その58
「・・・この桃めっちゃ美味いね!」
「だな〜!めちゃくちゃ甘いのに後味爽やかって何なんだ!?」
「神界の桃だからじゃね?ヤバいぐらい美味いし?」
「俺、そんなに甘過ぎる桃好きじゃないけど、これはマジイケる!」
「うんうん!毎日食べたいぐらい美味いよなぁ!」
わたしはニック達にまるっと同意しながらカツ丼をお腹いっぱい食べた後のデザートの桃に齧り付いた。
「あら?美味しいだけじゃないのよ〜?この桃は美味しさを追求した桃だけど女神様の恩恵も受けてるから、食べ続けたら人を超えられるはずよ〜」
「「「「「え?」」」」」
『え?』
わたし達はさすがに白亀の言葉にびっくりして固まった。
「まあ、言うても女神が作ったあくまで美味さを追求した食用やさかいに、アホみたいに食うたら人間やなくなる言うだけやで?」
『・・・』
わたしはちゃんと人間でいられそうな事にニック達が安堵するのを横目に、そのたぶんアホみたいに食べた獣人はいったいどうなるのか聞いてみたかったけど、ちょっと怖くて聞けなかった。
そして、わたし達は次の日の朝に改めて第七階層へと入ったのだ。
『・・・うわぁ!可愛い〜っ!』
わたしは第七階層の入り口で虹色の部屋の中の可愛さに我慢出来なくて速攻で中へと飛び込んだ。
『グエッ!?』
「・・・リーナ、ここはまだあれから未鑑定だと今朝言いましたよね?」
わたしは首根っこを掴まれながら副隊長から流れてくる冷気にそっと手足を戻したら、副隊長が何やらブツブツと言い始めた。
「・・・ヴァージル、どうだ?」
「はい、閣下。聖域なのは変わらず間違いないのですが・・・あの浮遊物は私の鑑定を弾きますので魔力量は凄まじく多いと思われますが何かは分かりかねます」
「そうか。それならば討伐してみるしかないな」
わたしは隊長が絶大な信頼を寄せているらしい副隊長の鑑定を弾くと言う浮遊物をじっと観察してみた。
『・・・・・・・・・あれは、もしかして!?』
わたしはチラッと副隊長の方を見ると、隊長とどう討伐するかの相談に入ったので、チャンスだとばかりに部屋の中へと飛び込んだ。
「リーナっ!?」
ベシッ!
パンッ!
パシッ!
バリッ!
『めちゃくちゃ、うんまーーーーーーーーーーーっ!!!』
「・・・ジーク。ヴァージル。何かめっちゃ美味いらしいで?」
「「・・・」」
わたしには部屋の中のバスケットボール大の浮遊物がどう見ても前世にあった虹色のアルミバルーンにしか見えなかった。
そして、わたしの視力ではその中に何かがあるのが分かったし、その透けて見えるシルエットがどう見ても袋に入ったポテチだったので、わたしはジャンプしてアルミバルーンを叩き割ると透明の袋に入った正しくポテチの袋を開けて味見してみたのだ。
「り、リーナっ!?良く分からない物を食べたらお腹壊すよっ!?」
わたしがスナック菓子系の無い今世で初めて食べるポテチに感動しながらバリバリと食べていたらニックに心配されたので、ニックの側に二足歩行で走り寄るとポテチの袋を差し出し頷いた。
「えっ!?俺も食べるの!?・・・・・・・・・美味いっ!?」
そして、ニックは恐る恐ると言った感じでポテチを食べるとカッと目を見開き次の手を伸ばして来たので、わたしは袋ごと渡すと次のアルミバルーンを叩き割りに戻った。
『今度はコンソメ味だ!』
こうして、わたし達は皆んなでアルミバルーンを叩き割り採集したのだけど、中身はポテチだけじゃなくポップコーンだったりポッキーだったりチョコレートだったりと、第三階層の珍味駄菓子おつまみ系とは全く違う感じだったしフレーバーも様々だったので、飽きる事なくお菓子食べ放題を満喫したのは言うまでもない。
「・・・それでは、これより第八階層へと向かう」
「「「「「「はっ!」」」」」」
『はっ!』
(((((((はっ!)))))))
わたしはお菓子食べ放題をして気分良く第八階層の入り口に到着し、しんと静まり返っただだっ広い石壁の部屋の中をじっと観察した。
『・・・』
「お〜、めっちゃおるな〜」
「凄まじい数でござるな!」
「僕、彼奴等苦手かも・・・」
「奇遇ね〜。あたしもパスだわ〜」
わたしは最初部屋の中には何も居ないのかと思ったのだけどそれは間違いで、床・壁・天井にびっしりと隙間なくそいつ等はいたのだ。
「白亀殿。何がいるのか教えてくれるか?」
「彼奴等はあんた達が言う所の神災級魔獣なんだけど、物凄く魔力に対する警戒心が強いから、まあ、あたし達もだけどあんた達も出会った事無いんじゃないかしら?」
「・・・神災級魔獣なのか」
「せやで〜。火と水にはアホみたいに強いな〜。俺様の風やったら討伐は楽勝やけど、まあ、魔石ごと粉砕してまう感じになるな〜」
「それは困りましたね・・・リーナ、ちょっと失礼します」
『?』
わたしは副隊長に首根っこを掴まれて持ち上げられると、副隊長はわたしを持ち上げたままスタスタと入り口のギリギリまで歩いた。
そして、首根っこを掴んだままわたしだけ部屋の中にヒョイと差し出したのだ。
『ギャーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?』
わたしが部屋の中に入った瞬間床・壁・天井あらゆる方向から雪崩を打ったようにその神災級魔獣が襲って来たので、わたしがタヌキの大絶叫を上げたのはしょうがないと思う。
そして、そいつ等がわたしに触れる瞬間に、わたしは部屋の中から安全地帯へと引き戻され、入り口には前世ではゲジゲジと言われるものに良く似てるまあまあの大きさの神災級魔獣がびっしりと貼り付き、モゾモゾウゾウゾと蠢いていたのだ。




