その69
『・・・これはこれでアリかな〜』
わたしは部屋の姿見に映るほっそりとした自分の騎士服姿に、取り敢えず満足してからキッチンに向かった。
(((((((リーナ様!おはようございます!)))))))
『おはよう!ハムちゃん達!』
キッチンには既にハムちゃん達がいて、こちらを心配そうに見たので、わたしは努めて明るく朝の挨拶をした。
わたしとしては昨日のウサギ共への怒りはまだ完全には治まってなかったけど、さっき見た自分の騎士服姿は小動物感がマシていたので、そこ迄落ち込んでも無かったのだ。
こうして、闇堕ちしたウサギの聖獣のカツサンドの朝ご飯をお腹いっぱい食べてから、わたし達は【禁足の塔】の十一階へと向かったのだ。
『・・・』
(((((((・・・)))))))
「「「「「「「・・・」」」」」」」
「・・・これはさすがに無理だねぇ」
「せやな〜。俺様もパスやな〜」
「あたしも、今日は諦めた方が良いと思うわ〜」
「拙者もこの状況ではお役に立てそうにないでござるな〜」
「俺も絶対嫌だ!そもそも寒いの嫌いだし!」
わたし達は入り口から見える異世界に吹き荒れるブリザードと、そのブリザードも何のそので元気いっぱい口から氷の槍っぽいものを飛ばしまくってる良く分からない生き物を見ていたのだけど、白亀によればお天気は変わるらしいとの事で、今日は待機の一日となった。
『・・・何しようかな〜・・・あっ!そうだ!』
わたしは手乗りサイズになってソファーでピーナッツを食べている白雀の、最近は常にキッチンに置いてある背負い籠を使って、ずっとしてみたかった調理をする事にした。
そして、頭陀袋から携帯食料を出すと宿命通をオンにした。
『・・・なるほど〜。って言うか、結構高いな!』
わたしは携帯食料の味からして材料は、まあ、そんな感じだろうなとは思ったけど、まさか一個百グラムしかないのに千ガルドもするとは思わなかったのだ。
そして、材料は頭陀袋に全て入っていたので、試しに同じ物を作ってみる事にした。
『・・・うん、いつもの味気ないカ○リーメイトが出来たわ』
こっちの世界の携帯食料は前世で言う所のショートブレッドタイプで栄養満点と言われてたけど、宿命通で見た感じ、そこ迄栄養満点とは思えない物で、まあ、飢え死にはしないよね〜ぐらいのものだったのだ。
わたしは頭陀袋からダンジョン【暗闇の深淵】の第三階層で手に入れたナッツやドライフルーツやマシュマロ、皇帝陛下から賜った食材の中に入っていたオートミールとはちみつとバターを出して、大きなボウルで混ぜてから、シリアルバーを想像しながら白雀の背負い籠に入れてみた。
そして、大きなボウルに大量のシリアルバーが出来上がったので一つ齧りながら宿命通で見てみた所、これぞ正しく栄養満点な携帯食料が出来ていたのだ。
『ハムちゃん達!味見してみて!』
(((((((はい!リーナ様!)))))))
わたしが何を作ってるのか気になって近くで見ていたハムちゃん達に味見してもらったら、ハムちゃん達の顔はぱあっと輝いた。
(((((((美味しいです!リーナ様!)))))))
そして、これが本当の栄養満点な携帯食料だと伝えると、ハムちゃん達も独自のレシピで作り始めたのだ。
『・・・うんまっ!?甘くないのも、うんまっ!』
わたしが作ったのは大学の時に食べていた手作りシリアルバーでそれしかレシピは知らなかったのだけど、ハムちゃん達は男神様レシピのチーズやベーコンなんかも入れてみたらしく、塩気があっておつまみとしても成立していたのだ。
「何や、お前等美味そうなもん食ってるな〜。一つくれへんか?」
わたし達がキッチンでキャッキャッしながらシリアルバーを食べていると、白龍がやって来たので味見させてあげたのだけど、その日は結局そのまま大宴会の一日になったのは言うまでもない。
そして、次の日朝、わたし達は良く晴れた銀世界がどこまでも続く十一階の異世界へと足を踏み入れた。
プスッ!
『痛っ!』
わたしは新たに眉間に刺さった氷の槍を右手で抜くと、そのまま攻撃してきた相手に投げ返した。
グサッ!!!
ギャオーーーーーーンッ!!!
ここ【禁足の塔】の十一階で闇堕ちしていたのは、昨日は吹雪で良く見えなかったけどバカでかい真っ黒なオオカミの聖獣で、そのオオカミ達の攻撃は口からの氷の槍で被毛がめちゃくちゃ防御力が高いらしく、魔法攻撃も物理攻撃も何でも効果ありにも関わらず最初は苦戦した。
だから、わたしは今現在オオカミ達よりも巨大化して怪力を活かして戦ってるのだけど、オオカミ達の氷の槍の攻撃を受ける面積が広くなったからか、まあまあぶっ刺さっさるので、あちこちチクチク痛いのだ。
そして、皆んなも最初は苦戦していたのだけど、今は白雀がオオカミ達の被毛を次々と火魔法で焼いて丸ハゲにし、その丸ハゲ状態の狼達を討伐すると言う流れになっていた。
『・・・終わったけど、痛い』
「リーナ様!何とお労しい御姿でござろうか!これは拙者の作った傷薬でござる!お使い下され!」
わたしは全身のあちこちに出来た地味に痛い穴状の傷に掛けるべく、一応匂いを嗅いだけど無臭だった白虎の作ったローションタイプの傷薬を騎士服を脱いで頭から被った。
『ギャーーーーーーーーーーーーーーーッ!?』
「リーナ。お前はアホか?白虎の薬やで?絶対、何かあるに決まっとるやろが〜」
わたしはチクチクした地味な痛みから死んだ方がマシなんじゃなかろうかと言うぐらいの激痛に変わった事で、タヌキの大絶叫が出てしまったのはしょうがないと思う。
そして、謝り倒す白虎の謝罪を受け入れたわたしは、次の日の朝にはモフ毛が完全復活していたので、この先もこの事については反省も後悔もしないと思ったのは言うまでもない。




