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6話


 地下10階の草原エリアに存在する広大なセーフティーエリアは、政府の主導と人々の『お布施(自販機での購入)』によって着実に拡張を続けていた。  新たな安全地帯が生まれるたびに、凄まじい勢いで建築ラッシュが巻き起こる。新首都『ネオ東京』と名付けられたその拠点は、今やダンジョン内とは思えないほど巨大な住宅街を形成し、空前の好景気に沸き立っていた。


 しかし、一つの区画が急速に発展すれば、当然そのしわ寄せは別の場所へと向かう。


 これまで多くの探索者たちが住んでいた、地下1階から地下5階までの旧居住区(洞窟エリア)。力のある中堅探索者や金を持った商人たちは、安全で快適な地下10階の新居へとこぞって移住していった。  その結果、かつて活気のあった上の階層に残されたのは、魔物と戦う力を持たない非戦闘員や初心者探索者、そして高い場所代を払えない貧民層ばかり。  浅い階層は急速にスラム化が進み、ダンジョン内で明確な『格差社会』が生まれつつあった。


「そら、次の荷車を回せ! 今日中に他のダンジョンへ向かう商隊へ引き渡すんだ!」


 そんな格差社会の中で、皮肉にも一つだけ劇的な変化を遂げた場所がある。  地上へと通じる唯一の出入り口――『地下1階』の入り口付近だ。


 地下10階で量産される魔力水や回復ポーション。それを他ダンジョンへ売り捌くための拠点として、商才のある者たちが真っ先に地下1階の空きスペースを『巨大倉庫』として押さえたのである。  この判断は的中し、他ダンジョンとの交易が本格化するにつれて、地下1階の物流倉庫は莫大な富を生み出す心臓部となった。


 そしてそれに伴い、私たち初心者探索者の主な仕事である『荷物運搬』の需要も爆発的に増加していた。


「ひぃーっ、お、重い……っ! なんでこんなに運んでも運んでも終わらないの……!」


 地下10階の生産地から、地下1階の巨大倉庫まで。  私は自分の背丈よりも高く積まれた木箱を荷車に載せ、『魔力循環』をフル稼働させて死に物狂いでスロープを登っていた。  いくら奥義を使って身体を強化しているとはいえ、交易ブームによる物資の量は限界をとうに超えている。


「でも、まあ……あの地獄の日々に比べれば、まだマシ、か」


 額の汗を拭いながら、私は周囲を行き交う探索者たちを盗み見た。  彼らは皆、荷運びの護衛や商隊の警護、ポーションの買い付けといった金儲けの話題で持ちきりだ。


 そう、この空前の交易活況のおかげで、つい数日前までダンジョンを狂乱の渦に陥れていた『奇跡の回復魔術師探し』は、急速に下火になりつつあったのだ。 「幻の魔術師を追うより、目の前のポーションを運んだ方が確実に金になる」。それが、打算で動く探索者たちや商人たちの出したリアルな答えだった。


「(おかげでやっと部屋から出られたけど……。ボッチでも安全に歩けるようになった代償が、この無限ブラック肉体労働とはね……)」


 命の危機(と貞操の危機)が去ったことに安堵しつつも、前世のブラック企業時代を凌駕するダンジョンの過酷な労働環境に、私は重い溜息を吐く。  自分が設置した自販機のせいでこの物流爆発が起きていることなど知る由もなく、私は今日もせっせと底辺の荷物運搬に精を出すのだった。

AIと一緒に作りました。

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