その30
わたし達が皇宮に戻る頃にはすっかり日が暮れていて、直ぐに晩ご飯の時間らしく、わたしは速攻で侍女達に身支度を整えて貰うと皇帝陛下達のいる方の食堂へと案内された。
「・・・リーナ。今日は帝都の外に収穫体験へ行ったそうね?楽しかった?」
わたしは笑顔の皇后陛下に大きく頷くと、目の前の大きなステーキをナイフとフォークで切り分けてから口に入れた。
『・・・うんまっ!?柔らかっ!?』
「この肉、めちゃくちゃ美味いなっ!リーナ!この肉に合う酒出してやっ!」
わたしは同じくステーキを食べている白龍に頷くと、隣りの椅子の上にある樽に手を当てた。
「おぉっ!?このハイボール言うんはめちゃくちゃ口の中がスッキリするな〜!」
私もまるっと同意だったので頷くと、ハイボールで肉の脂を流した。
そして、今日は隊長達も皇帝陛下達も飲もうとしなかったので飲まないのかと思っていたら、結局いつの間にかハイボール祭りになっていた。
「・・・このハイボールと言う酒は何にでも合うな」
「・・・ジーク。今日はこのハイボールだけにしておこう」
「・・・そうだな。明日は二日酔いになりたくないしな」
わたしはここでは幼馴染みらしい会話の隊長達に、二日酔いってしんどいもんね〜と思いながら三枚目のステーキをハイボールで流し込んだ。
そして、今日はいっぱい動いたので更に五枚のステーキを追加で平らげると、わたしは大満足でその日を終えたのだ。
「・・・食用となる動物の狩りがしたいのですか?」
わたしは次の日の朝、身支度を整えて貰うと、お馴染みの侍女達にお肉を仕入れる為の狩りが出来る場所は無いかダメ元で聞いてみたのだ。
すると、基本的に帝都の食用のお肉は畜産物として飼育されているらしく、帝都の外にいる動物は食べられるものもいるけど美味しくはないのだそうだ。
『・・・もう経費は使い切ったしな〜。どうしよ』
「リーナ、それなら聖獣を狩ったらええやん?」
『え?』
わたしは聖獣って狩ったらダメなんじゃなかったっけ?と王子妃教育時代の知識を思い出して白龍に聞いてみた所、聖獣には闇堕ちした存在がいるらしく、それらにはこの世界でのルールは無いので、討伐しても大丈夫だろうとの事だった。
「闇堕ちした奴等には自我は無いから魔獣みたいなもんやし、ただただ傍迷惑なだけやから遠慮なく狩ったったらええねん!それに普通の動物よりも美味いはずやで?」
『えっと・・・その闇堕ちした聖獣はどこにいるの?』
「ん?ここの近所のダンジョンにおるで?」
こうして、わたしは闇堕ちした聖獣を狩るべくダンジョンに潜る事にしたのだ。
「・・・【闇堕ちした聖獣を狩る為にダンジョンに潜りたいです】【闇堕ちした聖獣のお肉は物凄く美味しいと白龍が言ってます】ですか・・・どうするジーク?」
わたしは朝ご飯を食べる前に隊長の部屋に突撃すると、何やら書類仕事をしていた隊長と副隊長がいたのだ。
「・・・どこのダンジョンだ?」
「あ〜、あそこや、あそこ!ここの近所のめちゃくちゃでっかい塔や!まあ、ダンジョン言うても中は部屋とちゃう異世界なんや!だから、魔法も使いたい放題やで!」
「帝都の近くの大きな塔?【禁足の塔】か?・・・ヴァージル手続きをしてくれるか?」
「了解。後は宜しくな」
「了解」
どうやらその塔には入る為の手続きがいるらしく、副隊長が部屋から出て行くと隊長に仕事をするから部屋で待機しておくように言われたので、わたしは朝ご飯を食べてから部屋に戻った。
そして、物凄く心配顔の侍女達が言うには、【禁足の塔】は神の住まう天空へと続く塔と大昔から言い伝えられて来て、今迄誰一人中に入った者はいないらしい。
「あー、昔はあっこからでも行けたけどな〜。今は無理やで?何で無理かって?闇堕ちした聖獣しか居らんようになったから神達が天空への道をぶっ壊しよったんや。そらまあ、自分達の住む場所に変なん入って来たら嫌やわな!」
それなら神様が討伐したら良いのにと思い白龍に聞いてみた所、神様達は基本的にめちゃくちゃ面倒臭がりなんだそうだ。
「せやから、こっちに丸投げしたんやろうけど、まあ、闇堕ちした聖獣はあっこから出られへんし、こっちの方も討伐するん面倒臭かったんちゃう?」
わたしはなるほどな〜と思い、その後、お昼ご飯を食べ終えた後に隊長から呼び出しが掛かったのだ。
「リーナ!美味しいお肉を取りに行くんだってねぇ?って言うか、あそこダンジョンだったんだねぇ。僕も暇だし行くよ。あっ!大丈夫!横取りなんてしないから!まあ、味見はしたいけどね?」
『・・・』
わたしは一国の皇太子がちょっと暇潰しぐらいの感じでダンジョンに潜るもんなのかと思ったけど、遠い遠い目をした隊長と副隊長も潜るらしく、その場で三人と二匹の討伐隊が結成された。
そして、皇帝陛下達からの大量の差し入れの食材を頭陀袋に入れたわたしは、次の日に【禁足の塔】へと向かったのだ。




