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その38

 「・・・泡盛はアカン。ホンマえらい目にあったで。おっ!今日の晩飯はしゃぶしゃぶかいな!」


 わたし達が晩ご飯のタヌキ肉のしゃぶしゃぶを食べてたら、漸く起きて来た白龍がいそいそとテーブルに着いて食べ始めた。


 「今はポン酢でさっぱり食えるんがええな〜!」


 そして、その後直ぐに隊長と副隊長と第二皇子も起きて来て晩ご飯を食べ始めたのだ。


 『皇太子殿下は起きて来ないね〜』


 「あー、あいつは今スキル使っとるからな〜。もう少ししたら起きて来るんちゃうか?」


 すると、しゃぶしゃぶを食べていた隊長と副隊長と第二皇子が一斉に皇太子の方を見た。


 「・・・兄上、アンジュ兄上がスキルを使うのは十年ぶりだよな?」


 「・・・そうだな」


 「皇帝陛下と皇后陛下も喜ばれますね」


 わたしは皇太子のスキルって何だろ?と思ったけど、まあ、両親が喜ぶなら良い事なんじゃないかと思い、しゃぶしゃぶを再び食べ始めた。


 「・・・あー、良く寝たらお腹空いちゃったよ」


 そして、わたし達が晩ご飯を終える頃に皇太子は起きて来て、出して欲しいと言われ出した泡盛を飲みながらしゃぶしゃぶを食べ始めたので、明日大丈夫なんだろうかと思ってしまったのはしょうがないと思う。

 

 「ん?僕が明日二日酔いになるのを心配してるのかな?それなら大丈夫だよ?」


 皇太子が言うには、皇太子のスキルは【更新】と言うもので、自分の限界を感じたらスキルを使って限界を超える能力を身に付ける事が出来るのだそうだ。


 「だから、もう僕は泡盛如きでは二日酔いにはならないし、闇堕ちしたゴリラの聖獣も炭化出来るよ?」

 

 『・・・』


 わたしとしてはゴリラの炭化は食べられなくなるので遠慮したいし、わたしが知る前世での世界最高峰のアルコール度数を誇るあのお酒なら皇太子を撃沈出来るだろうけど、一口飲んだら火魔法が得意な皇太子が燃えて炭化しそうなので出さないでおこうと思う。


 こうして、次の日の朝早く、わたし達は【禁足の塔】の三階へと向かったのだ。


 「お前ら、闇堕ちした分際でイキってんじゃねぇぞ、コラァッ!」


 わたし達が到着して直ぐ、そんな声が聞こえて来たと思ったら、入り口を入った所にいた大きな白い丸い何かから物凄い勢いの火が噴き出し、【禁足の塔】三階の見渡す限りの大草原は業火に包まれた。


 「な、何っ!?俺の火が効かないだとっ!?」


 そして、辺り一面は火の海なんだけど、少し遠くにいる大きな黒い物体の大群は燃える事無く翼を広げ一斉にこちらに向かって飛んで来た。


 『鳥?』


 「何しとんねん、あいつ。ホンマどこまでもアホやな。白虎!水でしばいたれ!」


 「了解でこざる!」

 

 アオーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!


 ザッパーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!


 そして、白龍に言われた白虎が一声大きく鳴くと、空から大量の水が降って来たと思ったら、飛んでいた大きな黒い物体の大群は地面に叩き付けられ、ピクリとも動かなくなったのだ。


 「うわっ!?冷たっ!?」


 『え?ほっそ。鶴?』


 わたしは入り口に入った所にいた大きな白い丸い何かが、今は空から降って来た水に濡れそぼってめちゃくちゃ細くて貧相な籠を背負った後ろ姿が鶴に見えたのだ。


 「鶴ちゃう雀や」

 

 「白龍!?何でお前がここにいるんだよっ!?ちょっと昼寝して来るって言ってたよなっ!?って言うか!この水は白虎かっ!」


 そして、細く貧相な白い物体が振り向いた頬には、雀の特徴である黒い丸があったのだ。

 

 「話しは後や。皇太子、後で料理しやすいように火であいつらの羽毛焼いてくれや。あっ、お前が全力でいっても羽毛しか焼かれへんから大丈夫やで〜」


 「は?」


 こうして、皇太子の魔力が尽きた夕方頃に、闇堕ちしたペンギンの聖獣の生肉の回収は完了したのだ。


 グオォォォォォキュルルルルルルルッ!


 「・・・本日はこれより次の安全地帯で野営とする」


 「何や、今日は一階だけで討伐は終わりかいな〜」


 「だから、俺の火で焼いた方が早いって言ったよな?」


 「アホか。お前の火加減ちゅーもんを知らん火で焼いたら一発で炭化しよるがな」

 

 「はあっ!?俺だってあれからめちゃくちゃ練習してんだぞっ!?白虎は知ってるよなっ!?だから、絶対に出来たっ!」


 「そうでごさるな!白雀殿は日々鍛錬を怠らん御仁でござるからな!」


 「ふーん。せやけど、白虎は白雀が出来るとは言いよらんのやな〜?」


 わたしは白虎がスッと目を逸らしたのを見て、まあ、そう言う事なんだろうなと理解した。


 ちなみに、王子妃教育では習わなかったけど、闇堕ちしてようがなかろうが聖獣同士では生きてる限り同じ種類の、ここで言うと鳥類の火魔法を使う同士はほぼほぼ攻撃の意味がないのは聖獣界では常識なのだそうだ。


 そして、一歩も動けない皇太子を第二皇子が背負い、野営する為に次の安全地帯へと向かったのだ。


 

 


 

 

 


 

 

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