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ジークフリードSide〜その3

 俺はダンジョンに潜った二日目の今現在、ヴァージルと第七班の騎士三人と共に、ひたすら超低級魔獣を討伐していた。


 ・・・今回の討伐遠征人数は二十人と一匹しかいないからキリがないよなぁ。あー、こいつら纏めて燃やしたい


 「閣下、絶対にご存知だとは思いますがが、この魔獣は燃やしたら魔石が残りませんからね?しかもここはダンジョンですからね?」

 

 「・・・」

 

 俺は、こちらを見ながら器用に襲い来る魔獣を討伐するヴァージルの疑う様な表情に小さく頷いた。


 ・・・何で分かったんだ?って言うか、マジで飽きた


 そして、俺は討伐しながら周りを見渡すと、リーナが第一班の円の中で座って水筒の水を飲んでいるのが見えた。


 ・・・俺も今だけタヌキになりたい


 俺がそんな事を考えているとリーナはいきなり立ち上がり、円の中から飛び出して魔獣を踏み潰し始めた。


 ・・・あいつ獣人のはずだよな!?本物のタヌキじゃないよな!?令嬢が素足で行くかっ!?


 そう思ったのはヴァージルもらしく、いつもの無表情がちょっとびっくり顔になっていた。


 そして、リーナを目で追っていると、俺達から離れ広い部屋の中の壁まで後十メートルと言った所で、それは突然現れた。


 「「「「「リーナーーーーーっ!?」」」」」


 俺は超級魔獣であるはずのエンペラードラゴンが壁から現れてリーナを飲み込んだのを見て、一瞬見間違いかと思ったが、現実だと理解した瞬間叫んでいた。


 「全員戦闘態勢に入れっ!」


 俺がそう叫ぶと、騎士達は超低級魔獣用の武器を捨て、全員が抜刀してエンペラードラゴンを囲む様に動いた。


 「隊長っ!リーナがっ!リーナがっ!」


 「分かっている!まだ間に合うかも知れん!先に手足と尾を切断するぞ!」


 俺は大量の超低級魔獣に騎士服を齧られているニックにそう叫ぶと、何やらモゴモゴと口を動かすエンペラードラゴンに対峙した。


 ・・・素直に飲み込まれてくれた方が助けやすいんだがな


 俺はエンペラードラゴンの鋭い牙がリーナに突き刺さってないかさすがに心配した。


 そして、攻撃命令を出そうとした瞬間に、それは起こった。


 ・・・え?


 俺は目の前の光景が信じられなかった。


 何故なら、リーナはエンペラードラゴンの口の中から飛び出て来たと思ったらエンペラードラゴンの鋭い牙を掴んでいて、その勢いのまま巨大なエンペラードラゴンを前に回転させて石床に叩き付けたからだ。


 そして、一瞬後にはエンペラードラゴンのキラキラと輝く大きな魔石と、鼻先を押さえて涙目のリーナがそこにはいた。


 俺や騎士達がその光景に未だ動けずにいると、隣りにいたヴァージルがスタスタと進み出て、大きな渦巻く水球を作り石鹸を投げ込んだ。


 そして、リーナは背負っていたカバンを投げ入れてから、騎士服と下着も脱いで水球に投げ入れると、直ぐ様自分も嬉々として飛び込んだのだ。


 「・・・恥じらいと言うものは無いのか?」


 「閣下、リーナはタヌキです」


 俺はいつの間にか隣りの定位置に戻っていたヴァージルにそう言われて、遠い目になったのはしょうがないと思う。


 そして、俺は楽しそうに丸洗いされているリーナとエンペラードラゴンの超高額魔石を回収してホクホク顔のヴァージルを横目に、いつの間にか俺の騎士服にも齧り付いていた、まだまだ大量にいる超低級魔獣を他の騎士達と全討伐したのだ。


 その後のダンジョンでは、先に超低級魔獣を速攻で全討伐してからリーナが見つけた超級魔獣達を討伐する事になったが、リーナは毎回騎士服と下着を脱いで全裸で魔獣に食われていた。


 俺からしたら飛び出して来た超級魔獣は俺達が討伐するのだから、食われる前に避けれるかこちらに逃げてくれば騎士服もリーナ自身も汚れないだろうと思ったのだが、何度か見ているうちに、金色の獣人は物凄く頑丈らしいから避けないのかとも思いもしたが、これは絶対に反射神経の問題で避けられないのだと理解した。


 俺は壁から飛び出して完全暴走状態のゴッドベアの攻撃を躱しながら、今日も楽しそうに丸洗いされているリーナを見た。


 ・・・本当に残念過ぎる運動神経だよなぁ。まあ、ヴァージルも楽しそうだしいいか


 俺は普段とは違い少し柔らかい表情のヴァージルを見てそう思った。


 そして、最終階層に向かった俺は久しぶりの大ピンチに陥った。


 何故なら、超級魔獣の中でも最も討伐したくない魔獣と出会したからだ。


 俺は最終階層にも魔獣がいるとリーナが教えてくれたので、高さ五十メートルはあるだろう天井に向かってリーナに飛んで貰った所、数秒後にリーナのものであろうタヌキの大絶叫が聞こえ動揺した。


 ・・・何だ!?何があった!?


 そして、その一瞬後に目にも留まらぬ速さで何かが落ちて来て石床に叩き付けられたので、思わず俺もヴァージルもニック達もその場に駆け寄った。


 「リッ!?」


 俺はリーナと声を掛け様とした瞬間には地面に叩き付けられたものが何であるか理解したので、直ぐ様飛び退いた。


 それはヴァージルもニック達もで、全員がリーナに物凄い勢いで叩き付けられたはずなのにリーナの怪力を持ってしても無駄に頑丈過ぎて力尽きる事無くウゾウゾと動くものを見つめた。


 「・・・あー、やっぱりこいつか〜。超級のくせにたまぁに出て来るんだよな〜」


 「天井だし、だろうなとは、まあ、思ったよね!」


 「火にはめちゃくちゃ弱いんだけどなぁ・・・」


 「ダンジョンの中で火魔法なんか使ったら、俺達が死ぬわ」


 「だよなぁ。何でこいつが超級魔獣なんだろうなぁ。面倒臭いよなぁ」


 そして、その数秒後に物凄い魔力を感知した瞬間に再びリーナの大絶叫が聞こえて来たので、上を見上げた俺が思わず舌打ちしてしまったのは許して欲しい。


 「チッ!大量に来るぞ!こいつらの火魔法以外の倒し方は分かってるな!」


 「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」


 そして、この全く金にならない蜘蛛型の超級魔獣を全討伐すべく、魔獣の攻撃を躱しながら俺達はただひたすらに何とか刃が入る大きさの口の中に剣を突き刺したのだ。


 「・・・うわぁ!?リーナ!大丈夫!?」


 俺は漸く討伐が終わり一息吐けるかと思ったら、リーナがえらいことになっていた。


 ・・・避けられなかったんだな


 俺は粘着糸が全身の毛に絡まって石床で藻掻いてる金色のタヌキを見て溜め息が出た。


 ・・・毛に絡んだ場合のあの粘着糸を溶解する薬液って、確かめちゃくちゃ高かったよなぁ


 俺がチラッとヴァージルを見ると、やっぱり少し怒りの冷気が漏れ出していた。


 そして、リーナが粘着糸を剥がすのを諦めて自分の毛を毟ろうとした所で、ヴァージルの何故かいつでもどこでも何でも出てくるベルトポーチから出したハサミを片手に、ヴァージルがリーナに小走りで駆け寄った。


 ・・・令嬢の丸刈り


 俺はヴァージルの躊躇も情けも全く無いハサミ捌きで出来上がった物凄く貧相な丸刈り姿のリーナを見て、ちょっと同情してしまった。


 だけど、本人はその後楽しそうに丸洗いされていたので、俺は心の中で呆れながら次の日に城へと帰還したのだ。

 

 


 

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