その48
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
「お前は腹が空いておるのか?うーん・・・我は今何も持っておらんのだ」
『あ、お構いなく。食べ物は持ってますから』
わたしは丁度お昼ご飯の時間になったのだろうと頭陀袋を下ろすと、中から大きなおにぎりを取り出した。
「それは食べ物なのか?」
『はい、これはおにぎりと言う食べ物ですね〜。お一つ如何ですか?』
「うむ」
そして、わたしは男神に大きなおにぎりを渡したのだ。
『うんまっ!錦魚のツナマヨうんまっ!』
「うむうむ!これは美味いな!錦魚のツナマヨと言うのか?レシピはあるのか?」
『ありますけど、材料も加工技術もちょっと特殊なんですよね〜』
わたしはとりあえず錦魚と言う聖域にしか住む事が出来ない魚と白雀の背負い籠の事を伝えた。
「・・・なるほど。それなら我も作れそうだ。だが、今は本当に何も持っておらんのが残念ではあるな」
『作れるんですね〜』
わたしがそれを聞いて食べたいと思ってしまったのはしょうがないと思う。
何故ならこの男神がハムちゃん達より料理上手なのを聞いてるからだ。
そして、わたしがその場に超高級野営セットを出したのもしょうがないと思う。
「・・・なるほど。こうすれば良いのだな?」
『え?』
魔力が無いわたしには設置出来ない事を伝えて超高級野営セットの取説を男神に渡すと、男神は興味深そうに読んでから一瞬で設置してくれたのだけど、二階建てが三階建てになっていた。
ちなみに何故わたしが超高級野営セットを頭陀袋に入れてるかと言うと、休暇は今日を含めて後三日あるから山菜採りは日帰りじゃなくて一泊二日にしようとなっていたからだ。
「面白そうな建物故、我が寝る部屋を作ってみた。これから頼むぞ」
『・・・』
わたしがいったい何を頼むと言うのかと思ったのは言うまでもない。
『・・・う、う、うんまーーーーっ!?えっ!?これ錦魚のツナマヨだよねっ!?めちゃくちゃ、うんまっ!!!』
「うむうむ!良い感じに出来たな!だが、我の錦魚のツナマヨよりもお前の錦魚のツナマヨの方が、我の好みではあるな」
『そうなんですか?わたしの錦魚のツナマヨはわたしのレシピで作ってますけど、調理は七匹のハムちゃん達にほぼほぼ頼ってますからね〜』
「そうなのか?と言うか、七匹のハムちゃん達と言うのは、我の友達の七匹のハムスター達の事か?」
『はい!そうなんです!』
こうして、頭陀袋から他のおにぎりやおかずを出した所、男神が全て上位互換で作ってくれたので、わたしは大満足でお昼ご飯を終えたのだ。
『・・・それじゃあ、わたしそろそろ帰りますね!皆んなが心配してると思いますし!』
「もう帰るのか?まあ、地獄には何も無いものな。だが、お前が地獄を出る道のりは、ちと厳しいぞ?」
『え?落ちて来た所から出るだけなんじゃないんですか?』
わたしは普通に思い切りジャンプすれば出れそうな気がしていたのだ。
「この地獄は誰でも入る事が出来るが、出て行く事は本来なら入る時に立てた誓いを達成しなければ許されないものなのだ。それを無理矢理に出て行くのはそれこそ悪魔の所業となり、一切の救いから見捨てられる存在となる。だから、神の悪戯で出来た穴からとは言え何も誓いを立てずに落ちて来たお前は、普通に地獄の門から出る方が良いと思うぞ?」
『・・・』
そして、男神はさっさと超高級野営セットを撤収すると地獄の門とやらに向かって歩き出したので、わたしは慌てて後を追った。
『・・・めっちゃ大きい!』
わたしは聳え立つおどろおどろしい地獄の門を見上げていた。
「それに重いし頑丈だが真っ白な心の持ち主なら簡単に開く。我は開けずに通過出来るが、お前は開けなければならない。押してみるが良い」
わたしはまあまあ力を入れて押してみたけど、うんともすんとも言わなかったので、思い切り押してみる事にした。
『んーーーーーーーーーーーっ!!!』
「やはり無理か。外からは簡単に開ける事が出来るから、我が神界に戻り開ける為に神使を連れて来」
ドッガーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!
『開いた〜!』
「それは開けておらんぞ」
わたしは押しても引いてもダメだったので、イラッとして思わず蹴りを入れたら良い感じに扉が吹っ飛んだのだ。
『えっ!?何か出来てる!?』
「地獄の門は閉じておるのが普通だからな。新しい扉が出来上がる前に出るぞ」
そう言うとさっさと男神は修復されつつある扉を潜って門を出たので、わたしもその後を追ったのだ。




