その35
わたし達がロゼルナイト辺境伯領へと帰ったのは、お昼も大分過ぎた頃で、わたしは魔法飛行船の中でお昼ご飯を食べたけど小腹が空いたから、軽食を食べに頭陀袋を背負ったまま降りて直ぐ食堂へと向かった。
『・・・今日の晩ご飯はカレーなんだ!』
わたしが大量のサンドイッチやおにぎりに妖精の餌の魔石を注文していると、厨房の料理人達から今日の晩ご飯はカレーを作るよと教えて貰った。
そして、それならと、わたしが頭陀袋から大量のタヌキ肉を取り出したら料理人達の顔は光り輝き、晩ご飯のカレーに使ってくれる事になったのだ。
ちなみに聖獣のお肉はわたしの好きにしていいと隊長には言われてるので何の問題もないはずだ。
「・・・今日のカレーめっちゃ美味しいね!」
「だよな〜。何でだろな〜?」
「これ、いつもと肉が違うんじゃないか?」
「そう言えばそんな感じだよなぁ。何の肉なんだろ?」
「美味ければ何でもいいんじゃね?」
「「・・・」」
わたしはニック達を横目にカレーを掻き込みながら、厨房の料理人達にも言ってないのでニック達にも闇堕ちした聖獣のタヌキ肉だと言う事は言わないでおく事にした。
『こんなに美味しいのに共食いしてるって思われるのも心外だしね〜』
「リーナ様!本当にこのカレーは食べ放題なのでござるか!?」
『うん、大丈夫だよ!わたしもいっぱい食べるよ〜!』
「こら!お前らが食べ放題なんぞしたら、俺様の食べるカレーが無くなるやろが!おい!ヴァージル!追加で何か作らせとけ!こいつら絶対食い尽くしよるぞ!」
すると、副隊長はやれやれと言った感じで厨房に追加の指示を出してくれたので、わたしと白虎はお腹いっぱいカレーと厨房が追加してくれたカツ丼を食べたのは言うまでもない。
そして、一ヶ月後に、わたしと第一班はロゼルナイト辺境伯領にある【禁足の塔】へと向かう事になったと副隊長から言われたのだ。
『・・・へぇ、ここにも【禁足の塔】ってあるんだね〜』
「リーナ様!拙者、リーナ様が参られるなら、たとえ火の中水の中、どこまでもお供つかまつりまする!」
「しゃあないな〜。暇やし、俺様もついてったるわ!」
「聖獣達にも協力して貰えるのは、こちらとしても有難いので宜しくお願いします。リーナ、経費を支給するので後ほど執務室へ来て下さい」
わたしは物凄く良い笑顔の副隊長に大きく頷き、今度の休みは買い出しに行く事にした。
そして、真面目にハエ叩きに似た武器で領内の超低級魔獣を一ヶ月、昨日まで討伐しまくり、その日の朝早くわたし達は【禁足の塔】へと行軍を開始したのだ。
「・・・リーナ、起きて!着いたよ!」
わたしが目を開けると、辺りは一面真っ赤な夕焼け色に染まっていた。
「リーナ様!お目覚め如何でござりまするか?」
『うん!白虎のお陰で良い感じ!ありがとう!』
わたしは今日は四足歩行の白虎の背中から降りると、目の前に聳え立つ巨大な塔を見上げた。
そして、今日はこのままダンジョンの中の安全地帯で野営し、明日から討伐をする事となったのだ。
『・・・何作ろうかな〜?』
「リーナ!あの唐揚げ作ってくれ!この前は、ちょっとしか食べられへんかったしな!」
白龍がそう言ったので、その日はヒツジ肉の唐揚げを作る事にした。
そして、ドライビールからのハイボール祭りを経て、デザート感覚のカクテルでトドメを差したのは言うまでもない。
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
わたしはお腹の鳴る音で目が覚めると、今日も二日酔いに無縁な獣人なのを感謝した。
そして、わたしのベッドの足元で唐草模様の風呂敷をほっかむりしてヘソ天で寝ている白虎を引き摺ってテントから出た。
「・・・り、リーナ様・・・拙者・・・無理でござる・・・」
わたしは何が無理なのか分からないけど、取り敢えずほっかむりを引っ剥がすと二日酔いの薬を出して白虎の口の中に流し込んだ。
「・・・おおっ!?リーナ様!かたじけない!」
そして、元気になった白虎に魔力を調理器具に流して貰い朝ご飯を作ったのだ。
『・・・・・・・・・・・・誰も起きて来ない』
「昨日は大いに飲み明かしたでござるからな〜」
わたしは先に食べてしまおうかと思ったけど、後片付けの事もあるので皆んなを起こす事にした。
「えっ!?何っ!?あ、頭がぁぁぁぁぁぁ!?んむっ!?」
わたしはテントに入って直ぐのベッドで蓑虫の様に布団に包まって寝ていたニックをベッドから蹴り落とすと、口の中に二日酔いの薬を流し込んだ。
「・・・あれ?頭が痛くない?もしかして、それって二日酔いの薬?」
わたしが大きく頷くとニックは笑顔でお礼を言ってくれたので、わたし達は手分けしてベッドで死んだ様に眠っている他の皆んなに二日酔いの薬を飲ませる事にした。
「おおっ!今日の朝飯は肉丼かいなっ!美味い!」
「リーナ様!お代わりしても良いでござるか!?」
「二日酔いだと、朝から絶対に食べられないよな〜」
「だよな!あの薬凄いよな!どこで売ってるのかな?」
「聖獣に効くんだから聖獣の恩恵ってやつじゃね?」
「うんうん!白虎様の恩恵って凄いね!って言うか、この肉丼、マジ美味いよ!」
「あっ!?この肉、あのカレーと同じ肉だぁ!でも、本当に何の肉何だろ?」
「「・・・いただきます」」
こうして、わたし達はタヌキ丼と野菜たっぷりのお味噌汁の朝ご飯を終えると、【禁足の塔】の一階へと向かったのだ。




