今日は、世界が邪悪な念から救われた日」とスマフォから流れてくる音声を聴きながら、それにしても未だ邪悪な念が残っていそうな、そんなどんよりとした分厚い雲に空が支配されている、そんな正午過ぎ、昼休憩を取ろうとカップラーメンにお湯を注いだら着信があり、慌てて取ったら桜田警部だった。

「シマッタ!」と思いつつ、仕事だから仕方ない。例によってタブレットに汗だくイケメンを映し出す。


「今回もお見事でした!ご連絡頂いて三時間でコインロッカーの場所を特定して、ずっと張込みしていたところ、木地光(きじみつ)の会社の専務がロッカーを開けたところを任意同行頂きました。」


 専務は素直に自供した。スマフォに残された木地光(きじみつ)からのメールから、コインロッカーの『荷物』を取りに行くよう『指示』を受けたコトが確認された。メールのやり取りとカネの流れから、専務はその荷物が盗品とは全然知らず、ただ指示に従っただけだった。


 各々の別荘に横水の念が残っていたのは、この四人がお互いの別荘にパーティーで訪れていたためであり、不自然なコトではなかった。そのパーティーで酒に酔った木地光(きじみつ)が調子に乗っていろんなモノを出席者にバラ蒔き、翌朝に「返して」と返却を求める。(しか)(なが)ら、貰った側がモノを気に入ってしまい返却を拒否することもある。日野義彦の「美術品の金のリュトン」、横水貴予の「高級なネックレスと香水」、白金みぃの「高級な写真立て」がそれだ。それを取り返すべく、闇バイトで依頼して盗ませた。それと木地光(きじみつ)は自分も被害者に見せかけるべく、実行犯に「高級エメラルドのアクセサリー」を盗ませていた。


 木地光(きじみつ)のドケチっぷりは有名らしく、香典一つにすらブツブツ文句を唱えているそうだ。


 そして無事に木地光(きじみつ)は逮捕され、盗まれたモノは全て持ち主の元に戻った。ただ、大きい紙幣一枚については、木地光(きじみつ)の指示ではなく実行犯の少年の独断だそうで、未だ少年の行方は掴めていない。


 逮捕後、木地光(きじみつ)は、弁当屋の社長を解任され、別荘は売りに出した。ただ、株は手放していない。寧ろ、自身の逮捕で株価が急落したタイミングでさらに買い足している。別の容疑でも逮捕されそうだ。


 そんな話を桜田警部は長々と繰り広げた。


「じゃ、そのうち政府Payに入金されると思います。」

 と言い残して、桜田警部は通信を切断した。


 まぁいつものコトだが、そのうちって何時よ!ってのと、「思います」って云われると、確定してないのかよ!とか、いろいろツッコミたくなる。


 しかも、十五分位繋いでいたので、カップラーメンが伸び切って、麺がカップを飛び出てる。

「…出なきゃよかった。」


 入金時期も不明で昼食もタイミングを外し(フードロス反対の立場から全部食った)、もう一つの謎か解けず、青山の心はこの空に広がる(どん)(てん)(ごと)くスッキリしない。


 その心情を察知したのか、大崎が、

(わたくし)でスッキリして頂いても構いませんわ。さあ!」

 と、妄想で変な念を新規作成しまくっている。

 ちょっと逃げたくなりつつ、最後の謎を解き明かすべく、大崎と共に投資家の横水貴予を尋ねた。


 ◇ ◇ ◇


 青山が横水に疑問を投げかける。

「どうしても、貴女の仰った一言に違和感を覚えておりまして。」


 −−他の方と同じく、財布から大きい額の紙幣が一枚消えていました。


 すると横水は、

「ちょっとした茶目っ気です。申し訳ございません。捜査を邪魔しましたね?」

「いえ、そうじゃなくて、何故貴女は被害者が貴女含め四名で、各々が大きい紙幣一枚を抜かれているコトをご存知だったのか?どういった経緯で知ったのか話して頂けますか?」

 と云う青山の問い掛けに、横水は何の躊躇(ためら)いも無く応えた。


「私、人の考えているコトが見えるんです。」


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