その17
わたしが目を開けると、そこには見知らぬ天井があってびっくりした。
『・・・え?ここ、あ、テントか』
そして、ここがテントだと言う事を思い出して起き上がると、まだ皆んな寝ていた。
『・・・』
何故皆んなわたしのテントで寝ているのかと言うと、昨日テッドから取説を受け取って読んだ副隊長が、わたしが装飾物だと思っていたら魔法具だったもの全てに魔力を流した所、ベッドが一つしかなかった広いテントの中に次々と新しいベッドが現れ、取説通りの十人用のテントになったら、皆んなにテントで寝たいと言われた。
わたしとしては今世はまだ一応うら若き乙女なんだけど?と一瞬思ったけど、お腹いっぱいでめちゃくちゃ眠いし、まあ、所詮はタヌキだしなと思い頷いたのだ。
『・・・お腹空いて来たな〜。取り敢えず、皆んなの分も作るか〜』
わたしはベッドから下りると、朝ご飯を作る為にテントから出ようとしたけど、魔力の無いわたしには魔法具のコンロも炊飯器も動かせない事に思い至り振り返ると、丁度ニックが起き上がったので駆け寄ってお願いのポーズをしたのは言うまでもない。
そして、寝ぼけ眼のニックを引っ張って行き、コンロとお米を入れた炊飯器に魔力を流して貰った。
しばらくして、わたしがコンロの前で自分よりも大きな中華鍋の様子を見ていたら、隊長達も起きてきた。
「おはよう、リーナ。ドライカレーですか?」
わたしがそう言って中華鍋を覗く副隊長に大きく頷くと、副隊長はそれならと、少し離れた場所で小さな水球を作ると自分のマジックバッグから白い卵を取り出して水球に入れ、火魔法で水球を温め始めたのだ。
わたしはそれを見て異世界って本当便利だなと、自分が転生したのが魔法が使えない獣人だった事をちょっと残念に思った。
『・・・美味しい。めちゃくちゃ美味しい、この温泉卵・・・マジで美味しい・・・』
わたしは副隊長が作ってくれた温泉卵の乗ったドライカレーを一口食べると、前世でも今世でも食べた事の無いあまりの温泉卵の美味しさに、思わず目を瞑ってしまったぐらいには本当に美味しかった。
「どうやらこの卵は、リーナに気に入って貰えた様ですね」
「・・・ヴァージル、こんなに美味い卵がうちの領地にあったか?」
「いいえ、領地の卵ではありません。閣下もご存知の私のペットの水の聖獣の卵です。リーナ、在庫は十分にありますから遠慮無く使って下さい」
「・・・お前のペットか・・・」
「確か、副隊長のペットってカエルでしたよね!めっちゃ大きな!」
『・・・』
ニックの発言で、わたしの二口目の温泉卵乗せドライカレーの美味しさは半減したけど、まあ、異世界だしカエルだけど聖獣らしいしなと納得出来たら、三口目には美味しさが戻ったので、この先卵料理を作る時は副隊長に卵を貰う事にした。
そして、朝ご飯を食べ終えると、魔力の無いわたし以外の皆んなが野営の撤収をしてくれ、わたし達は第二層へと向かったのだ。
第二層は第一層とは違い床も壁も天井も真っ白でめちゃくちゃ明るかった。
だけど、部屋の奥の方のその白い床下には何かがいるのは、わたしには分かった。
『・・・いるな〜。って言うか、あの動きって、何だろ?ヘビかな〜』
「リーナ、今度も床下にいるのか?」
わたしは隊長に大きく頷くと、奥を指差してから一生懸命右腕を胸の前で横にくねらせた。
「・・・・・・・・・・・・・・ヘビか?」
わたしは頑張って正解してくれた隊長に大きく頷くと、取り敢えず騎士服を脱ごうとしたら副隊長に止められて、また釣り竿で投擲される事になったのだ。
「・・・ヴァージル。今度は俺が投げよう」
わたしは隊長の竿捌きの絶叫マシーンはどんな感じなんだろうとワクワクしながら飛んで行った。
そして、部屋の奥の方に到達したわたしが下を見ると、魔獣は飛び出て来た。
『あ、ヘビじゃなかった』
わたしは飛び出て来たのが体をくねらせる大きなミミズっぽい魔獣なんだと理解した。
そして、それは大きな口を開けて、わたしを食べたのだ。
『へ?』
そして、わたしの視界が突然真っ暗になった瞬間に副隊長の時よりも物凄い勢いで引き戻され、直ぐに魔獣の中から出たけど今回も有り得ないぐらいの超激臭だったので、副隊長が作ってくれていた泡立つ水球にそのまま飛び込んだ。
「・・・リーナ。すまなかった」
『・・・』
起こってしまった事はしょうがないし、まあ、獣人だしこんな事ぐらいでは死にはしないだろうしと思い、わたしが小さく頷くと、投擲はちょっとしょんぼり顔の隊長から副隊長に交代されたから、その後のお昼ご飯までの時間はめちゃくちゃ楽しかった。
『本当にめっちゃ楽し〜!今日の晩ご飯は何にしようかな〜!』
そして、お昼ご飯の携帯食料を食べ終えてから、再びわたしは残りの魔獣討伐の為に副隊長に投擲されているのだけど、取り敢えず、隊長の晩ご飯のおかずはお肉少な目にしようと思った。




