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その14

 わたしが獣道は絶対に人間が歩く道じゃないと思ったのは、ほんの十メートルほど歩いただけで派手に転んだからだ。


 そして、心配した友達が声を掛けてくれたけど、転んだ恥ずかしさよりも痛さよりも、このまま起き上がりたくないと思うぐらいには疲れ果ててもいた。


 すると、先導していた役員の一人の女子大生がやって来て、虫に噛まれるよと言ったわたしの目の前に何かの虫がいたので、わたしが慌てて飛び起きたのは言うまでもない。


 そして、ケガの確認をされたわたしは歩くように言われたので仕方なく歩き出し、その後も何度も転び、リュックサックと共に渡されていた水筒で水分補給をしながら二時間ほど歩いて、漸くわたし達はキャンプ地だと言う場所にお昼過ぎに到着した。


 そしてこれが、わたしの地獄の三丁目の入り口だったのだ。


 今回の参加者は会長以下の役員十人と新入生十人だったのだけど、わたしも含めた十人は体力も限界に近くその場に座り込んでしまった。


 だけど、直ぐに指示が飛んで来て、わたし達は今日の自分の寝床のテント等の設置に取り掛かったけど、キャンプど素人のわたし達が手早く設置出来るはずもなく、漸く新入生全員が取説を読んで助け合いながらテントの設置や火起こしを全て終えた頃には、もう夕方になっていた。


 そして、既にあっと言う間にテント等の設置を終えて寛いでいた会長以下の役員達と共に、リュックサックに入っていた長期保存出来るタイプのおにぎりを食べて水筒の水を飲み干すと、明日の朝まで自由時間と言われたので、わたしは寝袋に潜り込もうとした。


 すると、会長に飲水と食料の確保は自分達で助け合い確保しろと言われたのだ。


 こうして、地獄の四丁目に入ったわたし達は、その後の一週間、いわゆるサバイバル生活を送ったのだ。

 

 そのサバイバル生活三日目で、木の実や草だけではお腹がいっぱいにならないので沢にいる魚を捕まえる事になり、皆んなで木の棒と蔓で釣り竿を作ったのだけど、何故かわたしが一番良く釣れたので後半はずっと釣り担当だったし、手で捌いていたので今でもそう言う事に忌避感は無い。


 そして、わたしとしてはサバイバル生活に全く興味は湧かなかったから帰ってから退会しようと思ったのだけど、何故かどハマりした友達の泣き落としを交えた説得に負けた結果、四年間定期的にアウトドアサークルが主催するキャンプに釣り担当で参加した。


 だから、狙った所に投げるコントロールは四年間で自画自賛だけど完璧だなと思っていると、それならとアウトドアサークルの別の友達の勧めで始めてみたフライフィッシングがめちゃくちゃ楽しくてどハマりしてしまったのだ。

 

 『・・・でも、これはどうやっても魔力がいるもんなぁ・・・・・・・・・あ、大丈夫かも知れない』


 わたしは釣り竿のページを捲っていたら目に止まった魔法具を見てそう考え顔を上げた。


 そして、勢い良く右手を挙げると一声鳴いた。


 「決まりましたか?」


 わたしは右手を挙げたまま副隊長に大きく頷いた。


 そして、こちらに来た副隊長に、カタログにある最高級の釣り竿を指差したのだ。


 「・・・釣り竿ですか?これをオリハルコンで作る事は出来ると思いますが、リーナには魔力が無いですからねぇ」  


 わたしは困り顔になった副隊長に、次のページの魔法具を指差した。


 「・・・・・・・・・・・・なるほど。分かりました。注文しておきます」


 そして、わたしはちょっと遠い目になった副隊長と、執務室で仕事をしていた隊長や文官にペコリと挨拶してからスキップで部屋に戻った。


 『わ~い!また釣りが出来る〜!』


 わたしは部屋に戻ると、する事も無いのでベッドに潜り込み、その日一日ゆっくりと過ごした。


 そして、次の日からは仕事だったのだけど、この領地での騎士の仕事は主に魔獣討伐なので、わたしはニック達と午前中に訓練した後はハエ叩きに似た武器を持って領都や近隣の町村を回り、あのGっぽい魔獣やネズミっぽい魔獣等の小さな魔獣を、その週はせっせと討伐したのだ。

 

 「リーナの武器が出来ましたよ」


 わたしは次の週の午前中の訓練が始まる前に副隊長に呼ばれて執務室に行ったら、副隊長からオリハルコンで作られたと言う釣り竿タイプの武器を渡された。


 「リーナ、どうやって武器として使うか訓練場で見せて貰えるか?」


 わたしは隊長にそう言われたので大きく頷いた。


 そして、隊長達と訓練場に行くと、先ずは自由に試してみろと言われたので、試してみる事にした。


 わたしは一見するとロッドにリールを取り付けただけの釣り竿を軽く振ったら、シュルルッとまあまあ太めの糸がロッドから一メートルほど出て、糸の先には小さな針が付いていた。


 『うわぁ!ちゃんと使えるし、めっちゃ便利じゃない!?』


 わたしはその後何度か出したり引っ込めたりしてたら、隊長から魔法ゴーレムに使ってみてくれと言われたので、元気良く頷いた。


 「開始!」


 わたしが隊長の合図でこちらに向かって走り出した前方五メートルにいるゴーレムへ釣竿を振ると、物凄い勢いで糸が飛び出したかと思ったらゴーレムに到達する前に針が対象物に合わせて巨大化してゴーレムに掛かったので、そのままくるっと後ろを向いて前方に思い切りぶん投げた。

 

 ドガーーーーーーンッ!


 そして、地面に叩き付けられたゴーレムは粉砕されたのだ。


 「「「「「「「「・・・」」」」」」」」

 

 『え?ヤバいっ!めっちゃ楽しいっ!』


 こうして、わたしは三日後にルンルンで、オリハルコンのダンジョンとは別のダンジョン討伐に向かったのだ。

 


 



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