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その59

 「・・・リーナ。大丈夫だ。何があっても俺はお前を守り抜くと誓う。何があってもだ・・・」


 『・・・隊長』


 わたしは遠い遠い目をした隊長の腕の中で同じく遠い遠い目をしながら、僅か1メートル先にウゾウゾと腹を見せながら蠢くゲジゲジに似た神災級魔獣を意識の外に追い出そうとしていた。


 副隊長がこいつらの鑑定をした結果、こいつらの攻撃は貼り付き血を吸う吸血タイプだったので、わたしにとってさすがにかなりの危険が伴う為、隊長が防御魔法を展開してわたしと部屋の中央で囮となり、群がるであろうゲジゲジ達をいつものハエ叩きに似た武器でしばきまくる事になったのだ。


 「・・・リーナ。怖いのか?」


 わたしは隊長を振り返ると小さく首を横に振った。


 「・・・気持ち悪いのだな」


 わたしは隊長の呟きに大きく頷くと、ゲジゲジの蠢く足が気持ち悪過ぎて一向に収まらない逆立つ全身の毛を更に逆立てた。


 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!こう言う時こそあのスキルを使うべきだよね!?』


 わたしは暇過ぎるのもあり、蠢くゲジゲジへの嫌悪感をどうしたものかとしばらくの間考えていたらスキルの事を思い出したのだ。


 『スキルオープン!』


 そして、六神通力の一つである漏尽通をオンにした。


 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・凄い。何も感じないわ〜。悟りを開くって凄いね〜』


 わたしのさっきまで嫌悪感で逆立っていた全身の毛は一瞬で治まり、ウゾウゾと蠢くゲジゲジの腹と足を見ても一切何も感じる事は無くなった。


 「・・・リーナ。寝たのか?疲れたのだな。令嬢にこんな嫌な思いをさせて本当にすまない」


 わたしは隊長がそんな事を言ってるなんて露知らず、夢の中で骨付き肉に齧りついていた。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リーナ。起きろ。どうやら討伐が完了したようだ」


 わたしはゆっくりと目を開けると、だだっ広い石床だった場所はゴルフボール大のキラキラと光り輝く魔石に埋め尽くされていた。


 「閣下。リーナ。お疲れ様でした。閣下、魔石の回収は明朝として宜しいでしょうか?」


 「そうだな。本日はこれにて野営とする」


 「「「「「「はっ!」」」」」」


 『はっ!』


 (((((((はっ!)))))))


 こうして、第八階層の神災級魔獣の全討伐は完了したので、わたしはスキルをオフにした。


 グオォォォォォキュルルルルルルルッ!


 グオォォォォォキュルルルルルルルッ!


 グオォォォォォキュルルルルルルルッ!


 『えっ!?めっちゃお腹空いてるっ!?』


 「そらそうやろ?昼飯も食わんとジークの腕の中でヨダレ垂らして爆睡しとったんやしな?」


 わたしはハッとしてさっき飛び降りた隊長の方を見ると、隊長の騎士服の左腕の辺りが広範囲に濡れた様に色が変わっていたので、慌てて何度もペコリと謝った。


 「気にするな。リーナが神災級魔獣で嫌な思いをせずに済んで良かった」


 わたしは隊長って何て良い人なんだ!と思い、晩ご飯のおかずを多めにしてあげようと思ったのは言うまでもない。


 『っ!?』


 わたしは部屋の外に出ようとした瞬間ブワッと全身の毛が逆立ち振り返った。


 「何や、まだおったんかいな。ジーク、こいつは魔法は効かんやつやで〜」


 「全ての足を切断すれば討伐完了だけど、同時切断じゃないと瞬時に再生するのが厄介なとこかしら?」


 「隊長殿!こやつの吐く体液は溶解系でござるから注意召されよ!」


 「まあ、隊長さん達の防御魔法なら命の危険だけは無いと思うよ!」


 「・・・リーナ。ハムスター達と晩飯を作っていてくれ」


 『はっ!』


 (((((((はっ!)))))))


 こうして、 第八階層の部屋の中央に現れた体長十メートル超えの巨大ゲジゲジVS隊長達の戦いは始まったのだ。


 (・・・リーナ様、お料理がすっかり冷めてしまいましたね・・・)


 『そうだね〜。いつ終わるんだろうね〜』


 わたしはあれからハムちゃん達と安全地帯に野営の建物を設置し、イタリアンな気分だったのでピザやパスタやカルパッチョにアクアパッツァと言った王道の料理をせっせと大量に作ったのだけど、一向に皆んなが帰って来ないので入り口まで様子を見に来て、かれこれ二時間が経過している所なのだ。


 「・・・お前等っ!何で俺様に合わさんのやっ!いつまで経っても終わらんやろがっ!」


 「白龍殿!白龍殿は風の使い手でござるから拙者達には合わせるのは無理でござるよ!」


 「そうだよ!僕はまだしも白亀と白虎と隊長さん達には絶対無理だよ!」


 「白雀!言ってくれるじゃない!?確実に切断出来ないと意味ないんだから!非力なあんたは一回も切断出来てないわよね!?」


 「はあっ!?って言うか、白亀は遅過ぎるし、白龍は早過ぎだし、協調性とか無いわけ!?」


 『・・・』


 わたしは遠い目をしながら巨大ゲジゲジの体液の連射を躱している隊長達に同情したのは言うまでもない。


 ちなみに、床一面の魔石は白龍の魔法で瞬時に回収されているので、皆んなの足場は全く問題無いのだ。

 

 

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