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その10

 わたしが目を開けると、そこには昨日タランチュラっぽい魔獣が大量に降って来た天井があった。


 『・・・腹立つ魔獣だったな〜』


 わたしは昨日の討伐中、蜘蛛っぽい魔獣が出す物凄く臭い粘着糸が毛に絡みまくって、めちゃくちゃ動き辛かったのだ。


 その上、皮膚と違い毛に絡んだ臭い粘着糸は石鹸で洗っても絶対落ちないし、落とすには城にある専用の薬液が要ると副隊長に言われた時には、帰るまでこのままかと絶望したのは言うまでもない。


 わたしが昨日の事を考えながら天井を見てイラッとしていると、起床の魔法具が爆音を鳴らし始めた。


 「おはよう!リーナ!うーん、やっぱり一晩じゃ生え揃わないよね・・・」


 わたしは同情いっぱいのニックに小さく頷いた。


 「一回りどころか半分ぐらいになったよな〜」  


 「って言うか、タヌキの皮膚って白いんだな」


 「リーナが亜種だからじゃね?昔、うちの爺ちゃんが獲ってきたタヌキでタヌキ汁した時に焦げ茶色の毛皮の中を見てみたら、表面は黒かったぞ?」


 「なるほどなぁ。だからリーナは尻尾も白いんだなぁ」


 わたしはレダンにそう言われて、手足が白いのは知ってるけど、改めて毛の無い尻尾を見るとめちゃくちゃ白かった。


 『わたしってこんなに色白なんだね〜。って言うか、ちゃんと生えてくるよね!?』


 わたしとしても、毛に絡んだ臭い粘着糸を取ろうと頑張ったけど取れないし、その臭いにも耐え切れないしで毟ろうとしたら副隊長に止められて、結局ハサミでカットされたのだ。


 だけど、かなり広範囲に毛の奥まで絡んでいたので、結局ほぼほぼ丸刈り状態になってしまっていた。


 そんな丸刈りのわたしは騎士服がダボダボで着れないので全裸で帰るしかなかったのだけど、予定通り一週間の討伐遠征から夕方前に城に帰還すると、副隊長は直ぐにお針子達を手配してくれた。


 そして、お針子達は丸刈りのわたしを見て皆んな同情いっぱいの顔になり、次の日の朝には大量の洋服を作って届けてくれたのだ。


 『え?ヤバっ!わたし、めっちゃ可愛いくない?』


 わたしは自分の部屋の大きな姿見に映る、フリルがいっぱいで一切の締め付けも無くふんわりと広がる桃色のワンピースを着た、ほっそりとして白く儚げでか弱そうな自分の姿が、ある意味の方向性においてはめちゃくちゃ可愛いのではなかろうかと思ったのだ。


 『何かアレよね?ラノベで言う所の庇護欲そそる?って感じ?小動物的な?』


 そして、わたしは自分のか弱そうな姿に大満足して朝ご飯を食べに食堂に向かったのだ。


 食堂に入ると、わたしはいつも通り第一班が座っているテーブルに着いた。


 『うわぁ!今日の朝ご飯も美味しそう!』


 わたしはテーブルの上の大皿に乗った海苔が巻かれた山盛りのおにぎりに心の中で狂喜乱舞した。


 「おはよう!リーナ!騎士服も似合ってたけど、今日のワンピースも良く似合ってるね!可愛いよ!」


 わたしは笑顔のニックに笑顔で大きくペコリとお辞儀すると、他の皆んなも口々に可愛いと褒めてくれたので、わたしは上機嫌で朝ご飯を食べ始めたのだ。


 『うんまっ!やっぱり日本人はお米食べないとね〜!あっ!これツナマヨだ!?うんまっ!』


 わたしは手に取ったおにぎりの具が大好きなツナマヨだったので、さらにテンションが上がり、次々とおにぎりを頬張った。


 「リーナ!?大丈夫!?そんなに慌てて食べないで!」


 わたしが一口をちょっと欲張ってしまい、おにぎりを喉に詰まらせると、直ぐにニックが空になっていたコップに水を注いでくれたので、ありがとうとお辞儀してから飲んだ。


 『ニックって優しいし気配り上手だし、本当にいい人だよね~!』


 そして、その後はテンションも落ち着いたので、わたしはゆっくりと朝ご飯を食べ終えられた。


 『・・・さてと、何しようかな〜』


 わたしは朝ご飯を食べ終えると、食後のお茶を飲みながら今日からダンジョン討伐遠征組に与えられた三日間の休暇で何をするか考えた。


 『取り敢えず、図書室に行くか〜』


 そして、わたしは一応この国の事や異世界転生と言ったらの魔法の事を詳しく知る為に、城にある図書室に行く事にしたのだ。


 わたしは城の中の地図も頭に入っていたので、迷う事なくお目当ての図書室に辿り着いた。


 『・・・うわぁ!本がいっぱいある!』


 わたしが図書室に入ると、そこにはわたしからしたら脳筋の獣人しかいないブルド王国の図書室よりも絶対にたくさんの本があるのが分かった。


 そして、わたしは早速本を読む事にしたのだ。


 『これこれっ!真実の愛〜!からの、断罪に、お前を愛する事はない〜!』


 わたしはブルド王国では冒険小説しか読んだ事がなかったので、思わず目に止まった大衆恋愛小説を手に取ってしまった事で、結局、お腹がめちゃくちゃ空くまで読み耽ってしまい、気がついた時にはいつものお昼ご飯の時間をかなり過ぎていた。


 『面白かった〜!今日の軽食は何かな〜?』


 この城の食堂は二十四時間開いていて、いつ行っても時間帯によりメニューは変わるけど食べる事が出来る。


 なので、今は午後二時過ぎだからお昼ご飯の時間帯は過ぎたので軽食メニューになるはずなのだ。


 今日はいつもわたしの分も注文してくれてるニック達はいなかったので、わたしは領民になった時に貰ってちゃんと読んでいた【ロゼルナイト辺境伯城での暮らし方】に書いてあった通り、厨房横の注文カウンターで今迄見た事無い給仕係にジェスチャーで直接注文して厨房の近くのテーブルで待っていると、いつもよりかなり小さいお皿が運ばれて来た。


 『・・・』


 わたしは壁際に置いてある座面の高い椅子を自分で用意して座っているので、目の前に置かれたお皿が良く見えるのだけど、それはどう見てもペット用の餌皿だった。


 『・・・これはどう考えても、魔石だよね~』


 わたしは目の前の餌皿に入ったダンジョンで嫌というほど見た極小の透明な石に、何故餌皿なのかと考えていたら、少し離れたテーブルに答えを見つけた。


 『・・・なるほどね〜』


 わたしはそのテーブルでお行儀良く餌皿に顔を突っ込んでいる洋服を着た猫みたいな、たぶん妖精を見て、自分も誰かと契約してる妖精だと思われたのだと理解したのだ。


 この大陸には魔獣の他にも妖精や精霊、そして聖獣なんかもいるのだけど、ブルド王国では妖精と契約して何かをする獣人とか聞いた事なかったので、教科書でしか見た事なかったのだけど、ここには妖精と契約して、たぶん教科書に書いてあったお手伝いなんかをしてるのだろうと思う。


 『うーん・・・さすがにわたしは獣人だし魔石は食べられないよな〜・・・うんまっ!?』


 わたしは餌皿から顔を上げた満足そうな猫みたいな妖精を見て、思わず一粒食べてみたら、何かめちゃくちゃ美味しかったのだ。


 『えっ!?えっ!?魔石って、こんなに美味しいのっ!?マジかーっ!?』


 わたしは歯で魔石を噛み砕いた瞬間、めちゃくちゃ脳が痺れるような幸福感と、口の中に広がる旨味そのものの味わいに本気でびっくりした。


 そして、わたしは一皿ペロリと平らげると、勿論お代わりをしたのは言うまでもない。


 

 

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