ジークフリードSide〜その9
「・・・ヴァージル。何かいるよな?」
「・・・そうだな」
俺は二日酔いの気持ち悪さと激しい頭痛に何も考えたくなかったし動きたくなかったが、テントの外にリーナと何かが居るのは分かったので、しょうがなしに口を動かした。
「・・・うるさい。頭に響く」
すると、兄上が呻いて直ぐに白龍が無言でムクリと起き上がったかと思うとテントの外に出て行ったので、俺はもう大丈夫だろうと考え目を閉じようとした。
・・・は?二日酔いに効く薬?そんなものこの世にあるのか?
俺は微かに聞こえて来た白龍の元気な声に空耳かと思い隣りのベッドのヴァージルを見ると、ヴァージルもこちらをびっくり顔で見ていたので慌てて起きた。
「っ!?頭がっ!?」
「ジークって、本当可愛らしいよねぇ」
そう言いながら兄上はゆっくり起き上がりベッドから下りると、ヨタヨタとテントの外に向かったので、俺も根性でヴァージルと共に後を追った。
そして、リーナのペットになったらしい虎の聖獣白虎の恩恵により、俺達はたぶんこの先永遠に二日酔いから解放されたのだ。
「・・・ヴァージル。これは、どうしたらいいんだ?」
「・・・どうしようもなさそうだが、絶対に全討伐はしたい!」
「俺様クラスの魔法やとリーナも無傷とはいかんしな〜。ま、あの勢いやと、ほっといたらあいつら魔力切れ起こすさかいに、それまで待っとったらええんちゃうか?ヴァージル!リーナの頭陀袋持っとったな?テント出してくれや!茶ぁでもしばこうや!」
ヴァージルはハイハイと言った感じでリーナのテントを設置して茶の用意を始めたので、俺もする事が無いので茶を飲む事にした。
そして、俺達が闇堕ちしたカラスの聖獣の大群に囲まれながら物凄い速さで右往左往しているリーナをしばらく見ていたら、漸くポロポロとカラス達が魔力切れで落ち始めたのでトドメを刺しに行く事にした。
「お前らだけで大丈夫やんな?俺様ちょっと昼寝するわ〜」
「僕も寝るから後は宜しくねぇ」
「「「・・・」」」
こうして、俺とヴァージルと白虎で闇堕ちしたカラスの聖獣にトドメを刺しまくり全討伐は完了した。
そして、その日の晩飯は白龍がリーナを怒らせたので久しぶりの携帯食料となったのだ。
・・・ちゃんと頑張って良かった!
俺は次の日の朝飯の闇堕ちしたヒツジの聖獣の唐揚げを一口食べると、今迄食べた事ない美味さの唐揚げにヴァージルと共に悶絶した。
そして、昨日何一つ頑張らなかった兄上と白龍がふりかけ飯のみだったのを、ちょっといい気味だと思ったのは許して欲しい。
「「「あっ!?」」」
だけど、兄上と白龍は俺とヴァージルと白虎の皿から唐揚げを奪うと言う暴挙に出たのだ。
俺とヴァージルは頑張って応戦したが結局半分ぐらい食べられ、白虎に至ってはほぼほぼ強奪されていた。
そして、俺達は皇宮へと戻り、次の日にロゼルナイト辺境伯領へと帰ったのだ。
・・・それはタヌキの肉だ。まあ、聖獣のだが
俺は帰った日の晩飯が何故かタヌキ肉のカレーだったので、美味い美味いと言いながらも何の肉か分からない第一班に、モリモリ食べているリーナは微塵も共食いなんて思ってなさそうだけど何も言わずにおく事にした。
そして、帰りの魔法飛行船でヴァージルと相談した結果、一ヶ月後にロゼルナイト辺境伯領にある【禁足の塔】へと討伐遠征が決まった事をリーナ達に伝えたのだ。
「・・・ヴァージル。あの買い取り額はさすがに低過ぎるだろう?」
「閣下、リーナは読み書き計算の出来るタヌキです。よって、これまで幾らでも知る事が出来たはずの宝石の適正価格の把握を怠ったリーナの落ち度です」
「・・・」
俺はホクホク顔で十万ガルドの経費を渡し、闇堕ちしたカラスの聖獣の体内に蓄えられていた物凄い量の宝石を、底値の半値以下で買い叩きまくったヴァージルに何も言えなかった。
・・・まあ、リーナは小躍りしながら出て行ったしなぁ
そして、一ヶ月後の早朝に【禁足の塔】へと行軍を開始し、夕方に到着したのだ。
・・・こいつずっと寝てたな
俺は白虎の背中で行軍中寝ていた、ニックに起こされて寝ぼけ眼のリーナに呆れたのはしょうがないと思う。
俺としては今現在は金もあるだろうし魔法飛行船とはいかなくても、せめて魔法馬車で移動したかったのだが、緊急でも無いので訓練の一環と言われたけどケチっただけだと思うヴァージルに却下されての行軍だったので到着したのは夕方だった。
「ドライビールってめちゃくちゃ美味いよねっ!」
「唐揚げとの相性ヤバ過ぎじゃね!?」
「このハイボールもヤバいと思うなぁ!」
「俺、甘い酒とか好きだったんだな〜」
「うんうん!全部美味い!」
そして、その日の晩飯は兄上に半分盗られた闇堕ちしたヒツジの聖獣の唐揚げだったので、俺はあの日食べられなかった分も食べられた事により物凄く幸福を感じながら眠りについたのだ。
「っ!?」
俺は体に受けた衝撃で目が覚めた途端に口の中に何かを流し込まれたが、その味の美味さに思わず飲み込んでしまったが、全く訳が分からなかった。
だけど、隣りのベッドで寝ていたヴァージルがリーナに床に蹴り落とされて口の中にあの二日酔いの薬を流し込まれてるのを見て、全てを理解した。
「・・・」
俺としては普通に起こして欲しいと思ったが、まあ、普通に起こされたぐらいでは起きないだろうし、最悪無意識に魔法でリーナを弾き飛ばしているだろうから、たぶんリーナの危険察知能力が故の行動なのだと思う事にした。
そして、第一班達が美味い美味いとタヌキ肉丼を食べ終えると一階の討伐をする事にしたら、まさかの兄上達がやって来たのだ。
「ラスターは本当に真面目だよねぇ」
俺はそう言いながら闇堕ちしたゴリラとゾウの聖獣の大群の全討伐を完了して、本日の寝床になるリーナの新しく購入したらしい野営セットに入って行く兄上の後を追いかけたのだ。




