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竜として異世界に転ず  作者: 暁悠
第3章 深罪激闘編
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第66話 The unknown world-記録されていない世界-Ⅱ

 メイズ・ロワイヨーム。

 四つに分けられた〝魔界〟の州。その中でも中核政治及び魔界全体の統治をするカピタル中央政府の州知事。

 そして、十二ある魔界軍の中でも最も強力な第一軍団を纏めあげる軍団長でもあり、総司令官。

 以前はメイズさんよりも位の高い存在……言うなれば昔の日本で言う〝天皇〟的存在がいたようだが、病により死去したらしい。

 なので実質、この世界の最高位存在はメイズさんになるようだ。


「これで自己紹介は完了ね♪」

「ですね」

「それで、あなた達……正直に答えて欲しいのだけど、もしかして異世界から来た?」


 むむ……。

 どうしたって急にそんな事を? 第一、真っ先にそれを聞いてくるとは……。

 この人、かなり鋭そうだし……というか、じゃなきゃ国の最高位なんてやってられないか。ここはしらばっくれるより──


「どうしてそう思ったんです?」

「あら、当たりかしら。どうして……そうね、前例があるから、と言ったところかしら」

「前例?」

「ええ。あなた達がこの世界を訪れた時に発生した強力な霊子振動反応……それが観測される事は、しばしばあるもの」


 ほう……?


《つまるところ、異世界というモノはそれほど珍しいってわけじゃないようだね》


 それはわかるわ。


「それが──」


 メイズさんが続けようとした、その時だった。


『エリア21にて霊子振動検知!! これは……奴らじゃない。また亜人及び亜獣だ』


 部屋にあるモニターに一人の女性が映し出され、緊迫感のあるサイレンと共にそう告げた。

 亜人、亜獣。聞き慣れているようで、聞き慣れない単語。


「…また? 今日で二回目ね」

「ペースがおかしいな……まあひと先ずは、ノールの第十一軍団に──」

「いいえ」


 うん?


「今回は、異例だけれど例外戦力(・・・・)に任せるわ」

「例外戦力……? メイズ、まさか……」


 うん??

 なんだか……根拠のない嫌な予感が……。


「アヴラージュくんに、シュトルツくん♪ 今回は、あなた達に任せてみるわ♪」


 え、ええ……。


「おい、メイズッ!! どういう事だ? 異例も異例だぞ、こんな事!!」

「考えてみなさい、リリスちゃん? これはチャンスでもあるのよ? この二人が、直近のアレに関連するのかどうか、確かめるの。後は……実力試しってところね♪」


 ……と、聞こえた。

 俺とシュトルツが戦えって事である。

 メイズさんの企みとしては……はぐらかされているが〝例のアレ〟に、俺達の『転移』が関係しているか調べるため。後は、俺達の力がどんなもんか試す……といった感じ。

 ついでに面倒事を押し付けようという魂胆もあったりするのだろうか? まあ、そこはどうでもいいが……。


『アヴラージュ』


 そんな事を考えていたら、シュトルツから『思念』が送られてきた。しかし、少しノイズ混じりみたいな感じになっている。

 環境の違いだろうか……?


『どうした?』

『……やはり思念の質が悪いな。別世界故か……』

『それはいいから。俺も思ったし。で、なんだよ?』

『これから移動するようだが、〝竜〟の形質は出すなよ。翼とか、竜鱗とかな』


 ああ、そういうね。


『わかってるよ。俺達が〝竜〟だって事はバレない方がいいってね』

『わかっているならいい』


 それぐらい俺でもわかるとも。

 あ、ルディア。俺っぽくないねってのは、別に言わなくていいからな。


《バレてたか》


 そりゃあな。そこそこ長い付き合いだ、お前の考えている事なんてほぼお見通し。


《嬉しいね》


 っと、ルディアと話しているだけじゃあなく──


「受けますよ、その依頼」

「……依頼?」

「さっきの『別世界から来たんじゃないか』って問い、肯定します。そのうえで、その依頼を受けましょう。前の世界で俺達は、冒険者っていう……何でも屋みたいな職業でしたから」

「……あら、それは頼もしいわね。それじゃあ、リリスちゃん?」


 そう言って、メイズさんがリリスさんに目で合図した。


「……わかった。手配しておこう。早速だが、移動する。二人とも着いてこい」

「言う通りに♪ 戦い方や敵については、戦場でリリスちゃんが教えてくれると思うわ」


 だそうだ。

 さて、受けてしまったからには取り消せないが……とりあえずは、この人達が信頼出来るのかどうか調べる必要があるな。

 今回の依頼を受けたのもそのためである。まあ、馬鹿でもわかる腹の内だろうが……。

 俺にはルディアとシュトルツがいるし、最悪捨て駒にされたとしても生き残れるだろう。異世界からの部外者である俺達を助けてくれるのかと言ったら少し疑問が湧くが、とりあえずその疑問は無視。

 この世界の情報を収集するのも大切だろうとか、その他諸々の考えがあったりするが……一番は、〝亜獣・亜人〟の存在。全く聞きなれないと言えば噓になるが、〝亜獣〟という単語は前の世界でも聞いた事がなかった。

 それもまた、確かめる必要があるな……。何にせよ、とてもワクワクする。



   ◇◇◇



 リリスさんと一緒にあの部屋を出た俺達は、もう一度昇降機(エレベーター)で地表へ。


「エリア21って言ってましたが、それって、移動に大体どれくらいかかるんですか?」

「普通の手段ならば、大体二日だな」


 なっが!?

 もしかして、今からそんな時間をかけて現場に……?


「……なに、心配するな。火急の事態だ、そんな時間をかけて移動するわけがない」


 よかった……。

 だが、ならどうやって? 俺達の世界には『転移』という便利なものがあったが、この世界にもそれがあるとは限らない……。


「君達に馴染みがあるかどうかは知らないが……少なくともこの世界では、こう移動する」


 説明口調でそう言ったリリスさんが、ぽつりと呟いた。


「──戦用獣機召喚ビースト・インヴォーク


 すると、次の瞬間、リリスさんの目の前に魔法陣が現れる。地面に現れた淡い光を放つそれは、とある一つの物質……いや、存在を召喚した。


「これで移動する」


 俺達の目の前には、全身が機械で構成された恐竜。見るに、ヴェロキラプトルとか、そこら辺の種類だと思われる。()の有名な恐竜映画にも登場した、賢いアイツである。しかし、大きさは映画で見た想定の倍はデカい。

 人と同じかそれ以上……どころか、見下ろされて上からバクっといかれそうである。

 この世界にも魔法があったんだなとかは、この際もうどうでもいい。

 なぜなら、それは厨二病患者垂涎モノだったから。


「〝オーガロイド〟──正式名称を戦用獣機械生命体オーガニズム・アンドロイド……機械生命体だ。コイツは、私専用のオーガロイド。爬虫類・ディノニクス種。名前はブルータル…………っておい、聞いているのか?」


 そりゃあもう、聞いていますとも。バッチリ。

 しかし、俺の視線は、ずっとそのブルータルに固定されていた。


「…………す」

「す?」

「すっ……ご!! どうなってんの、これ!? なんで機械なのにこんな……生命力溢れる目をしているんだ!? てか、どういう原理で動いてんの!?」


 一度喋りだしたら止まらなかった。シュトルツ……何ならルディアも呆れている。

 だが、そんな事は関係ない。重要なのは、目の前で『機械仕掛けの恐竜』という存在が確かに〝存在している〟事なのだから。


「どういう原理って……それは──」

「企業秘密? やっぱりそういうもんかぁ。てかこの子、乗れるの? 乗れるんだよね? これで移動するんだしね!?」

「ああそうだよ、遊んでる暇はないんだ。一旦落ち着い──」

「早く乗ってみた~~い!!」

「落ち着けバカ」

「痛っ!?」


 シュトルツ頭を叩かれた……。

 コホン……ちょっと興奮しすぎたようだな。自省しよう。


「……すまない。気を取り直して、早速向かおう」

「「お前が言うな!」」


 おっと。

 シュトルツとリリスさん、ナイスツッコミ。ハモっていた。


「……」

「……」

「「……プッ…ははは、はははは!」」


 二人は顔を見合わせて、少し笑っていた。



   ◇◇◇



 リリスさんの指示を聞いてから、ブルータルの背中に乗る。

 質感はやはり金属そのものだった。素晴らしくカッコいい。

 そしてリリスさんは、前見た警官のような、耳を覆うようなデバイスを右耳につけていた。


「ブルー、エリア21に最高速度で向かうぞ」


 おっと、呼び方まで……。

 凝ってるねぇ。


「クルルル……」


 喉を鳴らして頷いたブルー……もといブルータルは、全速力で移動を開始した。

 超快速である。めちゃくちゃ速い。それこそ、前世で見た車の数倍……いや十数倍は速い。


「むず痒い……」

「ん? どうした、シュトルツ?」

「いや…ここだけの話だが、オレ達が普通に飛んだ法が速いなと……」


 はあ?

 なんだコイツ。竜の形質を出すなって言ったのはシュトルツの癖に、何を言っているんだか。


「飛んでいいなら飛ぶけど?」

「やめておけ、危険過ぎる。……にしても、困ったものよな……」


 まあ、それはそうだ。まったく困ったものである。

 さっさと元の世界に戻らなければ。シュトルツと俺、プラスでルディアがどこともわからぬ別世界に飛ばされた今、向こうに対抗戦力は少ないだろう。加えて、ハープズフトもどきの存在。

 ルディアのお母さんだっけ? 人を別世界に強制転送出来るくらいだ。かなりマズい……どころか、あの人に太刀打ち出来るのルディアくらいじゃないか?


《そうだね……可能性があっても……アヴ、キミだろう。太刀打ち出来るのは》


 俺? なんだ、急に嬉しい事を……って、言ってる場合じゃないな。

 ひと先ずは、ルディアがあの技を解析し終わるのを待とう。


《けど、再現と発動にはそれぞれ膨大な魔力が必要だ。再現ならボク一人の魔力でギリギリ賄えそうだが、発動は出来ない。だから、解析さえ終わればすぐにでもってわけにもいかない。そこも問題だね》


 まあまあ、そういうのは解析が終わってから考えようぜ。今は、目の前の事に集中するとしよう。


《そうだね、ひと先ずはそうしようか》


 色々と不安だったが、まあ何とかなるだろう。今までと、何ら変わりはない。

 大丈夫だ。俺には、ルディアとシュトルツがいるのだから。


 ──俺は、移動の最中にそんな事を考えていた。その間にも、目的地との距離が縮まっていく。

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