その68
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
ブチッ!
わたしは闇堕ちした真っ黒なクラゲの聖獣を手で引き千切ると、辺りを見渡した。
『・・・』
ここ九階の真っ黒な紐状のクラゲの聖獣は物理攻撃のみ可能だったので、わたしは捕まえては引き千切るを繰り返したけど、どこまでも湧いて出て来るクラゲ達にいつも以上に疲れていたし、いい加減嫌気もさしていた。
それは何故かと言うと、討伐してもお肉も無いし、それどころかお金にもならなかったからだ。
そして、それは副隊長を筆頭に皆んな同じ気持ちだったみたいで、異世界空間では黙々と討伐が行われていたけど、取り敢えず終わりも近そうだなとは思った。
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
「・・・やっと全討伐完了だねぇ。晩ご飯にしようか!」
『はっ!』
わたし達は皇太子に騎士の礼を取ると脱力感いっぱいで安全地帯のある入り口へと向かった。
・・・ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!
わたしは最後尾にいたのだけど、何やら聞こえて来たので立ち止まり振り返った。
『あれ何だろ?』
わたしが遥か彼方の上空をじっと見てみた所、音も何かもあっと言う間に大きくなって来た。
「リーナっ!?伏せろっ!」
わたしは隊長の大声に前を向きながら慌てて伏せようとした。
ザンッ!
ズバッ!
そして、慌てて伏せようとしたわたしに駆け寄りながら、隊長が抜刀して斬り伏せたのは真っ黒なかなり太さのある長いロープの様なもので、隊長が真っ二つに斬るとスッと消えたのだ。
「何や、まだおっ・・・リーナ。エライ事になってもうとるわ・・・頭」
『え?頭?』
わたしは白龍に言われて頭を触ると、てっぺんのモフ毛が綺麗さっぱりなくなってツルツルになっているのが分かった。
「・・・耳が無事で良かったな」
『・・・』
わたしは隊長に言われ、疲れと空腹で寝ていたから助かったらしい耳の無事を確かめていると、どこからともなく聞こえて来たさっきの音がまたしたので、振り向くと一気に巨大化した。
そして、物凄いスピードで横回転しながら飛んで来た真っ黒な太いロープを片手で捕まえると、両手で持ち引き千切った。
『・・・絶対に許さないからっ!』
こうして、その後次々と大量に飛んで来た闇堕ちした真っ黒なクラゲの聖獣其の二VSザビエルスタイルとなったわたしの怒りの第二ラウンドが開始されたのだ。
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
「・・・いや〜!リーナのお陰で楽勝やったな〜!彼奴等、最初の奴等より百倍は強かったのにな〜!」
「この頭にされたら、さすがにあたしでもブチ切れるわ〜」
「リーナ!リーナはどんな姿になっても可愛いよ!」
「拙者もニック殿に同意するでござる!リーナ様はどんな御姿でもリーナ様でござるからして!」
(((((((リーナ様!お辛いですよね!晩ご飯はあたし達が作ります!)))))))
『・・・ありがとう』
わたしは慰めてくれるニックと白虎とハムちゃん達にペコリとお礼をすると、やたらスースーする頭頂部を少し気にかけながら、お腹ペコペコで九階の異世界から出たのだ。
『・・・うんまっ!?このパエリア、マジうんまっ!』
わたしはザビエルスタイルとなった事にまあまあ落込んでいたのだけど、ハムちゃん達が作ってくれたアルマジロ肉とカエル肉のパエリアが美味し過ぎたので、すっかりテンションは上がっていた。
「このスパークリングワインちゅーやつと相性抜群やな〜!」
「そうね〜!白も赤もロゼも何でも合うハムちゃん達のパエリアも本当に美味しいわ〜!」
そして、ハムちゃん達はピザやパスタも作ってくれていたので、わたしはドライビールやハイボールも作って、その日も大宴会となったのだ。
次の日の朝、わたし達は朝ご飯を食べ終えると【禁足の塔】の十階へと向かった。
わたしは十階の入り口から異世界を見て心の中で小躍りした。
『この前より大きいウサギだから在庫がいっぱい増えそう!』
こうして、闇堕ちした真っ黒で巨大な垂れ耳ウサギの聖獣VSわたし達の戦いは開始される事となったのだ。
この前の闇堕ちしたウサギの聖獣とは違い、こいつらは魔法と物理の二刀流で攻撃してくるタイプで、こちらからの攻撃は物理攻撃のみ可能らしかったから、わたしは速攻で巨大化すると、突進してくるウサギ達を力に任せて蹴散らした。
すると、蹴散らしたウサギ達が断末魔の咆哮を上げたと思ったら巨大な竜巻きが現れてこちらに飛んで来たのだ。
『っ!?』
わたしはその場で踏ん張ったのだけど、フワリとした浮遊感がしたと思ったら一気に竜巻の中に飲み込まれてぐるぐると高速回転に巻き込まれた。
『えっ!?ちょっ!?無理ーーーーーっ!!!』
ドガーーーーーーンッ!!!
わたしはもう自分がどうなってるのか分からないぐらいには振り回されまくった頃に、物凄い衝撃がしたと思ったら、フッと竜巻は消えた。
ドベッ!
『ブへッ!?』
そして、目の前が地面だと理解した時には地面に落ちていて顔面を強打していたのだ。
「ちょっと目を離したらこれや・・・リーナ。お前、またエライことになってんで?」
『え?』
わたしは起き上がると、竜巻で突進して来るウサギを蹴散らしている白龍の物凄く残念な生き物を見る目に慌てて頭を触ってみたら、そこは昨日と同じツルツルだったので耳の無事を確かめようとして一瞬固まってしまった。
そして、ツルっとした手触りの耳から顔と順番に自分の体を確かめてみると、騎士服は勿論、モフモフだったはずの体には一切何も無かったのだ。
『・・・』
こうして、わたしは久しぶりに丸ハゲとなり、その後はウサギ相手に大暴れしたのは言うまでもない。




