その3
『・・・うんまっ!やっぱり人間はお肉を食べないとダメだわ〜っ!マジでうんまっ!』
まあ、獸体の獣人族だけどと思いながら、今現在わたしは目の前の大皿に乗っていた何の肉かは分からない骨付き肉に齧り付いている。
「・・・凄い食欲だな〜。タヌキって肉食だっけ?」
「いや、確か雑食性だったと思うけど、人間仕様の濃い味が付いた食べ物とか大丈夫なのかな?」
わたしは同じテーブルからそんな会話が聞こえたので、甘辛醤油味の骨付き肉を手に持ったまま、こちらを心配そうに見ている騎士達に大丈夫だと大きく頷いてから再び齧り付いた。
「・・・大丈夫っぽいな」
「・・・だな」
あれからわたしが騎士達と共にロゼルナイト辺境伯領領主館と言う場所に到着したのは日がすっかり暮れた頃だったので、取り敢えずお城っぽい建物の大きな食堂で晩ご飯となったのだ。
そして、頭陀袋に入っていた一週間分の携帯食料が無くなってからは、そこら辺に生えてる携帯食料よりも味気ない木の実やほんのりしか甘くない果実を食べていたわたしの目の前に置かれた山盛りの甘辛醤油味の骨付き肉の良い匂いに、わたしのテンションが上がりまくったのはしょうがないと思う。
その後、次々と運ばれて来る料理やデザートを食べ終わった時には、身も心も大満足だったのは言うまでもない。
「腹は一杯になった様だな。それなら話しを聞こうか。お前はタヌキなのか?」
わたしは隊長と呼ばれている騎士に一瞬の躊躇もせず大きく頷いた。
「そうか。それなら鑑定魔法にかけても大丈夫だよな?」
わたしが再び大きく頷くと、食堂にブルド王国の王宮でも見た事ある鑑定の魔法具の大きな水晶が、騎士によって運び込まれた。
「それに手を置いてくれ」
わたしはお皿が片付けられたテーブルの上に置かれた目の前の大きな水晶にそっと両手を置いた。
すると、獣人の国で鑑定した時と同じ様に一枚の紙が空間に現れ、それを水晶を持って来た騎士が取ると隊長に渡した。
「・・・種類はタヌキ。名前は無いのか」
わたしは国外追放刑にされた時にアルシェリーナ・モンフルールの名前は国から抹消されているし、獣人の国での鑑定の時も不完全体だと種族欄は空白となり、完全体になる迄は普通の動物と同じく種類欄に記載されるのだと教えらていたので、正しく鑑定されているのを理解した。
「・・・年齢は十六歳か」
「えっ!?結構な御老体だったんだっ!?」
「なるほどな〜。だから賢いのかな?」
わたしの知識ではこの世界のタヌキの寿命は二十年弱なので、まあ、普通のタヌキであれば御老体なのは間違い無い。
「・・・スキルは茶釜?何だこれは?」
わたしは隊長にそう聞かれても使った事が無いので分からないから、大きく首を傾げるしかなかった。
「閣下、この動物はタヌキの亜種なのではないでしょうか?亜種であればスキルを持つ個体もいますし、知能指数もその生態も千差万別ですから」
「・・・亜種か。タヌキだと言うのに金色の被毛なのもそれなら納得だな。所で、背負っているカバンの中身を検めても良いか?」
わたしは大きく頷くと、皆んなよりも座面が高い椅子から飛び下りてテーブルから離れると、頭陀袋を背中から下ろし中身をぶち撒けた。
「す、すげぇ・・・」
「どんだけ持ってんだよ・・・」
「・・・魔石だけか。そのカバンはどうやって手に入れた?」
わたしはマジックバッグと言う魔法具になってる頭陀袋から出した、自分よりも遥かにうず高く山の様に積まれた魔石の後ろからひょこっと隊長の方に出ると、頭陀袋を置いて通り過ぎてから顔だけ振り向いて両手を小脇で小さく挙げてみた。
「・・・・・・・・・拾ったのか」
わたしは隊長に大きく頷くと、隊長と隊長の横の騎士は若干遠い目になっていた様な気がするけど、国が変わってもジェスチャーだけでも本当に何とかなるもんだな〜と、これまでのタヌキの鳴き声だけで言葉を喋る事が出来ない十六年間を振り返りそう思った。
そして、その日は取り敢えず騎士達の暮らす区画の空いてる部屋に泊まる事となり、久しぶりのベッドで爆睡したのだ。
ちなみに魔石の山は隊長がと言うよりロゼルナイト辺境伯領が買い取ってくれたので、わたしは一夜にして小金持ちになってしまったのは言うまでもない。




