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その2

 わたしはアルシェリーナ・モンフルール。


 獣人族が暮らすブルド王国の男爵令嬢だった。


 そして、あるあるの前世日本人の記憶を持つ異世界転生者でもある。


 そして、あるあるの婚約破棄からの国外追放で平民になったのだけど、まあ、あのままブルド王国に居ても希少な人体でもなく、普通の獣人体でもない不完全体の獸体のわたしの未来は暗かったので、これで良かったのだと思う。

 

 この世界には獣人族の他に人間族・魔族・エルフ族とあり、めちゃくちゃ巨大な丸い大陸が大連峰で東西南北に分断されてそれぞれが平和に暮らしている。


 そして、この世界では魔法と加護は魔力を使って発動し、スキルは体力を使って発動するそうだ。


 獣人族は魔力は無いけどアホみたいな体力を使ってスキルを発動し、人間族は魔力も体力もそこそこ持っているから魔法とスキルを使い、魔族は体力は殆ど無いけどアホみたいな魔力で魔法を使っているらしい。


 そして、エルフ族は体力も魔力もアホみたいに持つけど何が発動するか分からない女神の加護と言うものを使うのだと、この前まで通っていた貴族学園では習った。


 そんな今世のわたしは前述通り獣人族なのだけど、獣人族では物凄く希少な体力も筋力もアホみたいにある金色の獣人族なのに、不完全体と呼ばれる獸体なのでスキルが使えない。


 わたしからしたら本当に全く理不尽だけど、本当に役立たずなのだ。


 そんなブルド王国では極稀に生まれる金色の獣人族は漏れなく王家に引き取られて養育されるので、わたしも生まれて直ぐに王家に引き取られ、年が同じと言う事で王太子の婚約者となったのだ。


 獣人族は生まれて来る時は獣人体か獸体で、三歳頃には獸体であってもスキルの使える獣人体か希少な人体に変化し、通常は遅くとも貴族学園に入学する十三歳頃迄には獸体からの変化を終えるらしかった。


 そして、獸体で生まれた方がより体力を持つので、その上金色だったわたしはこれまで王宮で本当にチヤホヤされて育ったのだけど、結局十六歳迄待ってみても獣人体にも人体にも変化しなかったので、獣人族に極々稀にいるスキルの使えない獸体の不完全体なのだと認識された途端に、婚約破棄からの国外追放となったのだ。

 

 『・・・まあ、スキルもあれだしね〜。国外追放で本当に良かったかもね〜』


 わたしは自分のこれまでをつらつらと考えながら歩いていると、遠くに大勢の人影を発見した。


 『おっ!人がいる!』


 わたしは久しぶりに見る魔獣以外の生き物にワクワクしながら近づいてみた。


 テッテッテッと足取り軽く近づくと、人影はどうやら何かの行軍の最後尾だと分かったので、わたしは最後尾を歩く所々破けた青い騎士服を着た五人のうちの、一番ズタボロの一人の騎士服の裾を引っ張った。


 「ん?」


 立ち止まり振り返ったのは茶髪の若い男性で、わたしの遥か頭上を見てから緑色の目を下に向け、目が合うと固まった。


 「どうした?え?まっ、魔獣だーーーーっ!!!」


 すると、立ち止まった騎士の隣りを歩いていた、これまたまあまあ破けた騎士服を着ていた若い男性がわたしを見て、そう叫んだのだ。


 そして、わたしはあっと言う間に大勢の抜刀した騎士達に囲まれた。


 「ニック!大丈夫かっ!?」


 「ああっ!服を破かれただけだっ!」


 「見た事無い魔獣だ!カイル!鑑定!」


 「うわぁ!ダメ!鑑定不明個体!」


 「何だとっ!?取り敢えず結界だっ!隊長に応援要請!」


 「「「「「了解!」」」」」


 わたしは固く握りしめていた騎士服の切れ端を手に『え?え?え?』とキョロキョロしていたら、何やら透明な大きなお椀を被せられた感じがした。


 「鑑定不明の魔獣だと?状況は?」


 「はいっ!ニックが襲撃されましたがケガは無く、結界に閉じ込めてありますっ!」


 そして、そんな声がして直ぐ、足音と共に囲んでいた騎士達が割れて、見た限りそれほど破れてなくてちょっと豪華な黒い騎士服の黒髪金眼の若い男性が現れた。


 「・・・これは魔獣なのか?」


 わたしはそう言った黒髪金眼の若い騎士にぶんぶんと首と手を振って否定したのは言うまでもない。


 「・・・え?言葉が通じてる?」


 わたしはそう言ったニックと呼ばれていた騎士にコクコクと大きく頷いてみせ、手に持っていた騎士服の切れ端を指差すと手を合わせて何度も頭を下げて謝った。

 

 「・・・通じてるな。魔獣では無いし獣人族でも無さそうだから・・・お前は普通の動物なのか?」


 わたしは今度は胸の前で手を組みコクコクと大きく頷いた。


 「え?それじゃあ、めちゃくちゃ頭良い動物って事ですか?」


 「だけど、何の動物だろ?」


 「このフォルムはタヌキじゃね?」


 「でも、金色だぞ?タヌキは黒っぽい焦げ茶色とかだろ?」


 「だよな〜。って言うか、こいつ何か背負ってるぞ?」


 わたしはその言葉に慌てて頭陀袋を下ろすと、中から透明の石を幾つか取り出して、黒髪金眼の騎士の方に驚かしたお詫びにそっと置いた。


 「え?魔石だよね?」


 「は?動物が魔獣を狩ったのか?」

 

 「どうしますか?隊長?」


 「・・・詳しく聞くしかないだろうな」


 わたしは何を聞かれるのだろうと思ったけど土地勘も伝手も全く無いので着いて行くしかないなと思った。


 こうして、わたしは騎士達に囲まれながらロゼルナイト辺境伯城と言う所へ向かう事になったのだ。



 


 


 



 

 

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