ジークフリードSide〜その4
俺が、今日も休みだが特にする事も無いので仕事でもするかと考えていたら、それは突然聞こえて来た。
グオォォォォォキュルルルルルルルッ!
俺は突然の爆音にびっくりしたけど、それがどうやらヴァージルに丸刈りにされたリーナだと分かると、何とも言えない気持ちになったが、まあ、腹が空くのは元気な証拠だろうと、丸刈りにされてすっかり貧相になってしまったリーナに心の中で苦笑した。
ガリガリガリガリガリガリガリガリ・・・
そして、今日の仕事の段取りを考えながら食後のお茶を飲んでいると、何かを砕く様な大きな音にびっくりして音がする方向を見たら、リーナがスプーンで何かを食べていた。
「・・・あいつは何を食べてるんだ?」
「・・・妖精用の餌ですね」
リーナを見てスンとした表情になってるヴァージルの言葉に良く見ると、なるほど確かにリーナの目の前にあるのは妖精用の餌を入れてる餌皿だった。
しかも三皿だ。
「それにしても恐ろしく頑丈な歯だな」
「そうですね。超激安の極小のクズ魔石と言えども妖精にも噛み砕くなど出来ませんが、まあ、リーナはタヌキですから」
俺は魔石の魔力を吸収するだけで、妖精でも噛み砕く事の出来ない魔石をタヌキが噛み砕くなんて無理だろうと思ったが、まあ、獣人のタヌキだしなと納得する事にした。
そして、その日は三食ともリーナは毎食デザートをたらふく食べた後に妖精用の餌を三皿食べていた。
俺が次の日、食堂で朝食を取っていると昨日とは打って変わって元通りのモフモフ毛並みのリーナがやって来たのには、さすがに驚いた。
・・・凄いな!たった二日で元通りになってる!
だけど、何故かリーナは騎士服では無く丸刈りのサイズに合わせて作らせたワンピース姿だったので、物凄いパッツパツ状態に心の中でちょっと笑ってしまったのは許して欲しい。
そして、次の日はリーナの武器を作る用意が整ったと錬金工房から連絡があったので、執務室でリーナにカタログを見せて選んで貰った所、ヴァージルがそれはそれは遠い目になってしまったぐらいにはえげつない金額がするものを選んでくれた。
それは、魔力が少ない人間でも高価な魔法具を扱える様にサポートする為の魔法具で、作る為にも使う為にも超級魔獣の魔石が物凄く必要だから、魔法具でも超高額な部類のものなのだ。
「・・・ヴァージル、本当にいいのか?」
俺は執務室から機嫌良くスキップでリーナが出て行ってから、思わずそう聞いてしまった。
何故なら、先日のリーナの活躍のお陰で大赤字は解消され、少し黒字になったはずだが、そこ迄の余裕は無いと思ったからだ。
「・・・ええ、大丈夫です。また、ダンジョンに潜れば良いのですから」
「・・・」
俺は物凄い良い笑顔になったヴァージルに嫌な予感しかしなかったが、まあ、リーナが嬉しそうだったし良いかと思い仕事を再開した。
リーナの武器が出来たのはそれから一週間後で、俺はどうやってそれを使うのか全く分からなかったので訓練場でリーナに実戦して貰う事にした。
そして、訓練場でキラキラと光り輝く釣り竿に騎士達は物凄く不思議そうな顔をしていたけど、リーナは嬉しそうに釣り竿を軽く振って手応えを確かめると実戦に入った。
ドゴーーーーーーンッ!!!
・・・なるほどな。
俺はダンジョンでリーナに反応して出て来た魔獣よりもわざと近い距離に魔法ゴーレムを展開させておいたら、リーナはいつも通りその場を動かなかったが素早く釣り竿を振ってゴーレムに針を掛けると、そのまま後ろを向いて釣り上げて、ゴーレムを自分の前方にぶん投げると、ゴーレムは見事に地面に叩き付けられて粉砕し、跡形も無く消え去ったのだ。
俺はとしては、今迄は魔獣に食われるまで動けなかったのに釣り竿を持つと動ける事が理解出来なかったが、隣りのヴァージルはホクホク顔になっていたので、まあ、いいかと考えるのを止めた。
そして、次の日の朝、執務室の俺の机の上に置いてあったヴァージルが組んだ今度のダンジョン討伐遠征の予定表には、ロゼルナイト辺境伯領の最大未踏破ダンジョンである【暗闇の深淵】と書かれていた。
・・・ここかぁ
俺は何故か嫌な予感がしたので、予定表をそっと裏返すと、心の中で大きな溜め息を吐いた。




