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その5

 わたしは次の日の朝、昨日日中ゴロゴロしまくって夕方にお針子達が揃って笑顔で届けてくれた青い騎士服を着た。


 『金色の毛並みに青い騎士服って映えるね〜』


 わたしは部屋の大きな姿見の前で、男性騎士服と違い上着の裾が長めでスカートっぽくなった女性騎士服に満足して、くるっと回ったら裾がヒラッとして可愛かったので大満足になった。


 ちなみにお針子達は下着も作ってくれたので、毛があるし騎士服を直接着ても問題無いけど、ちゃんと人間っぽく服を着てる事が何か嬉しかった。


 そして、向かった食堂で名前のお披露目をされてから朝ご飯を食べ終えると、わたしの騎士としてのお披露目があるから訓練場へ向かうように言われた。


 わたしは昨日のうちに領地騎士団のあるロゼルナイト辺境伯領主館周辺の地図やら、訓練内容等の書かれたまあまあ分厚い手引書は読んでいたので迷子にはならないと思う。


 「・・・ヤバい。めちゃくちゃ可愛いっ!」


 「まあ、可愛いけど・・・マスコット的な感じになるんだよな?」


 「そりゃ、そうだろ。魔法も使えないらしいし、あの手じゃ剣も握れそうにないしな!」


 「タヌキの可愛さで害虫駆除しかしてないって舐められてる騎士団の地位もちょっと上がりそうだし、良いんじゃね?」


 「でも、魔石をあれだけ持ってたって事は強いかも知れないぞ?」


 「どうだろうな〜。魔石は魔獣同士の争いや自然死で落ちてる場合もあるしな〜。十六年間頑張って溜め込んだのかもよ?」


 「あー、冒険者がたまにとんでもない魔石拾ってるらしいもんな。それなら、まあ、マスコット一択だな」


 わたしがヒソヒソどころか大きな声でわたしに関する会話をしてる騎士達をスルーしてたら、隊長と副隊長がやって来た。


 「皆揃ってるな?それでは新人領地騎士のリーナの披露目を兼ねて訓練を行う。リーナと第一班は前に出ろ」


 わたしが前に出ると、第一班らしいこれまでずっと同じテーブルでご飯を食べている騎士達が前に出ると、後ろの騎士達が大きく後退し空間が出来た。


 そして、隊長の横にいた騎士がベルトポーチから何やら取り出すと、かなり離れた場所に何かブツブツ言いながらそれを放り投げた。


 「リーナ、お前に何が出来るのか見せて欲しい。第一班はサポートに徹しろ」


 わたしは騎士が放り投げた先に現れた巨大な魔法で作られてるっぽいゴーレムに、どうしたもんかと考えた。


 『・・・ゴーレムかぁ。大き過ぎてどこもかしこも、わたしの腕が回り切らないから投げ辛いんだよね〜』


 わたしは大連峰にいたゴーレム達とも戦っていたけど、兎に角戦いにくかったのを思い出した。


 そして、基本的にわたしの戦い方はぶん投げるだけなのだ。


 「リーナ!俺達にして欲しい事はある?」


 わたしはそう声を掛けられたので、一瞬考えてから右腕で力こぶを作って左手で力こぶをペチペチと叩いてみた。


 「ん?筋力か?そりゃ、あるぞっ!どうだっ!」


 わたしは側にいた確かニックと呼ばれていた騎士がグッと力こぶを作ったので、ジャンプして軽くペチッとしてみたらめちゃくちゃ固かった。


 「どうだ?ガンガンに全身強化魔法も使ってるからカチカチだろ?今なら素手でもあれより強いゴーレムだってぶっ潰せるぜ?」


 わたしはめちゃくちゃ笑顔のニックに大きく何度も頷いた。


 「リーナ、準備はいいか?」


 わたしは隊長にそう聞かれたので大きく頷いた。


 「そうか。それでは開始!」


 隊長がそう言った瞬間ゴーレムが地響きを立ててこちらに走って来たので、わたしはニックのめちゃくちゃ固いふくらはぎに抱き着くと、そのまま持ち上げてゴーレムに向かってぶん投げた。


 「「「「「「「「え?」」」」」」」」


 ドッゴーーーーンッ!!!


 わたしは完璧なコントロールでニックがぶち当たったゴーレムのお腹辺りから完全にゴーレムが崩壊したのを確認してから、隊長を見上げた。


 「・・・まあ、死にはしないが・・・ 」


 「リ、リーナーーーーーっ!何で俺を投げるんだよーーーーーっ!」


 わたしが隊長から残念なものを見る目で見られていると、崩壊したゴーレムの瓦礫に埋もれていたニックが叫びながら這い出て来た。


 そして、ニックは騎士服や色んなものがズタボロになっていたけど、元気にダッシュでこちらに帰って来た。


 わたしは隊長に近寄ると剣を指差してから腕でバツを作ってから、シャドウピッチングの感じで投げる真似をした。


 「・・・なるほどな。お前はその小さな手だから剣も握れないし、打撃も手数が必要となりそうだしな。お前は何かを投げて戦うスタイルと言った所か」


 わたしは意図がちゃんと伝わった事に感動しながら隊長に大きく何度も頷いた。


 「だ、だからって俺を投げるとか酷いよっ!リーナの人でなしっ!鬼っ!悪魔っ!」


 わたしはニックに向かって力こぶを作り手でペチペチ叩いた。


 「なるほど〜。あれは確認だったんだ?まあ、ニックの全身強化魔法は凄いしな〜。これがタヌキの戦闘スタイルか〜」


 「それに、ニックも全身強化してるから素手でぶっ潰せるとか言っちゃってたしなぁ。って言うか、タヌキの戦闘スタイルって斬新だなぁ」


 「えげつないけど、人間の常識は通用しないんじゃね?タヌキだし?」


 「そっか、タヌキだもんな!ニック!良いサポートだったぜ!」


 そして、誰一人として全く心配してないのが分かったニックはその場に膝から崩れ落ち、領地騎士団全体の普段の訓練が始まったのだ。

 

 最初はだだっ広い訓練場でのランニングだったので、わたしは短い足を一生懸命動かしたのだけど、疲れはしないけど途中から面倒臭くなって来たので、チラッチラッとわたしの揺れる大きなモフモフ尻尾を見ていた近くの騎士の肩に乗って尻尾を首に巻き付けてみた所、何も言われなかったのでそのまま最後まで乗っていた。


 その次は腕立て伏せや腹筋と言った筋トレが始まったので今世で初めてやってみたのだけど、腕立て伏せは腕を曲げたらお腹が地面についたので意味は無さそうだし、腹筋は大きな尻尾が邪魔で、どうやっても起き上がれなかった。


 そして、スクワットに至っては膝を曲げたら尻尾の上に座ってしまったのだ。


 その後も素手での格闘訓練は殴るとかした事ないので、しょうがないから格段に戦闘力は落ちるだろうけど尻尾でしばきまくる事にした。


 そして、わたしは体力も怪力もあるけど、別に反射神経が良いとかの運動能力は普通ぐらいしか持ち合わせてないので攻撃出来るはずなのに、何故か格闘訓練の相手は誰一人として攻撃して来る騎士はいなかった。

 

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