その53
『・・・』
「・・・ヴァージル。第六階層は妖精が宝石華を作っていると報告書にはあったのだが?」
「はい、閣下。ご覧の通り蜂の妖精が宝石華を作っております。ですが、今の所宝石華の売買契約は達成出来ておりませんので、今回の遠征で交渉する事にしております」
「・・・そうか。蜂の妖精で間違いないのだな?」
「はい、閣下。本人達の自己申告ですが蜂の妖精との事です」
わたしは遠い遠い目をしてる隊長と副隊長をチラッと見てから、目の前のまるで宝石の様なキラキラと透き通るお花の上で忙しそうに飛び回る蜂の妖精とやらを改めて見た。
『蜂の妖精って言うより、蜂のコスプレした変態なんじゃ・・・』
「ちょっと!あんた聞こえてるわよ!誰が蜂のコスプレした変態おじさんよ!失礼しちゃうわね!」
「そうよ!そうよ!あたし達のどこがおじさんなのよ!こんなキュートでプリティなおじさんなんかいるわけないでしょ!」
「って言うか、あんた達あたし達に何か用なわけ?」
わたしはおじさんとまでは言ってないのにと思いながら野太い声でギャーギャーと喚き散らす、どう見ても蜂のコスプレをした痛いおっさん達に副隊長が意を決した感じで一歩前に出たのを見た。
「・・・失礼があったのなら謝罪する。我々はあなた方の作る宝石華を売って欲しいと思っているのだ」
「あら、あんた達あたし達の宝石華が欲しいの?」
「ふーん、まあ、あげない事もないけど、お金じゃ無理ね!」
「あんた達があたし達を何かしらの接待で満足させてくれたらあげるわ!」
「・・・・・・・・・・・・検討を感謝する」
こうして、わたし達は一旦その場から離れて、どの様な感じで満足して貰うかを相談する事にしたのだ。
「接待と言えば宴席だな」
そして、それ以外の選択肢は隊長の中に無いらしく一秒で決まったのだ。
わたしとしては、わたしとハムちゃん達以外にはギラギラした目をしながら舌舐めずりしていた蜂の妖精達の感じからして誰かが犠牲になればタダで手に入りそうだなとは思ったけど、皆んな遠い遠い目をしているので言わずにおく事にした。
「・・・あら?ただの宴席じゃない!期待外れだわ!」
「そうよねぇ!あんた達もうちょっと考えなさいよね!こんなの普通じゃない!」
「でも、まあ、このお酒良い香りだから一杯ぐらいは飲んであげてもいいわよ?」
「・・・それでは、我々とあなた方の契約が上手く行く事を願い乾杯しよう」
隊長がそう音頭を取ると、蜂の妖精達は堅苦しいわね!と言いながらお酒を一口飲んだ。
「「「っ!?」」」
そして、一口飲んだゴリマッチョな蜂の妖精のおっさん達はカッと目を見開いたと思ったら、そのまま一気に飲み干したのだ。
「「「もう一杯くれるかしら!」」」
こうして、ウォッカ祭りならぬ口当たりは良いけど後が地獄のサワー祭りが始まったのだ。
「・・・それで契約はしてくれるのだろうか?」
「あたしはいいわよぉ!ねぇ、今度はカルピスサワーがいいわぁ!って言うかぁ、このカルパッチョ美味しいわねぇ!」
「あたしもいいわぁ!あたしはグレープサワーにしてぇ!このフライドチキンも絶品よねぇ!」
「あたしもどうでもいいわぁ!何でも良いからもう一杯頂戴ぃ!おつまみの柿の種追加してねぇ!」
『はい、喜んで!』
わたしは開始五時間半で漸く口当たりの良いウォッカのサワーでベロンベロンな蜂の妖精達に再び要望通りのお酒を作って出すと、彼等は美味しそうにゴクゴクと飲んでくれた。
「「「「「リーナ!俺達にもレモンサワー作ってよ!」」」」」
こうして、第六層の宝石華は蜂の妖精達との魔法契約によりロゼルナイト辺境伯領の特産品の一つとなり、わたし達は次の日の朝に蜂の妖精達から渡した二日酔いの薬に号泣しながら感謝されつつ第六階層を後にすると第七階層へと向かったのだ。
『・・・うわぁ!綺麗〜!』
わたしは第七階層の大きな入り口から見える虹色に光り輝く空間に感動しながら一歩踏み出そうとして留まった。
「リーナ、大丈夫です。ここは聖域と鑑定結果は出てますから」
わたしは笑顔の副隊長の言葉に今度こそ一歩を踏み出した。
「・・・ヴァージル。ここは聖域だが何も無いのだったな?」
「はい、閣下。ですが、第五階層の事もありますので完全とは言い切れません」
わたしはそれを聞いて何かないかな?と真ん中まで行って辺りをじっくり観察してみる事にした。
「リーナ、どないや?何ぞありそうか?」
「拙者には聖域だとしか分かりませぬなぁ」
「だよねー。でも、聖域ならハズレでもスライムぐらいはいるもんじゃなかった?」
「せやな〜。スライムも居らんのは、俺様としては気に入らんな〜」
「じゃあ、僕がいたら気に入るの?」
わたしが可愛らしい少年の声がした方を見た瞬間、物凄い風圧が頭上を掠めた。
ドゴーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!
『え?』
そして、一瞬でわたしとハムちゃん達以外の皆んなはキラキラした虹色の壁際まで吹っ飛ばされたのだ。
「アハハ!君達はめちゃくちゃチビだから吹っ飛ばされなかったね!」
『は?』
わたしはそれほど身長が変わらない感じの虹色の髪色に虹色の眼をした少年に、お前が言うか?と思ったのは言うまでもない。




