その36
『・・・ゴリラ?』
「おうっ!あいつらは闇堕ちさらしたゴリラの聖獣やな!まあまあ、歯ごたえあんで?」
「あれが闇堕ちした聖獣なんだね!」
「闇堕ちしたら黒くなるんだよな?」
「だから、黒いんじゃね?」
「元々ゴリラって黒くなかったかぁ?」
「歯ごたえあるらしいし、戦うの楽しみだな〜!」
「閣下、ご命令を」
「全員戦闘態勢に入れ!」
わたしは白龍の言う歯ごたえはどっちの意味だろ?と思いながら、真っ先に真っ白な銀世界に飛び込んだ。
ツルッ!
『ブベッ!?』
「リーナ!」
「リーナ様!」
「あっ!言うん忘れとった!雪は薄っすらで下は全面氷やで!」
『・・・』
そして、滑って転けて顔面を強打したわたしはニックにより速攻で尻尾を掴まれ安全地帯へと引き戻して貰ったのだ。
「閣下、我々のブーツは氷耐性ではありませんので戦闘能力が著しく低下すると思われます」
「・・・そうだな。白龍、あいつらの弱点は知ってるか?」
わたしとしては、そのブーツさえ履いてない素足なので、氷の上では全く戦える気がしない。
「火や。俺様は楽勝やけど、皇太子ぐらいの火魔法なかったらお前らにはキツいかもな〜」
「呼んだ?」
わたしがその聞いた事ある声に振り向くと、そこにはヘラっとした笑顔の皇太子と、皇太子に良く似た赤い騎士服の若い男性がいたのだ。
「・・・アンジュ兄上、ラスター兄上、何故ここに?」
「そんなの決まってるよねぇ?愛するおと」
「皇帝陛下からロゼルナイト辺境伯領の【禁足の塔】の視察兼討伐へ行って来いとのご命令だ」
前世はハシビロコウかな?と言った感じの赤い騎士服の男性は、どうやら隊長のお兄さんの第二皇子らしいと理解した。
そして、その人が皇太子に被せる様に言うと、隊長は大きな溜め息を吐いた。
「・・・それならアンジュ兄上の火魔法であいつらを討伐してくれないか?」
「勿論だよ!任せなさい!我が愛する弟の為なら兄は何だってするさ!」
そう言って皇太子は入り口まで来ると両手をまあまあ遠くにいるゴリラの大群に向かって振った瞬間、物凄い勢いで火が吹き出した。
グギャーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
そして、あっと言う間に闇堕ちしたゴリラの聖獣の丸焼きが出来上がったのだ。
白龍と白虎の背中に乗ったわたし達以外はまあまあへっぴり腰で討伐したゴリラの回収に向かったのだけど、よく見ると表面はめちゃくちゃこんがりと焼けているのに、どうやら中身は生っぽかった。
『・・・ん?中は焼けてない感じ?』
「そやな〜。こいつらは火に弱い言うても、皇太子ぐらいの火魔法やったら何とか死ぬっちゅーだけで、完全燃焼は無理やな!」
「・・・へぇ?そうなんだ?」
皇太子はそう言って右手を一匹のゴリラに向かって振ると火で完全に焼こうとしたみたいだけど、中まで火が通ってないのはわたしには見えていた。
そして、皇太子が魔力切れを起こした昼前に、闇堕ちしたゴリラの聖獣の回収は全て終わったのだ。
わたし達が次に向かった二階も見渡す限り真っ白な銀世界だった。
『・・・また下は氷?』
「ここは普通に雪やで〜」
こうして、魔法が一切効かないらしい闇堕ちした真っ黒なゾウの聖獣の全討伐は開始されたのだ。
『・・・皇太子って、ちゃんと剣も使えるんだね〜』
わたしは振り回されているゾウの鼻にしがみつきながら、皇太子と第二皇子のコンビの戦いを見ていた。
「リーナ様!」
そして、白虎に呼ばれたからゾウを勢い良くそちらにぶん投げたら白虎とゾウは戦い始めたので、突進して来た次のゾウの鼻へとしがみついたのだ。
「リーナ!次や!」
わたしは白龍にも呼ばれたので勢い良くゾウをぶん投げた。
何故、わたしがそんな事をしてるのかと言うと、闇堕ちしたゾウの聖獣達は白龍と白虎には一切襲い掛からないので、わたしがゾウを確保して白龍と白虎に投げて討伐して貰ってる。
そして、わたしは携帯食料を齧りながら次のゾウの鼻にしがみつくと地面に叩き付けて討伐したのだ。
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
「・・・もう、晩飯の時間か」
わたしのお腹の音が盛大に鳴った夕方に、闇堕ちしたゾウの聖獣の全討伐は完了したので安全地帯での野営となった
「リーナ、野営セットを出して下さい」
わたしは副隊長にそう言われたので、背負っていた頭陀袋から野営セットを出して渡した。
「これは今迄の物とは違いますね?」
わたしが頷くと、副隊長は野営セットの取説を読み始めた。
「・・・なるほど」
そして、副隊長は魔力を流してわたしが購入した新しい野営セットを設置してくれた。
「・・・おい、ジーク。これは、騎士の野営と言えるのか?清貧と高潔を尊ぶ騎士道精神に著しく反してるぞ?」
「ラスターは本当に真面目だよねぇ」
皇太子は、そう言いながら目の前の巨大な二階建ての建物へと入って行ったのだ。




