その7
訓練場のお披露目から一週間後の今朝早く、わたしはダンジョンに潜っての討伐遠征の為に城を出たのだけど、朝ご飯は城の食堂でだったから今朝もお腹いっぱい食べた。
そして、お昼ご飯は歩きながらだったので、ブルド王国から国外追放された時に食べたのに良く似た携帯食料を再び食べるのは、まあ、許容範囲だ。
『歩きながらなんだもん仕方ないよね〜』
そして、夕方までずっと歩き続けて到着したダンジョンにそのまま潜って、次々と間髪入れず襲い来るちっこいGに良く似た魔獣を支給されたハエ叩きにしか見えない武器でしばきまくり、漸く静かになった一階層のだだっ広い魔力障壁の石壁と石床で出来た部屋での野営となったのだ。
わたしは前世ではキャンプはした事あったけど国外追放された時は完全野宿だったので、それはもう大変だった。
何故なら、テントも何も無いからそのまま地面に寝るしかないので寝心地は本当に最悪だったし魔獣に噛み付かれまくって水場を見つけるまでは臭いしで、本当に本当に不快な毎日だったのだ。
だから、今回のこの世界の文明の利器を使用するであろう討伐遠征の野営はどんな感じなんだろうとかなり期待してた。
わたしの中では野営と言えばテントだけど、魔法のある世界のテントとか絶対寝心地良さそうだし、キャンプ飯ならぬ野営飯にもめちゃくちゃ期待してたのは言うまでもない。
わたしは先程支給された、お昼にも食べた携帯食料を持ってキョロキョロと辺りを見回すと、騎士達は思い思いに石床に直に寛いでいた。
『・・・ん?テント設置しないのかな?』
「リーナ、どうした?キョロキョロして」
わたしはそう聞いて来たニックに両手で地面から大きな三角形を描いてみた。
「ん?何だろ?」
「大きな三角?おにぎりが食べたいんじゃね?」
わたしはアークの言ったおにぎりも食べたいけど、今はテントを伝えたいので、次は三角形を作って入り口から入る感じにして寝てみた。
「あー、なるほどな〜。テントか」
わたしはカイルの答えに正解と言う感じで指を指してみた。
「リーナのジェスチャーって分かりやすくて良いよね!」
「リーナ、ダンジョンの野営は、その層の部屋の中の魔獣を全滅させたら部屋を出るまで湧いて来なくて安全だから基本的に石床に雑魚寝だ。まあ、経費削減にもなるしなぁ」
「しかも、この先ずっと食いもんは携帯食料だしな!早く帰れる様に頑張ろうな!」
わたしはテッドの言葉にジェスチャー歴十六年だしなと思っていたら、まさかのレダンの経費削減の雑魚寝宣言とニックの追い討ちによるトドメでその場に崩れ落ちたのはしょうがないと思う。
そして、わたしは携帯食料をボリボリ食べ終えると、する事も無いので固い石床で頭陀袋を枕にして寝る事にした。
『うーん・・・固い。寝れるかな・・・』
「・・・リーナ、凄い。一瞬で寝たね」
「いびきかいてるし。タヌキ寝入りじゃなさそうだね〜」
「固い石床なのになぁ。痛くないのかなぁ」
「モフモフだから大丈夫じゃね?」
「あー、毛皮がクッションになってる感じか・・・羨ましい!」
わたしは第一班の騎士達がそんな事を言ってるのも知らず、夢の中で骨付き肉に齧り付いていた。
『・・・ん?どこだここ?あ〜、ダンジョンか〜』
わたしはよっこらしょと起き上がって辺りを見回すと、大勢の騎士達が思い思いの態勢で寝転がっていた。
『喉渇いたな』
わたしは頭陀袋から水筒を取り出し飲もうとしたら空だった。
『・・・昨日補充するの忘れてた』
わたしは何故か行軍中も水筒に水を入れてくれていた隊長の近くに行ってみた。
『イケメンの寝顔ヤバいね〜。さすが皇子様!』
ロゼルナイト辺境伯領領地騎士団の隊長は、この国の元第三皇子で領主なのだと言うのは、昨日の行軍中にニック達から聞いた。
『・・・喉渇いたなぁ』
わたしはさすがに寝てる、しかも隊長を起こすのはマズいよなと考えていると、隣りから視線を感じたので見ると、こちらは公爵家の五男だと言う副隊長のヴァージルが、わたしを見ていた。
なので、わたしは手に持っていた水筒が空だと逆さまに振ってアピールしてみた。
すると、副隊長は無言で手を差し伸べて来たので、わたしが空っぽの水筒を渡したら、魔法で水と氷を入れてくれた。
『あっ!副隊長も水作れるんだね!しかも氷入りっ!』
わたしは水筒を返して貰うとペコリとお辞儀をしてからホクホク顔で第一班が寝てる場所へと戻った。
『ん〜、冷たい水、うんまっ!これにカツカレーとか最高なのにな〜。早く城に帰りたい!』
そして、わたしが冷たい水を飲んでいたら起床の魔法具がけたたましい爆音を轟かせた。
「・・・もう、朝かぁ。おはよう、リーナ!早起きだね!」
わたしは爆音の中寝ぼけ眼で起き上がったニックにペコリと朝の挨拶をすると、ニックは笑顔で爆音に負けず寝ている第一班の騎士達を起こし始めた。
そして、今朝もやっぱり携帯食料の朝ご飯を食べ終えると、わたし達はダンジョンの第二層へと向かう事になったのだ。




