7話
交易ブームによる終わらない荷運び労働。 連日のブラックすぎる環境に、私の精神と肉体は限界を迎えていた。
「もう無理……肩と腰がちぎれる……」
薄暗い通路の隅にへたり込み、私はふと空中の半透明ディスプレイを開いた。 そこには、地下10階での政府の政策(お布施)によって、見たこともない桁数まで莫大に貯まりまくった『魔力ポイント』が表示されていた。
「(あーもう、無課金とか縛りプレイとか言ってる余裕ないわ。ポイント全ツッパしてでもストレス発散したい……!)」
私は血走った目でメニュー画面をスクロールし、『新商品ラインナップ追加』の項目を見つけ出した。 そこにあった『運搬用台車(魔力駆動アシスト付き)』と、疲労回復用の『栄養ドリンク』のボタンを、親の仇のように躊躇いなくポチリ、ポチリと連打する。
「ふぅ……。これでゲームの中の人たちは楽になるだろう。現実世界でもそんな便利なものがあれば良いのになぁ」
自分がボタンを押したことで、地下10階の現実のモノリスに『未知のオーバーテクノロジー製品』が突如として出現し、政府や学者たちが再びパニックに陥ることになるのだが――当然、この時の私には知る由もなかった。
「よし。じゃあ現実の最後の残業……ゴミ捨てに行きますか」
――一方その頃、地下5階の落とし穴(ゴミ捨て場)付近。 スラム化したこの階層は、今までにない未曾有の危機に瀕していた。 力のある探索者たちはみな、地下10階の新首都や地上での商隊護衛に出払ってしまい、現在この地下1〜5階には戦闘力のない貧民や老人ばかりが取り残されている。
さらに不運なことに、交易の活発化によってダンジョン内の生活ゴミが爆発的に増加。その膨大なゴミの魔素に群がった『弱いスライム』たちが合体と変異を繰り返し、大人が見上げるほど巨大な『ビッグスライム』となって大量発生してしまったのだ。
「ひ、ひぃぃっ! 誰か、誰か助けてくれぇ!」 「ダメだ、誰も戦えるヤツがいない! スラムが飲み込まれるぞ!!」
ブヨブヨと波打つ巨大な粘液の群れが、貧民たちへとにじり寄る。 誰もが絶望し、死を覚悟したその時だった。
「……あーもう。なんでゴミ箱の周りに、こんなに不燃ゴミ(スライム)が溢れてるんだよ」
死んだ魚のような目をした10代の少女が、両手に巨大なゴミ袋を提げて現れた。私である。
「ただでさえ疲れてるのに、これじゃゴミが捨てられないだろうが……! 分別が面倒くさいんだよおおおおおっ!!」
連日の過労と、残業代ゼロの怒り。溜まりに溜まったストレスが限界突破した私は、無意識のうちに『魔力循環』を全身の筋肉へとフル稼働させた。
ダァンッ!! ダンジョンの石畳を砕くほどの強烈な踏み込み。弾丸のように飛び出した私は、両手の巨大なゴミ袋をハンマー代わりに振り回し、前方に塞がるビッグスライムの群れを物理で粉砕していく。
「おらぁっ! 邪魔だ退けぇっ!!」
パーン! パーンッ! と、水風船が割れるような音を立てて、巨大スライムたちが次々と破裂し魔核へと変わっていく。 私がやっていることは、前世の休日にやっていた『ベランダの掃除』と何ら変わらない。ただ蹴散らし、ゴミ箱への導線を確保しているだけだ。 しかし、その光景を見ていた貧民たちにとっては違った。
「お、おお……なんという圧倒的な力だ……!」 「あんな少女が、我々を見捨てずに戦ってくださっている!」 「神よ……! 救世主様が現れたぞ!!」
あっという間にスライムの群れを殲滅し終えた私に、スラムの住人たちが涙を流して土下座を始める。 「よし、掃除完了。さっさと帰って寝よ」 そんな住人たちの狂信的な視線にまったく気付かないまま、私はゴミを落とし穴に投げ捨てると、肩を叩きながら呑気に帰路につくのであった。
AIと一緒に作りました。




