その61
バァーンッ!
「・・・リーナ!ハムちゃん達!」
『っ!?』
(((((((っ!?)))))))
わたしは今となっては男神様がちょこちょこ増改築した事により、野営セットの三階建ての建物と言うよりもホテル並みに巨大化しているので、大きな両開きとなった玄関扉を勢い良く開けて飛び込んで来たニックに、ついにやったか!?と調理の手を止めた。
「鰻の蒲焼もトリュフ入りテリーヌもダメだった!」
『・・・』
(((((((・・・)))))))
わたしとハムちゃん達はニックの言葉にがっくりと肩を落としたのは言うまでもない。
「めっちゃ美味いのに何でやろな〜?白亀、彼奴等美食家言うてなかったか?」
「何かこだわりでもあるんじゃない?知らないけど〜」
「リーナ様!ハムスター達殿!鰻の蒲焼もトリュフ入りテリーヌも拙者には最高の料理でござるよ!」
「うんうん!本当に美味しいよな!」
わたしが作った料理の味見に専念してるわたしとハムちゃん達以外の面々に小さく溜め息を吐いたのは許して欲しい。
わたしとしては最初は余裕でしょ!と思い、白雀の籠でタヌキローストを作って投げ入れてみたのだけど、見事にスルーされたので、仕方無しに男神様の増改築でホテル並みの厨房となっている巨大アイランドキッチンでハムちゃん達と唐揚げやハンバーグにトンカツやら、ハムちゃん達がつくる男神様レシピの料理等々を次々と作った。
だけど、これまで作った料理は彼奴等に全てスルーされると言う、この上ない屈辱を味わっているのだ。
わたしは錦魚の海鮮巻を作りながらどうしたものかと考えてみた。
『・・・他心通で彼奴等が何を食べたいかとか分かるのかな?』
わたしは錦魚の海鮮巻を作り終えると、それを持ってハイエナっぽい神災級魔獣達の所に行ってみる事にした。
『・・・だから何が食べたいのよ!具体的に言ってよね!』
わたしはめちゃくちゃ美味しいはずの錦魚の海鮮巻がスルーされた事も、神災級魔獣の頭の中にはただただ食べたい、ただただ眠りたいと言う感情しか無く、全く何が食べたいのかは分からなかった事にもイラッとしたのはしょうがないと思う。
『あっ!眠り薬とかありかな!?』
わたしは閃いてしまったので、早速白虎に眠り薬を作って貰い部屋の中に散布して貰う事にした。
「・・・リーナ様!申し訳ござらん!拙者が不甲斐ないばかりに!」
「ある意味正解ちゃうか?彼奴等あのまま昇天しそうやで?」
わたしは白虎が作った眠り薬を散布したダンジョンの部屋の中でのたうち回る神災級魔獣に、ちょっと同情してしまうほどにはえげつない匂いに必死で鼻を抑えていた。
そして、三十分後にはハイエナっぽい神災級魔獣達は完全復活して、またヨダレを垂らしながら彷徨き始めたのだ。
ちなみにわたしも白虎の風呂敷で眠り薬を作ってみて散布してみたけど、こちらは完全スルーされてしまった。
『・・・後は唯一の女王か〜・・・・・・・・・これはもう変化するしかないよね〜』
そして、わたしはもう直ぐ晩ご飯の時間だったので、いつもよりお酒が進むおつまみを作りまくって皆んなを泥酔状態の深い眠りにつかせると、夜中にこっそりと野営セットを抜け出したのだ。
『・・・女王だしこんな感じかな?』
わたしは神足通をオンにして体長一・五メートルほどの神災級魔獣達よりも遥かに大きな十メートル級の神災級魔獣に変化してみた所、部屋の中にいた神災級魔獣達は一斉にわたしのいる入り口まで走り寄って来たのだ。
ちなみに彼奴等みたいな貧相で薄汚れたのは嫌だったので肉付きも毛艶も良い美ハイエナとなってみた。
『って言うか、めっちゃ凶暴化してない?』
わたしはヨダレを垂らしながら彷徨いてるだけだった神災級魔獣達が今では唸り声を上げながら牙を剥き出しにしてる事に疑問を覚え、他心通をオンにしてみた。
『・・・うわぁ、マジかぁ・・・』
そして、聞こえて来た神災級魔獣達の感情は自分達の女王に値するのかどうかの力比べの事しかなかったので、絶対に負けたくないのもあり六神通力を全てオンにした。
こうして、六神通力を全てオンにしたわたしVS二つ頭のハイエナっぽい神災級魔獣達との戦いが始まったのだ。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
『・・・うわっ!?危なっ!!!うりゃーーーっ!!!』
わたしは慌てて踏ん張り何とか転ばずに済ますと、背後から体当たりして来た三匹を振り返り纏めてちゃぶ台返しの要領でひっくり返した。
すると、肋の浮いた腹を見せた状態で地面に落ちた三匹はスッと消えていった。
この神災級魔獣達の力比べと言うのは腹を見せたらアウトなのは戦い始めて直ぐに宿命通を通して理解していたから、わたしは四足歩行から二足歩行になり圧倒的体格差で魔獣達をひっくり返して昇天させているのだ。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
そして、その後もわたしは次々と体当たりして来る魔獣達に踏ん張って耐えながら、ひっくり返していったのだ。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっと終わった。え?何かめっちゃ綺麗になってない?』
わたしは漸く体当たりして来る魔獣がいなくなり、暗く薄汚れた洞窟がめちゃくちゃ明るく綺麗になったなと感じていたら、彼奴等がスルーしたわたしとハムちゃん達が作った料理の数々がいつの間にか綺麗さっぱり無くなっている事にも気づいた。
『・・・お腹は鳴ってないけど、もう直ぐ朝っぽいよね・・・って言うか、あんなに頑張ったのに魔石が落ちてないとか、マジないわー・・・』
こうして、わたしは結局夜明け前まで一生懸命に魔獣討伐をしたのに魔石どころかチリ一つ落ちてない綺麗なダンジョンの部屋の中の状況に、六神通力を全てオフにして脱力感でいっぱいになりながら自分の部屋へと帰ったのだ。




