その33
ザリザリザリザリザリザリザリザリ・・・
わたしは微かな物音が聞こえて来た事で目が覚めた。
『・・・何の音だろ?』
そして、ゆっくりと起き上がり辺りを見回したけど、テントの中にはちゃんと全員居る事が分かった。
ザリザリザリザリザリザリザリザリ・・・
『・・・何かいるよね〜』
わたしは高級野営セットには盗難防止の魔法がこれでもかと掛けられているのは取説を読んで知っていたので騒ぐ必要も無いと考え、そっとベッドから下りるとテントの入り口から外を覗いてみた。
『ん?あれは・・・・・・・・・・・・何だろ?』
わたしの視線の先には、昨夜の焼き肉とビールの宴会の後片付けをせずに寝たので、その残骸である網にこびり付いた焦げた肉片を必死に舐めてる唐草模様の風呂敷をほっかむりした全く何か分からない大きな白い何かがいたのだ。
そして、もっと良く観察しようと顔を出したら、その白い何かが顔を上げて視線が合った。
「・・・」
『・・・』
ドドドドドドドドッ!ズサーーーッ!!!
そして、その白い大きな何かはハッとした顔になり一目散に二足歩行でわたしの方に駆け寄って来たと思ったら、見事なスライディング土下座を披露した。
「も、申し訳ござらぬっ!」
『えっと・・・二足歩行の猫?』
わたしはこちらに駆け寄って来た時に見た唐草模様の風呂敷をほっかむりした顔が猫っぽいなと思ったのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・拙者、虎でござる」
だけど、めちゃくちゃしょんぼりとした顔を上げた白い大きな何かがほっかむりを外した事で、わたしは虎だと言う事と普通に会話も出来る事が分かった。
『それで?何で網を舐めてたの?』
「・・・恥ずかしながら虎の聖獣であるこの白虎、空腹に耐え兼ね網を舐めており申した・・・」
『そんなにお腹空いてたんだね。でも、聖獣ならペットになれば自活しなくても絶対にご飯貰えるんじゃなかった?』
「それが・・・」
わたしが王子妃教育で習った聖獣についての常識を白虎もちゃんと知っていたのだけど、めちゃくちゃ食べるから餌代が物凄く掛かるのに全く恩恵が無いと言われて何度も飼い主から追い出されたのだそうだ。
そして、一ヶ月程前にも飼い主宅から追い出されてからはあちこちでこっそり残飯を漁っていたけど、最近はそれすらもありつけなくて彷徨っていたら、物凄く良い匂いがしたので一晩かけて辿ってみたらここに着いたのだそうだ。
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
『なるほどね〜。わたしもお腹空いたし、ご飯食べる?』
「えっ!?誠にかたじけないでござる!」
わたしはしょんぼり顔からぱあっと輝いた顔の白虎に、聖獣だし魔法具の調理器具に魔力を流して貰うのに丁度良いなと思いながら朝ご飯を作った。
『・・・うんまっ!?タヌキ丼、うんまっ!』
「な、な、な、何という美味さであろうかっ!?」
わたしがA5ランクの黒毛和牛の牛丼以上に美味しいタヌキ丼に感動していたら、びっくり顔の白虎も同じく感動したみたいで、途中からは泣きながら食べていた。
そして、わたしは大盛りのタヌキ丼を三回、白虎は超大盛りのタヌキ丼を十五回お代わりしてから、漸くスプーンを置いたのだ。
「・・・拙者、満腹になったのは生まれて初めてでござる・・・」
わたしがそうしみじみと言う白虎に同情してしまったのはしょうがないと思う。
『そっか。じゃあ、わたしのペットになる?勿論、ご飯はお腹いっぱい食べていいよ?』
「・・・誠に・・・誠にかたじけないでござる・・・」
アオーーーーーーーーンッ!!!
こうして、嬉しさのあまり再び号泣した虎の聖獣白虎は、わたしのペットになったのだ。
「・・・何やうるさいねんけど・・・アカン・・・頭が割れそうや・・・ん?お前、白虎やないか?何でこんな所におるんや?」
「おおっ!?白龍殿ではないか!?もしかして、お主もリーナ様のペットなのか!?」
「ちゃうわボケっ!俺様がリーナの飼い主やっちゅーねんっ!うおぉぉっ!?頭が痛いぃぃっ!」
わたしは二匹が知り合いな事にちょっとびっくりしたけど、まあ、聖獣同士何か繋がりがあるんだろうと思った。
そして、白虎の鳴き声で起きて来たと思ったら、自分の大声が二日酔いの頭に響いたらしい白龍がその場に崩れ落ちると、白虎は慌てて駆け寄り持っていた風呂敷が光ったと思ったら小さな瓶を取り出したのだ。
「白龍殿!これは頭痛に効く飲み薬でこざる!」
「・・・す、すまんな」
ブハッ!
そして、白龍は瓶の中身を飲んだのだけど、速攻で吐き出したのだ。
「お、お、お前、俺様に何ちゅーもん飲ませるんやっ!殺す気かっ!」
わたしは白龍が吐き出した事により中身の匂いが辺りに漂った事で、本当に殺せそうなぐらいには激不味なのだと察した。
「はあぁぁぁ・・・リーナ、そいつの風呂敷も俺様の樽と同じ様なもんやから手を当てて二日酔いの薬出してくれ・・・」
大きな溜め息を吐いた白龍がそう言うと、しょんぼり顔の白虎が風呂敷を差し出して来たので、二日酔いの薬か〜と思いながら手を当ててみた。
すると、一瞬光って中身がスポーツドリンク色した瓶が現れ、白龍は引ったくる様にして飲み干したのだ。
「・・・さすが、リーナやっ!美味い上に治ってしもたわっ!リーナ!俺様、腹減ったから何か美味いもん作ってやっ!」
「「「・・・その薬をくれ・・・」」」
『・・・』
こうして、わたしはテントの外の騒がしさにヨロヨロと出て来た三人にも二日酔いに効くらしい瓶を出してから、再びタヌキ丼を大量に作る事になったのだ。




