ジークフリードSide〜その13
俺が目を開けると、そこには俺を見下ろすリーナがいた。
「リーナっ!?」
『グエッ!?』
俺は一瞬驚き、またリーナが消えてしまうのではと思った瞬間には起き上がりリーナを抱き締めていたが、白龍にリーナが苦しそうだと言われ慌てて解放して謝罪した。
・・・こんなカツ丼作れる令嬢とか絶対いないと思うぞ?
俺が目を覚ましたのは夕方で、晩飯は無事に神界から帰って来たらしいリーナが作ってくれたのだが、相変わらず本当に美味かった。
その後、神界の物凄く美味い桃を食べた俺は安心してその日は眠り、次の日の朝に改めて第七階層へと向かったのだ。
・・・何だこの部屋は?
俺は目の前に広がる虹色のだだっ広い空間にフワフワゆらゆらと浮かぶキラキラと輝く浮遊物に少し驚いた。
そして、ヴァージルによる鑑定結果を踏まえて討伐の作戦を立てようとした直後にそれは起こったのだ。
いきなりリーナがダンジョンの部屋の中に飛び込んだのが視界の端に見えたと思ったら、リーナはキラキラと輝く浮遊物をジャンプ一番手で叩き割った。
そして、浮遊物の中には透明の四角い物の中にさらに何かが入っていたのだが、リーナはその四角い透明の物の中身をバリバリと音を立てて食べ始めたのだ。
・・・俺としてはポテチもポップコーンも塩味が好きだな
こうして、第七階層はリーナのいつもの行動力によりヴァージルがホクホク顔になったのは言うまでもない。
・・・俺も彼奴等は無理だ!いや!絶対無理だ!
第八階層へ到着した俺は白龍達から神災級魔獣がいる事を聞きどんな魔獣なのかと思っていたら、リーナを使ったヴァージルのまあまあえげつない確認の仕方でその姿を見たのだが、あまりの気色悪さに全身に鳥肌が立ったのだ。
・・・もう毛は逆立ってないな。良かった
俺は腕の中でスヤスヤと眠るリーナに少し安心しながら抱え直すと、改めて防御魔法を強化した。
・・・リーナはいったいどんな夢を見てるんだ?
リーナは寝たと思ったら俺の左腕に齧りついて来たのだが、魔石を噛み砕くリーナの歯と顎の力を思い出し全力で全身強化をしたのは言うまでもない。
そして、俺の魔力が心許なくなって来た頃、漸く虫型の神災級魔獣の討伐が完了したと思ったら、まだラスボスがいたのだ。
・・・疲れた。いったいいつ終わるんだ?
俺は未だ終わりの見えないラスボスの討伐と、目の前で繰り広げられる聖獣達のしょうもない喧嘩に心底疲れ切っていたら、幕切れは突然で呆気ないものだった。
・・・リーナ!感謝する!って言うか、マジで腹減った!
こうして、リーナとハムスター達による乱入討伐により、俺はいつもより遅い晩飯となったがハイボールとマルゲリータを心ゆくまで堪能したのだ。
翌日向かった第九階層には既に魔獣達がいたのだが、そいつ等は魔法攻撃も物理攻撃も効かない厄介な神災級魔獣だった。
・・・本当にリーナの料理は美味いよなぁ。リーナの獣人姿ってどんな感じなんだろうな。この先もう変化はしないのかな?
俺は美食家らしい神災級魔獣を昇天させるべくせっせと料理を作るタヌキ姿のリーナを見ながら、餃子を一つ口に入れた。
そして、結局その日は打つ手無しとなり、俺はリーナの作ってくれた美味いつまみで久しぶりに深酒をしてしまったのだ。
・・・どう言う事なんだ?
俺は次の日の朝、ダンジョンの部屋の中がすっかり明るく綺麗な聖域と化していたので物凄く不思議に思ったが、何も無い空間にヴァージルは全く興味は無いらしく、結局訳が分からないまま第十階層へと向かう事となった。
そして、第十階層は神災級のゴーレムがいたのだが、警戒心が強い為リーナが囮となる事になったのだ。
・・・俺が投げたかったな
俺は頭上を飛んで行くリーナの寝顔を見ながらゴーレム達の討伐に勤しみ、晩飯は俺の好きな餃子だったのでハイボールと堪能した。
そして、闇堕ちした聖獣の肉の調達が必要となったので、一旦ロゼルナイト辺境伯城に帰還したのだ。
「・・・白龍達に続いて、白亀までも戻って来ないのか?」
「はい、閣下。さすがにおかしいと思いますが、如何なさいますか?」
「・・・アンジュ兄上へ相談してみるか」
「かしこまりました」
そして、闇堕ちした聖獣の肉を調達しに行った白龍達の様子を見に行くべく、俺はリーナ達と帝都へと向かったのだ。
・・・まあ、こんな事だろうとは思っていたが、このままではヤバいよなぁ
俺は帝都の【禁足の塔】の五階の異世界で、怪しげな者達に囲まれ虚ろな目をした白龍達にどうしたものか考えていたら、アンジュ兄上の放置一択と言う通常であれば至極真っ当な意見に異を唱えるようにリーナは騎士服を脱いだ。
だが、俺も白龍達をこのままにする気は無いし、リーナに万が一の事があるのは絶対に嫌だったので同じく騎士服を脱ぐ事にした。
・・・タヌキの第六感って凄いんだな。いや、きっとリーナが凄いんだろうな。さすがは金色の獣人だよなぁ
こうして、白龍達を救出するべくとったリーナの作戦は大成功に終わったのだが、リーナに対する感情がこれまでの俺の人生で縁の無かったものに変化してる事に、俺自身は全く気づいてなかったのだ。




