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その13

 「おはよう、リーナ、こちらへ来て下さい」


 わたしが今日の朝ご飯は何だろうと考えながら食堂に入ると副隊長に呼ばれたので、副隊長と隊長の座るテーブルに行きペコリと挨拶した。


 「リーナ、今日は何か予定はありますか?」


 わたしは何もなかったので小さく首を振った。


 「そうですか。それなら朝食後に隊長の執務室に来て下さい」


 わたしは大きく頷くとニック達と朝ご飯を食べてから、一足先に食堂を出た隊長の執務室に向かうと広い隊長の執務室では文官達が仕事をしていて、彼等に笑顔で迎えられた。


 そして、案内された執務室の一角にある応接セットのソファーにわたしは座った。


 『ん?これ何だろ?』


 「リーナ、それは武器も載っている我が領の錬金工房のカタログです。リーナの武器を作る為の手配が出来たので好きな武器を選んで下さい。どれでもいいですよ。決まったら言って下さい」


 わたしが頷くと笑顔の副隊長は仕事に戻ったので、まあまあ分厚いカタログを手に取った。


 『うーん・・・どれがいいんだろ?どれもちょっとなぁ』


 わたしは武器のページを見終わったけど、どれもいまいちピンと来なかった。


 『モーニングスターなら使えそうだけど、ずっと引き摺って歩く事になるよね?』


 わたしはモーニングスターを引き摺りながらの行軍を想像して、これじゃ無いなと思ったたので、どうしたものかと考えながら他のページを捲った。


 『・・・へえ、異世界の釣り竿か〜・・・』


 わたしは捲った先のカタログに載っていた竿・糸・針が全て伸縮自由自在の魔法具の釣り竿が、高額になればなるほど必要とする魔力も多いので、魔力が無いわたしにはそもそも使えそうもないなと考えながら、いつの間にか前世の大学生時代のサークル活動の事を思い出していた。


 わたしは基本的にインドア派で小中高と部活は文化系だったのだけど、大学に入学して近所の冷凍食品の製造工場でアルバイトを始めた時に知り合った大学の同期だった彼女から、近隣の大学の学生達が合同で運営してるアウトドアサークルが主催する新入生勧誘活動の一環の、一泊二日のグランピングに行ってみないかと誘われたのだ。


 そして、虫とか嫌いだしキャンプとかには全く興味は無かったけど、グランピングならまあいいかと軽く考えて参加したら、めちゃくちゃ楽しいわ美味しいわで楽勝だったので、わたし達が速攻でアウトドアサークルに入会したのは言うまでもない。


 これで楽しい大学生活を送れそうだと一緒に入会した彼女と共に、次のサークル活動はいつかな?とワクワクした。

 

 そして、次のサークル活動はゴールデンウィークでグランピングじゃなくて一週間のキャンプをすると言われたけど、着替え以外は手ぶらでオッケーと言われたので、わたしも友達になった彼女も、まあ今回も楽勝だろうと一週間の旅行気分でルンルンで参加した。


 当日、わたし達が朝早くに集合場所に到着すると、そこにはこの前のズラリと並んんでいた豪華な大型観光バスとは違う、小型のちょっと厳ついバスが三台停まっていたのだけど、まあ、人数も前よりめちゃくちゃ少ないからかな?と思いってると、今回は近場だから目的地までノンストップだと言われたので、お手洗いを済ませてからバスに乗り込んだ。


 そして、それがわたしの生まれて初めての地獄の一丁目だったのだ。


 前回とは違う行き先だからかアスファルトの道がいつの間にか土の未舗装路に変わった事により、バスは揺れに揺れたので、わたし達は前回みたいに楽しくお喋りする事無く、舌を噛まない様にしてどこかしらを掴み踏ん張り続けるしかなかった。


 そして、その状態でノンストップで三時間ほど経った頃、わたしが疲れ果てて揺れに身を任せてバスの中を転がってしまおうかと思った矢先にバスは目的地に到着したので、わたしも友達もフラフラになりながらも、これで楽になれると思い喜び勇んでバスから降りた。


 だけど、そこはわたしにとっては地獄の二丁目の入り口だったのだ。


 わたし達が到着したのは鬱蒼と生い茂る森の中の簡易トイレが設置してあるだけのちょっと開けた場所で、そこは四月も終わりなのに何だか肌寒く、時折聞こえる鳥の鳴き声が不気味に聞こえるほどには暗い雰囲気だった。


 そして、わたし達は簡易トイレでお手洗いを済ませると、三台目のマイクロバスに積んであっためちゃくちゃ大きくて重いリュックサックを背負わされると、会長以下の役員の大学生に先導されて獣道を登り始めたのだ。

 

 

 

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