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竜として異世界に転ず  作者: 暁悠
第4章 魔界動乱編
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第67話 The unknown world-記録されていない世界-Ⅲ

 ブルータルに乗って移動し始め、数十分が経った。

 かなりの巨躯だし、人を踏んづけてしまわないか不安だったのだが……案外、そんな事はまだ一度も起こっていない。よく考えたら、それは当たり前なのだ。

 戦闘補助の役割も持つオーガロイドだが、当たり前に特別な訓練を受けている。少し違うが、俺がいた世界でいう警察犬のようなものかもしれないな。


「さて、二人とも」

「「ん?」」

「そろそろだ、構えておけ?」


 そのニヤついた美人──リリスさんが、そう言った。

 ああ、ああ、ルディア。言いたい事はわかるとも。


「……なあ、アヴラージュ」


 おっと、これはシュトルツとも意見が合うか? やっぱり、漫画とかで言うライバルキャラなのかもな、シュトルツは。

 まあ、満を持して言ってやろうじゃないか。


「ああ……」

「これは……」


「《「この人……思ったより危険な人なのでは?」》」


 なんというか、戦闘狂じゃない?



 音が聞こえる。


「クソッ、手強いな」

「表皮が……()ってぇ!!」


 悪態をつく人の声。

 力強い銃声。銃弾が弾かれる甲高い音。元々俺は耳が良かったが、目に見えない距離の事まで聞こえるとは。竜になったから、語感が強化されてるのか? まあ、それはいいとして──

 ──近い。


 目の前には、異質な形状の生命体と戦うこの世界の人間達。戦っている異形の存在はやはりどこか不気味で、ドロドロなようでしっかりと固まっている表皮と極彩色の黒い体を持つ、二足歩行と四足歩行の化け物たち。

 リリスさんが静止したブルータルの背中から飛び降りた。


「第十一軍団・防衛部隊(FORTRESS)、ここまでの足止め感謝する!! そしてもう大丈夫だ、私が来た。魔界軍第三軍団・筆頭(KING)。軍団長リリス──現着だ」


 何とも格好いい名乗り口上である。


「オレ達もするか?」

「えっ?」

「お前、こういうの憧れる性格(タチ)だろ」

「まあそうだけど──」


「り、リリス様! ……って、あの二人は?」


 なんてタイムリーな。これじゃあ名乗り口上を披露する他なくなってしまったじゃないか。

 混乱を防ぐためにも、戦うのは俺達三人にしたって名前くらいは名乗っておかなくてはいけないな。

 ──なんて事を考えながら、俺はリリスさんを真似てブルータルの上から前方に飛び降りた。


「俺達は素性不明の助っ人例外戦力──〝形なき勇竜〟アヴラージュ!」


 って形なき勇竜?

 俺、そんな事言おうとしたっけ?


《フフフフ……》


 お前か、ルディア!!

 まったく、勝手な事を……。


「……シュトルツだ」


 ほら見ろ、シュトルツは呆れている。

 ま、格好いいから見逃してやるが……この二つ名の『意味』は、後でみっちり聞いてやる。


「アヴラージュに……シュトルツ……」

「お前達は一旦下がれ。ここは私とあの二人で対処する。騎士部隊(KNIGHT)魔術部隊(WIZARD)は?」

「現着までにはまだ時間がかかります」

「そうか……追って連絡する。まだ亜人や亜獣が現れるかもしれん、警戒は怠るな」

「ハッ!」


 そんな話が聞こえた。

 え? 盗み聞きはよくないって? いいんだよ、別に。


「さて問題は……」

「どこまで出すかだな」


 そう、なんだよなぁ。

 確実に出しちゃいけないのは『特化形態』及び『強化形態』の、『形態変化(トランスフォーム)』だ。これは絶対ダメ。ワンチャン捕まって実験とかされる……そこまではないにしても、まず間違いなくかなり警戒される。ある程度この世界で生きていこうとするなら、それはかなりマズい気がする。

 後はシュトルツに言われた通り、竜の形質。つまり翼や尻尾、竜鱗。これは飛べたり攻撃に転用出来たりする便利なものなのだが、いかんせん、前述のものと同じ理由で使えない。

 後は格納空間に収納している武器とか諸々。この世界に同じようなものがあるならまだしも、これも使えない。

 ……あれ、これ素手(ステゴロ)強制?

 困ったな、かなりマズい。俺の強さは属性魔法とか属性特化形態変化なんだけど……。あーいや、さっきリリスさんは『魔術部隊(WIZARD)』とか言っていたし、魔法ぐらいなら使ってもいいかもな……。

 とりあえずは素手でどこまで()れるか……試してみるとしよう。



   ◇◇◇



「くっ……」


 亜獣、だっけ? 四足歩行の奴は。

 表皮が硬い割に、殴った時の感触がスライムのそれだ。ぐにょにょで、殴った感じが全くしない。これに関しては亜人も同様。

 ……で。


「エルアビ……ヌル……アプサ……グラウ……」


 ずっと聞き取れない変な単語を呟いている。口を塞いだりしても聞こえてくるので、発声しているわけではないようだが……それがまた気持ち悪い。


「手強いな」

「ああ。殴った感じが全然しない……これは……」


 黒銀蒼の竜剣(カレドヴルッフ)が必須なんじゃないか……?

 打撃は効かないからな。斬撃も通じるかわからないが…………ええい、ままよ!!


「フィエット!!」


 イチかバチか、呼んでみるしかない! 亜人・亜獣との攻防で手が空いてないから、フィエットの方から来てもらうしかない!! 『格納空間』内にも〝声〟が響くと信じて!!


『アヴラージュ、待──』


 言い終わる前に、シュトルツの言葉が止まった。シュトルツは強いのだ、敵の猛攻で声が止まったわけではなかろう。俺じゃないんだし。

 つまり──


『じゃじゃーん!〝竜の魔剣〟フィエット=カレドヴルッフ! ここに~~っ、見参!』

「フィエットまで謎名乗り口上を……」

『えへへ……かっこよかったから、つい……。それより、あいつらを斬ればいいんだね?』

「ああ、そうだけど……先にこっちを斬ってくれ。俺の身動きが取りづらい」


 そんな事を、亜人&亜獣の猛攻を避けながらい言う俺である。


『はいは~い、任せて!』


 それにフィエットは即答し、俺と対峙していた亜人・亜獣計六体を斬り刻んだ。

 流石の切れ味である。


「ありがとな」

『えへへへ~』


 さてさて、〝喋る剣〟なんていう特大の爆弾をこの戦地に落としてしまったわけだが、まだ言及されないだろう。俺とシュトルツとリリスさんが戦っている以上、俺のこの行動は亜人・亜獣討伐に必要だったと判断されるはずだ。打撃が効かないって事ぐらいはこっちの軍もわかっているだろうしな。

 後がかなり面倒だろうが、仕方ない。それ以上に、この戦場にいる亜人・亜獣を速く片付ける。

 そうと決まれば行動は速い。浮遊していた黒銀蒼の竜剣(カレドヴルッフ)をキャッチし、構える。いつも通り炎を纏わせて──


()(ばな)


 俺が最も使っていた剣技:紅炎(こうえん)は、超密度の炎を纏わせた黒銀蒼の竜剣(カレドヴルッフ)での一太刀。その一瞬が終わってしまえば炎の威力は忽ち(たちま)衰え、威力も減衰。再度炎のチャージが必要になる。

 ただ、今回使った新剣技:()(ばな)は違う。一撃の熱量・炎量こそ減るものの、維持時間が格段に伸びている。伸びたその時間を利用した、電撃速攻の超連撃。

 相手は亜人・亜獣。そもそも生物かもわからないそいつらの致命の弱点が、俺達と同じ胸部中央の核とは限らない。ならば今必要なのは、全身を斬り刻んで致命の弱点を特定する事。

 移動途中に教えてもらった。

 亜人・亜獣は、大体の攻撃を受けても再生する。致命の弱点の正確な位置はわからない。今まで軍は、再生出来なくなるまで斬り刻んだり消し飛ばしたりする事で対処していたそうだ。

 確かにそれが一番確実だろうが……そんなメンドーな事、俺はしたくない。俺が弱点特定して、ソッコーで決着(ケリ)つける。


『は、速っ……』

「あん時ほどじゃないだろ」

『そりゃそうだけど……ねぇ?』

「お前が目醒めて、俺に同調してくれてるからこそ成せる技だ。今後ともよろしくな」

『えっ、えへへ……よぉし、張り切っちゃうぞ~!!』


 ちなみにだが、今の『()(ばな)』一回で、斬った十体中三体が死んだ──と、思われる。再生せず、肉体が塵になっていたからほぼ間違いないだろうが……万が一がありそうだ、安心はしないでおこう。

 この三体に共通しているのは、頭と胸、つまり心臓と脳を斬った事。


「ヘヘッ……」


 いけね、思わず笑みが零れちまった。

 なんだよ、おい。どんな()っそろしい生態の化け物(バケモン)が相手かと思いや、普通に殺せるじゃねーか。

 そうとわかれば──


(れっ)()


 いつかにちゃんとした名前を決めようと考えていた、獄炎斬・烈火の強化版である。

 烈火と、()(ばな)。力強く、繊細に。

 残った七体を、殲滅。


「あ、ああ……」

「……これぐらいで驚いていたらこの先、コイツとはやっていけないぞ、リリスとやら」

「ええ……? とんでもないぞ、アイツ。なんだ今の速さは。とても魔界人類の動きとは思えん……それこそ〝ヤツら〟と同じ……」


 唖然としたリリスさんと、もうかなり慣れた様子のシュトルツが話していると思えば……なんだか不穏そうだな。

 ヤツら、とは。何だか因縁あり気な言い方だが……。

 さて、シュトルツはどんな感じかな?

 最近、レアスキル『俯瞰』を使いまくってるおかげで、他人の状況も同時に見れるのだ。まあ、脳に映像が二つも届くので気持ち悪いったらないが……。そこは、脳内でモニターを二分割するイメージ。そうすれば脳がバグる事もない。

 で、シュトルツだが──



   ◆◆◆



 時は戦闘開始直後にまで遡る。

 アヴラージュは戦闘開始して始めに亜人一体亜獣二体、計三体と相対したが、シュトルツはそれぞれ半分ずつ計十体と一気に相対した。


(さてどうなるかな。オレの攻撃がどこまで通じるか……フフフ……何せ未開の世界だ。どんなモノがいるかわかったもんじゃないからな……)


 どこまで行っても戦闘狂なシュトルツであった。

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