8話
私が暇つぶしゲームの中で新商品をポチった、あの日から数日後。 地下1〜5階のスラム街、そして私たち初心者探索者たちの界隈に『大激震』が走った。
地下10階のモノリス(自販機)に、突如として未知のオーバーテクノロジー製品が出現したのである。 大量の荷物を自動で運ぶ『魔力駆動の運搬車』と、飲めば一瞬で疲労が吹き飛ぶ奇跡の霊薬『栄養ドリンク』。 莫大な資金力を持つ大商人たちはこぞってこれを買い占め、物流現場であるこの浅い階層へと次々に投入し始めたのだ。
「(……えっ? なんで私がゲームの中で解放したアイテムが、現実世界にあるの?)」 などと疑問を抱く余裕すら、今の私には無かった。
「これで少しは荷運びが楽になると思ったのに……どうしてこうなった……っ!」
私は薄暗いスロープを這いつくばりながら、血を吐くような絶望の叫びを上げていた。 高価な運搬車を導入できた商人たちは、たしかに一気に大量の荷物を運べるようになった。では、その高価な機械を買えない底辺の初心者探索者たちには、一体何が起きたか。
「運搬車一台の輸送ペースに人力で勝つには、休まず運ぶしかないぞ! ほら、倒れそうならこの『栄養ドリンク』を飲め! 寝ずに働けぇっ!」
そう、究極のブラック労働の加速である。 機械化による圧倒的な効率化に対抗するため、底辺労働者にはそれまで以上の過剰なノルマが課せられることになったのだ。そして肉体の限界が来ても、強制的に『栄養ドリンク(私がポチったやつ)』を飲まされ、過労死ラインを越えて働かされ続ける地獄。
今やこのダンジョンで生きていくには、死に物狂いでレベルを上げ、初心者探索者を卒業して地下10階の戦闘員(中堅探索者)へと昇格する以外、一生この無限ブラック労働を続ける道しか残されていなかった。
この残酷な物流革命と格差社会の絶対的な現実は、スラム街に暮らす貧民や初心者たちに、あまりにも大きすぎる衝撃を与えた。
「ビッグスライムを一人で粉砕した謎の救世主様!? そんなこと言ってる場合か! 今日のノルマを終わらせないと俺たちが飢え死にするんだぞ!」
私が先日、ゴミ捨て場で無自覚に引き起こした『スラムの救世主騒動』など、日々の生活を容赦無く脅かすこの大恐慌の前では、一瞬にして吹き飛んでしまったのである。
「(救世主扱いされて目立つのは困るから助かったけど……)」
自分が設置し、自分がボタンを押した商品のせいで、自分の首が過去最大級に絞まりまくっていることなど露ほども知らず。 私は今日も涙目で栄養ドリンクを呷りながら、終わらない荷運び労働へと繰り出すのであった。
AIと一緒に作りました。




