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その31

 「・・・ジーク。僕の事は置いて行け。ヴァージル、ジークの事を頼んだぞ」


 「・・・兄上」


 「・・・皇太子殿下」


 そう言って、隊長のお兄さんはゆっくりと目を閉じた。


 バコッ!


 「ブホッ!?」


 「痛っ!?リーナっ!俺様を武器にすなっ!」


 わたしは【禁足の塔】のまるで暗い森の中の様な一階の入り口を入ったばかりの所で、色んな所がプルンプルンしてる美女達に囲まれ誘われ速攻で受け入れた隊長のお兄さんの顔面を、同じく鼻の下を伸ばしてる白龍の尻尾を掴んで殴った。


 『そいつらの中身カエルだよ?』


 わたしには美女の中がカエルだと透けて見えたので、白龍に教えてあげた。


 「そんなん分かっとるわ!龍とカエルならほぼほぼ問題無いやろが!」


 「え?カエル?」


 隊長のお兄さんが目を開けると、美女達は一瞬で違う意味でプルンプルンした大きな真っ黒なカエル達に変化し、一斉にわたし達に襲い掛かって来ようとした。


 「カエルとは無理」


 グギャーーーーーーーーーーーッ!!!


 そして、何が無理なのか知らないけどスンとした隊長のお兄さんが右手を一振りすると、カエル達はあっと言う間に業火に包まれ、辺りには美味しそうな香ばしい香りが漂い、わたしはダンジョンの入り口で巨大なカエルの丸焼きを大量にゲットする幸先の良いスタートを切ったのだ。


 「あーあ、美女と楽しめると思ったのになぁ」


 「せやけど、このカエル美味いで?違う意味で楽しめとるんちゃうか?」


 「まあ、そうだねぇ。これはかなり美味しいよねぇ」


 「「・・・」」


 『・・・』


 わたしと隊長達が、こんがりと焼けた巨大なカエルの足を片手に歩く隊長のお兄さんと白龍に遠い目になったのはしょうがないと思う。


 そして、一階は闇堕ちしたカエルの聖獣しかいないみたいで、最初は絶対にプルンプルンした美女のカエルに誘われてふらっと行く一人と一匹に、毎回うんざりしたのもしょうがないと思う。


 「カエルなのが実に惜しいねぇ」


 「俺様はカエルでもええんやけどな〜」


 こうして、一階の闇堕ちしたカエルの聖獣は隊長のお兄さんが全部丸焼きにしてくれたので、わたし達は何もする事無く二階へと向かったのだ。


 『え?』


 二階も同じく森の中の様な場所に一歩足を踏み入れた瞬間に、わたしの全身の毛が逆立った。


 「リーナ、大丈夫か?」


 「何か察知しましたか?」


 「何か倍に膨らんだねぇ」


 「来るで〜」


 白龍がのんびりとそう言った瞬間、辺りは暗闇に包まれ、わたしは辺りを警戒する為に顔を少し動かした。


 バチッ!


 『ギャーーーーッ!?』


 「・・・何か空気がピリピリするな?」


 「・・・そうだな」


 「これって静電気だよねぇ?」


 「せやな〜。リーナは全身が毛に覆われとるさかい、ここのやつとは相性バッチリみたいやな!」


 わたしは暗闇にぼんやりと光る羊っぽい目が浮かび上がったので思わず後退りした。


 バチッ!


 『ギャーーーーーーーーーッ!!!』


 そして、わたしは再び全身に鋭い痛みが走ったのだ。


 「「リーナ!動くな!」」


 「うわぁ、さらに膨らんだねぇ」


 「動かんでも、今のリーナは静電気ホイホイになっとるからな〜。ま、動くよりマシちゃうか?」


 わたしは闇堕ちした真っ黒なヒツジの聖獣が全討伐されるまで、その場を一歩も動かないと心に誓った。


バチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!


 『ンギャーーーーーーーーーーーーーーッ!!!』


 「リーナ、大丈夫か?」


 「あちこち、ちょっと焦げてますね」


 「リーナが動かなくても羊が体当たりして来たら、しょうがないよねぇ」


 「ま、大量放電で速攻で全討伐出来たんやし、リーナの毛に感謝やな!」


 『・・・』


 わたしはその場から動かなかったけど、黒い羊の群れが何故かわたしに押し寄せて来た事で物凄い静電気が発生し一瞬で全討伐は出来たけど、めちゃくちゃ痛かったし自慢のモフモフ毛が焦げたのは許せそうにない。


 ちなみに隊長達は常に身体強化と防御魔法を展開してるから何の影響も無かったのだと知って、切実に魔法が使えたらと思ったのは言うまでもない。


 そして、大量のヒツジ肉をゲットしたわたし達は三階へと向かい、わたしはやっぱり森の中の様な部屋に恐る恐る足を踏み入れたのだ。


 『・・・あっ!ウサギだ〜!可愛い〜!』


 わたしは草むらからひょこっと顔を出したつぶらな瞳のわたしより遥かに大きなぬいぐるみの様な黒ウサギに、一瞬で癒された。


 そして、わたしの目の前に来た大きな黒ウサギは近くで見てもつぶらな瞳がめちゃくちゃ可愛いかった。


 パカッ!


 『へ?』


 「「リーナ!」」


 わたしは目の前の黒ウサギの顔面が割れ、中から大量の触手が飛び出て来たと思ったら、一瞬でぐるぐる巻きにされて持ち上げられていた。


 ベシッ!


 『ブベッ!?』


 そして、その一瞬後には、わたしは触手から解放されて地面に投げ捨てられ顔面を強打したのだ。

 

 「あ、リーナはここでは絶対に死なんから大丈夫や!そいつらの餌は魔力やさかいにな!」


 『・・・』


 こうして、わたしはその後草むらからわんさか飛び出して来た闇堕ちしたウサギの聖獣だったものに一切見向きされなかったが、隊長達が全討伐してくれたので大量のウサギ肉をゲットしたのだ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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