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ジークフリードSide〜その6

 ・・・まあ、読み書き出来るんだから普通に筆談出来るよなぁ


 俺は執務室でヴァージルに経費を強請る為に紙に書いて見せているリーナを見ていた。


 そして、何故いつもジェスチャーなのかと不思議に思いながらスキップして部屋から出て行くリーナを見送った。


 「・・・ヴァージル。十万ガルドは少ないのではないか?」


 「閣下。うちの領地は食料品に限り他領の十分の一の売り値ですから問題ありません」


 「・・・そうだったな」


 我が領は他領とは経営の仕方が異なり、領民達が作っている農畜産物は地産地消するしかないので、全て領地で消費する為に激安価格で提供しているし、飲食店もそれに伴い激安価格で設定してある。


 そして、そんな激安価格で領民達が自立して暮らしてはいけないので、辺境伯城は勿論、領都の領民も全員が辺境伯家の使用人扱いで辺境伯家が僅かな給料を出し、それを日々の生活費に充てて貰っていた。


 だから、領地からの収入は全く無いに等しいので、ヴァージルが幾ら切り詰めたとしても、辺境伯としての国からの助成金と俺の目減りする一方の個人資産で領民達の給料を賄っているのが現状だ。


 そんな感じで領民達は決して裕福では無いけど、食うに困る事が無いから、給料が安くて他領で買い物もそんなに出来ないがあまり不満も無いのだとヴァージルは言っているが、それが本当かどうかはちょっと怖くて誰にも聞いてない。


 そして、これまでは俺が死ぬまで個人資産は保たないだろうからいつかは破綻すると思っていたけど、今はリーナがいるので何とかなる様な気がしている。


 こうして、再び【暗闇の深淵】へと俺は向かい本当に何とかなりそうだと思ったのだ。


 「・・・錦魚に山葵に様々な珍味か。ヴァージル、どこにどう言う条件で輸出するかを帰還したら考えないとな」

 

 「そうですね。先ずは陛下達へ献上致しましょう」


 俺はヴァージルの提案に若干不安になったが、まあ、最初に言っておかないとあの人達は後々絶対に面倒臭い事にはなるよなぁと思い頷いた。


 そして、第四層の討伐を開始したら、まさかの神災級魔獣に心底驚いたが、神災級魔獣に驚いたのでは無くリーナに驚いたのが正確だった。


 ・・・金色の獣人がこれほどまでとはな


 俺は石化の状態異常も何のその、己の何百倍も大きな魔獣を一蹴りで討伐したリーナの攻撃力に唖然とした。


 そして、リーナがいそいそと持ってきた俺の目の前の神災級魔獣の魔石は天文学的な値段が付くはずなので、一気に貧乏も脱出したはずなのは隣りにいるヴァージルの物凄い良い笑顔で分かった。


 ・・・ここは神災級魔獣が出るダンジョンだったのか


 俺はさすがに第五層は金色の獣人とは言えリーナだけを餌にするのは危険過ぎるだろうと考えたので、リーナを守りつつ床下にいるらしい魔獣の討伐をする事にした。


 ・・・は?


 俺は一瞬何が起こったか分からなかったけど、理解した瞬間には床に拳を突き入れ、リーナらしきものに触れた瞬間掴んで引き出していた。


 ・・・沈む事が無かったから全く分からなかったが中に潜ろうと思えば潜れるのか。まあ、泥の中には潜りたくないが・・・


 俺はリーナがもっと深く落ちていたらと考えゾッとしたが、この後の討伐の事に思い至ると、それ以上にゾッとしたのはしょうがないと思う。


 「あっ!リーナが寝てる!」


 「する事無いし寝るしか無いんじゃね?」

 

 「だよな〜。リーナは沈むもんな〜。いいな〜」


 「リーナはさっき神災級討伐してるし、ここは俺達が頑張ろうぜ!」


 「だけど、いつ終わるんだろうなぁ」


 俺は第一班の騎士達の会話を聞きながらせっせと魔獣をこじ開け魔石を取り出していた。


 この魔獣の魔石は魔力を帯びない外殻を開けて取り出さないと三日後には消えて無くなるので、今現在いつ帰還出来るか分からないから回収した後でとはいかないので、今のうちに全採集しておかなければならないのだ。

 

 ・・・だが、それほど高額な魔石でも無いんだよなぁ


 俺は神災級魔獣の魔石も手に入れた事だしと、ヴァージルの方を若干の期待を込めて見てみたら、ヴァージルは嬉々としてさほど高額では無い超級魔獣の中から魔石を取り出していたので諦めて採集を再開した。


 そして、その日は死ぬほど疲れたのでハンバーグを作って貰ったら、皆んなと同じハンバーグだったのは心底嬉しかった。


 次の日に魔石を全採集してから向かった第六層は、相変わらず一見平和な一面の花畑だったけど、やっぱりここにも魔獣はいたらしい。


 今回はどうするかとヴァージルと相談した結果、魔獣は最奥の壁の中らしいので、いつも通りの投擲で様子を見る事にした。


 「あっ!あれヤバいやつだよね!?」


 ニックがそう言った時には既にリーナは魔獣の吐き出した体液を浴びていたので、ヴァージルは大急ぎで片手で水球を作り、ベルトポーチから薬液を出して放り込んだ。


 そして、毛がないので貧相だった顔がパンパンに腫れ上がったリーナが薬液の水球に飛び込み、俺は追い掛けて来た魔獣を討伐した。


 ・・・金色の獣人は回復力も物凄いよなぁ。普通なら痒みは取れても見た目は治らないのにな


 俺はリーナの身体能力に感心しながらも、ここも神災級魔獣だった事を申し訳なく思った。


 そして、絶対にこれ以上リーナを傷つける事無く討伐しようと心に誓ったのだ。


 ・・・あ、ヤバ


 「・・・閣下。リーナは気絶してます。そのまま続行して下さい。早く終わらせた方がリーナの為でもあります」


 「・・・そ、そうだな」


 俺はミスってちょっと体液がかかりたぶん顔が腫れ上がっているだろうリーナに心の中で詫びながら、もうかれこれ三時間以上釣り竿を振り続けて飽き・・・若干注意力が散漫になって来ていたのでヴァージルに同意し、気を引き締め討伐を続行した。


 そして、ヴァージル達が最後の魔獣を討伐している間に、俺は気絶したリーナの最初よりも遥かにパンパンに腫れ上がった顔に多めの薬液をそっとかけ、少しだけ今日の晩飯の心配をした。

 


 


 



 

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