その27
『・・・何しよっかな〜』
わたしは次の日の朝、目が覚めるとベッドから出る前に今日は何をしようかと考えた。
『取り敢えず、買い出しかな?』
「リーナ、出掛けるんか?」
『うん、朝ご飯食べてからね』
『しゃあないな、俺様もついてったるわ!』
わたしが昨日とは打って変わって元気いっぱいな白龍に大きく頷くと、ワンピースに着替えて頭陀袋を背負い手乗りサイズの白龍を頭の上に乗せて食堂へと向かった。
「あっ!リーナ!おはよう!」
わたしは、こちらも昨日とは打って変わって元気いっぱいなニック達にペコリと挨拶してから、朝ご飯の大盛りのカツ丼を食べ終えると、買い出しの経費を貰いに隊長の執務室へと向かった。
「へぇ、この子が噂のタヌキかい?」
わたしが笑顔の事務方の騎士に迎え入れられた隊長の執務室には、白い綺羅びやかな騎士服を着た若い男性が大きなソファーに座っていて、わたしを見てそう言ったのだ。
「・・・リーナ、丁度良い所に来たな。こいつは俺の一番上の兄だ」
わたしはなるほど隊長に似てるなと思いペコリと挨拶した。
「本当にちゃんと言葉が通じるんだねぇ。これなら休暇の間皇宮に連れて行っても問題無いよなぁ?なぁ、ジーク?」
「・・・まあ、問題無いが、うちの大事な騎士だからな。色んな意味で心配だから俺も一緒に行く」
「へぇ、ジークが心配するなんてなんて珍しいねぇ。ヴァージルはどうするんだい?」
「勿論、私も参ります」
「ふーん、じゃあ早速行こうか。父上達も待ってるだろうしねぇ」
こうして、わたしは買い出しに行きたかったのに、訳も分からないまま何故かアルドーラ大帝国の帝都へと行く事になってしまったのだ。
「・・・リーナ、起きて下さい。そろそろ帝都に到着します」
わたしは副隊長の声が聞こえて来たので目を開けると、窓の外はすっかり夕方になっていた。
あれから、本当にそのまま魔法飛行船と言う乗り物に乗ったわたし達は快適な空の旅を楽しみ、めちゃくちゃ美味しいお昼ご飯を食べた後寝てたら今に至る次第なのだ。
「・・・ふむ。見事に金色のタヌキよな」
「そうね。金色のタヌキだわ」
わたしは今現在、皇宮の皇帝陛下と皇后陛下の住む宮でちょっとした謁見と言う感じで二人に対面していた。
「リーナ。こちらへ」
わたしは手をワキワキとさせてる皇后陛下からの言葉に、一抹の不安を覚えながらしょうがなしに近く迄行くと、やはり速攻で抱きかかえられた。
「・・・見事なモフモフだわ」
「・・・皇后。狡いぞ」
『・・・』
そして、その後は皇帝陛下と皇后陛下にモフり倒されたのは言うまでもない。
「・・・父上、母上。リーナは十六歳だと伝えましたよね?リーナ、すまなかった」
わたしが皇后陛下に頭を吸われていると、そう言って隊長が引き離してくれた。
そして、隊長が言うには、普通の小動物は特殊な魔力を持つ人間には絶対に近寄れないので、その特殊な魔力持ちらしい皇帝陛下と皇后陛下は初めての小動物との触れ合いだったので許して欲しいと言われた。
わたしはそう言えばそんな感じの事を習ったなと思い出し、まあ、十六歳の乙女だけど見た目はタヌキだしなと思い頷いておいた。
「・・・して、ジーク。ダンジョンに聖域が現れたのは、そこの聖獣殿が理由か?」
「ん?ちゃうで?確かあそこは元々聖域やったはずや。そやけど、いつの間にか魔獣が住み着いて聖域が隠れとっただけやな!」
「ほう。と言う事は、第七層以降も全討伐すれば聖域が出てくると?」
「おう!出て来るな!」
わたしは着いてきた白龍と皇帝陛下達がダンジョンについての議論を始めたので、漸くゆっくりとする事が出来た。
そして、笑顔の侍女達が用意してくれたお茶とお菓子を頂く事にしたのだ。
『うんまっ!?えっ!?これ、クッキーだよね!?めっちゃ美味しいんだけど!?』
わたしは目の前のロゼルナイト辺境伯城でも食べてるはずのクッキーを一口齧って、その美味しさにびっくりした。
『・・・なるほど!バターか!それに小麦粉も何か違う感じがする!』
「あら?そんなに美味しかったのかしら?」
わたしは笑顔の皇后陛下に大きく何度も頷きながら、クッキーを頬張り続けた。
「ロゼルナイト領の小麦やバターのレベルは至って普通だからなぁ。同じクッキーでも材料が皇宮レベルだと美味しいよねぇ」
わたしは魔法飛行船の中でアルドーラ大帝国の皇太子でこの国のあらゆる騎士団のトップの団長でもあるのだと聞いた隊長のお兄さんの言葉に、なるほどと思ったけど、獣人国の王宮のわたしが食べていたクッキーがロゼルナイト辺境伯城と同レベルな事に今さら気づいてびっくりした。
『・・・この世界には、わたしの知らない美味しいものがいっぱいあるのかな〜?』
わたしはその後に出て来たブルド王国にも輸出されてるらしいエルフ族の国から輸入してる生まれて初めてと言っても過言では無いぐらいにめちゃくちゃ甘い桃のケーキをワンホール食べて、ブルド王国では一切食べた事無かったわたしの扱いにちょっとどころじゃなく腹が立ったのはしょうがないと思う。
そして、それ以上は晩ご飯が入らなくなると侍女達から言われたので、わたしは泣く泣くお代わりを止めたのだ。




