第82話 睦む
今回から文字数がちょっと減ります。
だいたい5000文字だったのが3000文字強ぐらいになります。
えっ、え?
なんか思ってたのと違う……。
「お~、い~感じに困惑してんね。お呼ばれしたイヴ・オベールだよ。……だんちょ、またウチになんか仕事振る気? ウチはさ、自分の仕事でもう手一杯なんだケド」
「相変わらず嘘つきね、イヴ。じゃああなた、どうして直ぐに来れたの? しかも、声が聞こえる距離だったじゃないの」
「ゔ……それは……だって、だんちょの近くにいなきゃでしょ? 副団長としてはさ……」
色々会話が繰り広げられているが、着いていけない。
ちょっと整理しよう。整理するまでもないだろうが。
さっきから俺を困惑させているこの少女は、イヴというらしい。オリヴィエさんの事を〝だんちょ〟と呼んでいる。という事は、二人とも何かに所属しているのだろう。知事、つまり政治関係の間柄だけってわけでもなさそうだ。加えて、イヴさんはそれにおける『副団長』らしい。
ミニスカにカッターシャツを着ているが、少し着崩している。ギャルではあるが、しかし、アラベルのような破天荒で底知れぬ元気さは感じられない。テンションとしては、どちらかと言うとアブーリアみたいな感じだ。
てか、ホントに思ってたのと違うな。オリヴィエさんの部下っぽかったから、もっとシャキッとした感じの人が現れるかと思ったが……ネタ全振りの登場シーンだ……。
「で、だんちょ? このコが、例のアラベルさまのお目付け役?」
「ええ」
「カワイーじゃん。頼もしそ~。ウチの仕事手伝ってくれたりしない?」
「ダメです。自分の仕事は自分でしなさい」
俺の隣にいたアラベルがビクッと体を震わせた。
……そうか。コイツ、報告書作り俺に任せたからな。寝落ちとはいえ……。で、ちょっとダメージ喰らったわけね。
「は~い。……で、ウチの仕事は?」
「お目付け役の手伝いです。あ、現在進行中の仕事の引継ぎはしておいてくださいね。今やってる政治の仕事に比べれば、楽な仕事でしょう?」
「お、確かに。マジラッキー。てことは、このコのお手伝いね。任せてよ、だんちょ」
「ええ、頼りにしているわ。では、ワタクシはこれで。……サボりは厳禁ですわよ、イヴ」
「ゔ……ハイ……」
キッチリ釘を刺していったな……。
オリヴィエさんは、それだけ言い残してそそくさとリビングから出て行った。
「……帰っていい?」
「ダメ」
真っ先に言いやがったぞ、イヴさん。
マジのサボり魔らしい。……俺の苦労が増えるだけなんじゃ……?
「でもお目付け役って事はさぁ、アラベルさまの面倒見とけばいいんじゃん? じゃ、よゆーっしょ」
……わかってない気がする。
多分、イヴさんが思っている以上にアラベルは凶悪かつ破天荒だ。
はてさてどうなる事やら……。
◇◇◇
「あ~~アラベルさま~~~っ……勝手にどっか行かないでぇ~~~」
ほ~ら見ろ。手に負えてない。俺も負えないんだ、当たり前だろう。
とはいえ、俺だって放っておくわけにはいかないな。これは──
「イヴさん」
「ん、なに? てか、呼び捨てでいーよ」
「あ、そう……。とりあえず、アラベルをどうにかしないとだよな」
「ウチも、ここまでだとは……前に担当した時より悪化してる気もするしぃ……」
あ、そうなんだ。
成長につれて厄介度が増していくスタイル。思ったより面倒そうだぁ……。
「……あ、そうだ」
おや?
イヴは何かを思いついたみたい。さて、それが吉と出るか凶と出るか……。
「……何かいい案でも?」
「え~、と……いい案って程でもないんだケド。アラベルさまってさ、街中色々見て回りたくって、ワクワクで『沸いてる』んじゃん? だったら、他の『目に見えてワクワクするもの』を見せてあげれば、一旦は止まるんじゃないかなぁ~……って。対症療法にしかならないんだけどねぇ……」
ここで、俺の脳内に電流が奔る。
……確かにッ!
──……と。
まぁ、俺はこの世界について全然知らないから、思いついたところで実行は出来ないんだが。
「で、提案するぐらいって事は宛てがあるんだよな?」
今にも暴れ出しそうなアラベルを抱き寄せ、腕で拘束して押さえつつ聞く俺。
……アラベル、意外にも力が強かった。まず、転生前の俺なら比べるまでもなく力負けしているだろうな。
「そ~、だねぇ~……最近出来た、ウチの友達のとこなんだけど……」
そこで言い淀むイヴ。
…何か問題でもあるのだろうか?
「……ぇ~アイツに会うのメンドクサ…………」
──と、イヴは零した。
……なんで問題が増えそうな気配ばっかりするのかな?
◇◇◇
流れるようにアラベルを制圧し、列車に乗ってエリア:23までやってきた。
この駅から少し歩いたところに、どうやらイヴさんの『友達』がやっている〝何でも屋〟があるらしい。
「日頃から、困ってる人を見つけては助けてるらしいんだけどね。ウチみたいな……ってよりアラベルさまに近いギャルでさぁ。ま、そのコはいいんだけどぉ……ん~と…………付き人? 的な? そんな感じの人がいて、ソイツがメンドクサくて」
「面倒くさい、っていうのは?」
「…………主に、ダル絡みが」
「えっ」
想定してた『面倒くささ』じゃない……!!
嘘だろ……そういう系とは、異世界に来ても会った事ないぞ……?
「って、話してる間にも着いたねぇ……。……はぁーーー、アイツに会うのメ~ンド~」
そんな事を言いながら、ファンシーな色味の建物にあるドアを開けて中に入っていくイヴ。扉の隣の壁には、でかでかと『はぴでり』の文字が。
俺はさりげなくワクワクで暴れ出しそうなアラベルの首根っこを掴み、イヴに続いて中に入っていく……。
中に入ると、そこでは。
「あ~っ! イヴちゃんじゃん、久しぶり~!」
パーマのかかった長い茶髪に派手めの服を着た女性が、イヴと親しげに話している。
「ラヴィちゃんも。元気? 怪我とかない?」
「無いない、無いよ!」
「ラヴィちゃんはそれなり無茶するからさぁ。友達としては心配だよねぇ」
「え~っ、やっさし~」
「うるせーし! イチイチ言わなくてもいいよぉ」
本当に親しげ──というか。
ギャルじゃん!
接し方から言葉遣いから、雰囲気まで。隅から隅までギャルだ……。
「で、今日はどうしたの? お困りごと? サボりは禁物だよ」
「あ~、サボりってわけでもなくってぇ~……上司の仕事の手伝いを頼みたいってゆ~か……。まぁ、子守りみたいなものなんだけどねぇ」
「そうなの? あそこで、白髪の子に首根っこ掴まれてるのがその……子守りの相手?」
「あ、そぉそぉ」
何やら話が進んでいる……が、ここで。
「おっ、珍しくイヴちゃん来てんじゃ~ん、元気してた?」
「うわっ。……出やがったな、アラン……」
「相変わらず辛気臭いなぁ、イヴちゃんは。俺が来た途端露骨に嫌がるしなぁ~」
童顔で、短い金髪に、透き通った紫の瞳を持つ青年が現れた。
イエローのラフなシャツに黒いズボン、濃紫色のコートを着ている。
イヴとは親しげ……というわけでもなさそうで、イヴ本人は厄介がっている。つまり、この人こそ、イヴが言っていた『面倒くさい人』だろうな。
「まぁまぁ、二人とも仲良くしなって~」
イヴに『ラヴィちゃん』と呼ばれていた人が、二人を制する。しかし──
「え~ヤだよ! コイツ、ダル絡みしてきてウザイし……」
「酷~いなぁ。何回か依頼解決してあげた事もあるだろぉ?」
「……じゃあ態度! 態度どうにかしろってのぉ」
イヴはラヴィさんの背後に隠れて、アランさんを手で追い払おうとしている。アランさんはわざわざ後ろに回り込んでイヴに迫るわけでもなく、ラヴィさんで隔たれた先からイヴにダル絡みしていた。
……想像を軽く超えてきた愉快な二人と、俺は出会ったのだった。




