その32
わたし達は四階に行く前の安全地帯でちょっと遅めのお昼ご飯を食べる事にしたのだけど、携帯食料で済ませたい隊長と副隊長に対して、食材がいっぱいあるのだからちゃんとしたご飯が食べたい皇太子と白龍で意見が対立していた。
「・・・それじゃあ、二対二なんだから、リーナの意見で決めるしかないよねぇ?」
「せやな!リーナの作る飯は美味いしな!」
『え?わたしは携帯食料で良いよ?』
「はあっ!?何でやねんっ!携帯食料なんてしょうもないもんを俺様に食わせる気かいなっ!?」
『じゃあ、白龍が自分で作ればいいんじゃない?白龍は聖獣なんだから料理ぐらい簡単に出来るでしょう?』
「そ、それは・・・おいっ!皇太子っ!お前が何か美味いもんぱぱっと作れっ!」
「僕?僕は料理しないよ?もしかしてリーナは携帯食料で良いの?」
わたしが皇太子に大きく頷くと、それなら仕方ないと、あっさりと携帯食料を出して食べ始めたので、白龍もブツブツ文句を言いながら食べる事となったのだ。
「・・・兄上、俺達はこのダンジョンを明後日には出るけど、兄上の予定はどうなんだ?」
「うーん・・・明後日かぁ・・・それじゃあ全踏破は無理そうだよねぇ。ジーク達と一緒に帰るよ」
「皇太子殿下。確か明日から視察のご公務のご予定があったのではございませんか?」
「あ〜、大丈夫!それはラスターに任せたから!」
わたしはラスターって誰だろうと思っていたら、隊長のお兄さんでこの国のザラスターク第二皇子だと副隊長に教えて貰った。
ちなみに皇太子の名前はアンジュリアスと言うらしい。
お昼ご飯を食べて四階に上がったわたしは、そこにいる闇堕ちした聖獣が何か分かってしまったので、入り口の前で立ち止まった。
「どうした、リーナ?」
「あのフォルムはタヌキだよねぇ」
「なるほど。リーナの種族ですね」
わたしは暗い雰囲気の森の中を火を吹きながらのっしのっしと歩く真っ黒な巨大なタヌキに、どうしたものかと考えた。
『・・・さすがにタヌキ肉は食べたくないな〜。何か共食いの気分だしね〜』
「一応、リーナとあれは似て非なるもんちゅーやつやで?そもそも聖獣は神が動物を似せて作った神力の塊やねん。せやから修行の足らん半人前が作ったもんが闇堕ちしよった上に増殖してこないなっとるんや!」
わたしはそれを聞いてなるほどな〜と思い、それなら、まあ、純粋なタヌキじゃないのなら食べるのもありだなと思った。
そして、わたし達は闇堕ちした火を吹く真っ黒なタヌキの聖獣の全討伐を開始したのだ。
『熱っ!?』
わたしは大きなタヌキの尻尾を両手で掴んで地面に叩き付けて討伐した瞬間尻尾が熱くなったので見ると、いつの間にか燃えていたので、慌ててバシバシと尻尾を地面に打ち付け消そうとした。
『何で消えないのっ!?』
「おい、皇太子っ!リーナの尻尾の火は真空魔法やないと消えんっ!消したってくれっ!俺様は忙しいねんっ!」
「はいはい。って言うか、僕が真空魔法使えるの良く分かったねぇ」
皇太子が左手を一振りすると、漸くわたしの尻尾の火は消えたけど、毛が燃え落ちて一部ハゲていた。
『は、腹立つ〜!くそタヌキがーーーっ!!!』
わたしは隊長と副隊長のコンビが剣でタヌキ達を討伐し、白龍が竜巻きでタヌキ達を巻き上げてバラバラにし、皇太子が火を吹くタヌキ達を一瞬にして氷漬けにしているのを尻目に、新たに襲い掛かって来たタヌキ達に体当たりして蹴散らすと、片っ端から地面に叩き付けた。
そして、漸く夕方前に闇堕ちしたタヌキの聖獣達の全討伐は完了したのだ。
「・・・今回は数が多かったな」
「ああ。お陰で凄まじい量のタヌキ肉の在庫が出来たぞ」
「リーナ!俺様は腹が減った!美味いもん食いたいんや!」
「僕もお腹減ったなぁ。ジーク、ここで野営にしようよ」
皇太子の言葉に隊長は頷き副隊長に目配せすると、副隊長はベルトポーチから、わたしが預けていた頭陀袋を取り出した。
そして、隊長と副隊長であっと言う間に豪華な野営準備が整った。
「へぇ。これはなかなか奮発したよねぇ」
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
わたしもお腹が空いたので、未だ尻尾のハゲの怨み満載のタヌキ肉で焼き肉をする事にしたのだ。
「ん?この肉をこの感じで薄く小さくしたらええんか?」
わたしは見本で一枚のお肉を包丁で切ってから、白龍に見せてお願いしてみた。
すると、わたしの思った通り、白龍は竜巻きであっと言う間にタヌキ肉を大量の焼き肉用にカットしてくれたのだ。
そして、野菜も同じくカットして貰えたので早速焼き始め、皿やカトラリーやタレの準備をした。
『・・・いただきますっ!うんまっ!?』
わたしは香ばしい香りの肉汁したたるタヌキ肉を口に入れた瞬間、有り得ないぐらいの美味しさに見舞われたのだ。
「・・・これは、凄まじく美味いな」
「そうだな。タヌキがここまで美味いとはな」
「う〜ん、本当に美味しいよねぇ」
「この脂、堪らんな〜!リーナ!このタヌキに合う酒出してやっ!」
白龍の言葉に他の三人が一斉にこちらを見たので、明日大丈夫なのかな?と思いながら、わたしは樽に手を当てた。
「おおっ!?何やっ!?この爽快な喉越しはヤバいやろっ!?ドライビール?エールとはちゃうんか?」
こうして、焼き肉にビールの王道の大宴会が始まったのは言うまでもない。




