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その8

 オリハルコンが取れるらしいダンジョンの第二層も、第一層と同じ感じのだだっ広い石壁石床の部屋だった。


 『・・・面倒臭くなって来た』


 わたしは襲って来るGっぽい小さな魔獣をハエ叩きに似た武器でペシペシと力を思いっきり抜いてしばいているのだけど、しばいてもしばいても湧いてくる魔獣に物凄く飽きて面倒臭くなっていたのだ。


 「リーナ、疲れた?」

 

 わたしは隣りで同じ様に魔獣をハエ叩きに似た武器でしばいてるけど、気が付いてないのか三匹ほどに騎士服を齧られてるニックに、疲れてないけど大きく頷いた。


 「それなら、円の中で休憩したらいいよ!」


 「どうせこいつらしか襲って来ないしな〜。ニック、今日も齧られてるぞ〜」

 

 「えっ?昨日も齧りまくられたのにっ!絶対副隊長に怒られるっ!」


 わたしは慌ててGっぽい魔獣を払い落とすニックを尻目にペコリとお辞儀してから、彼等が作る円の中で水を飲む事にした。


 『これが一週間続くのか〜。ないわ〜』


 わたしはニック達第一班や他の班が五人一組で外を向いて円を作り、ハエ叩きに似た武器でひたすらGっぽい魔獣をしばくのを、彼等の隙間からぼーっと眺めた。


 『・・・ん?あれ、何だろ?』


 わたしは眺めていた先の壁の向こう側に薄っすらと大きな何かがいるのが見えたのだ。


 わたしはニックの騎士服の裾を引っ張って、物凄く大きな何かがいる壁の方を指差した。


 「ん?どうした?え?あっち?んー、壁だな!」


 わたしは壁と言い切ったニックの笑顔に、やっぱり無理かと心の中で苦笑した。


 そこが、獣人のわたしと人間の違いなんだろう。


 わたし達獣人の身体能力は半端ないので、頑張ったらどこまでも見えるし聞こえるし、意識しないでも見える時もある。


 そして、対象の魔力が多ければ多いほど、余計により良く見えるので、今現在襲って来てる殆ど魔力の無いGっぽい魔獣は勿論見えて当たり前で、魔力障壁の石壁の向こうにいる人間の視覚や魔力感知では分からない魔獣も感知は勿論見えてしまうのだ。


 『・・・って事は、めちゃくちゃ魔力のある魔獣だよね~。何で出て来ないんだろ?』


 わたしは魔獣と言うものは本能的に人間を襲うと貴族学園では習ったので不思議に思った。


 『あっ!そっか!魔獣は一部例外はいるけど、その殆どが強ければ強いほど大きくなるし、こっちの魔力量に敏感で、こっちの方が強いかも知れないって考える知能があるんだって先生が言ってた!』


 そして、わたしはだだっ広い部屋の中でひたすらハエ叩きを振ってる隊長以下の騎士達が、かなりの高魔力保持者だと今さら気づいたのだ。


 『皆んな、めちゃくちゃ魔力多いもんな〜。そりゃ、向こうも警戒して出て来ないか〜。でも、こいつら全部討伐してもあんまりお金にならないよね?』


 わたしはただただこちらに向かって齧り付いてくる、不快な害虫にしか見えない小さな魔獣の落とす極小の魔石は、買い取り額が絶対に激安だろうとしか思えなかったのだ。


 『塵も積もればって言うけど、これは塵過ぎるよね〜。うーん・・・どうにかあの大きいの引き摺り出せないかな〜・・・』


 わたしは水筒の水をチビチビ飲みながらしばらく考えた。


 『・・・思い出した!魔獣は強ければ強いほど魔力が無い獣人が近寄ったら暴走状態になって見境無しに襲って来るんだって習ったんだった!だから、ブルド王国は大陸一番の魔石輸出国なんだよね!』

 

 そして、わたしは暇潰しとお金の為に壁に向かって走り出したのだ。


 「リーナ!?どこ行くんだ!?」


 「叩き潰すのに飽きたんじゃね?」


 「だな〜。踏み潰してるもんな〜」


 「・・・リーナってブーツ履いてないし、素足だよな?」


 「さすがタヌキだな!」


 そんな声が第一班の騎士達から聞こえて来たけど、わたしとしても前世にいたGなら絶対に素足で踏みたくない。


 だけど、こいつらは一応Gでは無く魔獣だし、うっかり踏み潰したら魔石に変わるだけだったのは国外追放された時に体験済みなので平気なのだ。


 そして、わたしは大きな何かがいる壁まで一直線に走ったのだけど、後十メートルと言った所で、その大きな何かが飛び出して来た。


 『あっ!大連峰で見たドラゴンだっ!』


 わたしがそう思った時にはドラゴンは大きな口を開けていて、その数秒後にはわたしの視界は真っ暗闇になった。


 「「「「「リーナーーーーーーっ!?」」」」」


 「全員戦闘態勢に入れっ!」


 「隊長っ!リーナがっ!リーナがっ!」


 「分かってる!まだ間に合うかも知れん!先に手足と尾を切断するぞ!」


 わたしはニックや隊長達の声を遠くに聞きながら、必死にわたしを飲み込もうとするドラゴンの口の中で踏ん張っていた。


 『もう無理っ!』


 そして、わたしは思い切りドラゴンの口を中からこじ開けると、飛び出しながらさっきまで手探りで確認していたドラゴンの大きな牙を両手で掴み、その勢いのまま背負い投げの要領でドラゴンを地面に叩き付けた。

 

 ドゴーーーーーーンッ!!!


 「「「「「「「「え?」」」」」」」」


 わたしは大きな魔石に変わったドラゴンよりも、目を見開き固まった隊長達よりも、ただただ自分の臭いの方が気になった。


 『くっさっ!マジ、くっさっ!無理っ!死ぬっ!』


 わたしは若干涙目になりながらえげつない激臭に鼻を押さえていたら、副隊長が近づいて来た。


 「・・・リーナ。丸洗いしてあげましょうか?」


 わたしは副隊長の申し出にぱあっと顔を輝かせると、大きく何度も頷いた。


 すると、副隊長が何やら呟いたと思ったら大きな水球が出来、それが回転し始めたのだ。


 『・・・うわぁ!洗濯機みたい!』


 そして、副隊長が自分のベルトポーチから小さな固形物を出して水球に投げ入れると、水球の中はみるみるうちに良い香りを漂わせながら泡立ち始めた。


 「出入りは自由に出来ます。息が苦しくなる前に出て来て下さい」


 わたしは大きく頷くと頭陀袋を先に投げ入れ、騎士服と下着も素早く脱いでフローラルの香りがする水球に投げ入れると、一瞬後には自分も飛び込んだ。


 「・・・恥じらいと言うものは無いのか?」


 「閣下、リーナはタヌキです」


 そして、わたしと副隊長以外は再びGっぽい魔獣を討伐し始めた中、わたしは泡立つ水球を何度も出入りしてから、副隊長に水洗いと乾燥もして貰ったのだ。




 


 

 


 

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