買い物2
……あ、でも、八束は、フォルちゃんの事避けてるんだっけ。そうなると、お金、欲しくても貰えないよなあ。
ってか、その辺の扱い、どうなってるんだ?上の方?は、俺達と八束がセットになってる、って分かってんの?
そもそも、そもそもだぜ?俺と違って、八束は働いてるじゃん。それに関して給料は発生しないのか?
……発生してて、給料すでに貰ってたら、多分こんな事、しないんだろうなあ。まだ、貰っていないのか……、それとも、修行、ってか授業扱いで、無賃金だったりする?
うわあ、それはブラックだなあ。バイトでも、研修中、給料出るのに……。
八束の行動を止めさせるつもりが、ドツボに嵌ってしまった。なんか、何とも言えない気持ちになり、つい、彼に哀れみの視線を向けてしまう。当の本人は気付いてないようだけど。
「本気で成功させようとしてるけど、その内容が苦手分野で、中々思うように出来なかったら、そりゃ嫌になるわ」
「苦手分野?」
「友達付き合い。まだ影井との距離感つかめてないんだろ?」
「う……」
図星だ。
「例えばどうでもいい奴だったら、それなりの対応はできるだろうし、逆に、俺ぐらい仲良くなっちまえば、何でも言えるんだろうけど、そのどっちでもないからな」
……耳が痛い話だ。
要するに、俺が距離感掴むの下手くそなコミ障野郎、ってことなのだが。
「そういうお前は、現状に何も感じてないのか?」
「特に何も?」
「当たって砕けてるのにか?」
「本気じゃないからな」
なにか、八束から見習える要素はないか?と探りを入れてみるが、暖簾に腕押し、という感じだ。それでも現状打破をしたい俺は、聞かざるを得ないのだけど。
「本気じゃなくても、何度も失敗してたら、面倒くさくなったり、嫌になったりしない?」
「いや、特に……」
何でだ……?何故そんなにメンタルが強いのか、理解できない。生まれついての物なんだろうか?それとも俺が弱すぎるだけなんだろうか?
なんか、急に八束が理解できない生き物のように見えてきた。
「あー。多分、前提条件が違う」
「ん?」
八束は目を細め、顎に手を当てた。
「別に俺にとっちゃ、失敗することは、苦痛でも何でもないって事」
「え?でも相手からは、嫌そうな顔されたり、するんじゃない?」
「まあ、されるね。でもそれが嫌って訳じゃない」
は?何?こいつドМなの?
え?今まで知らなかったけど、この事実は、流石に……ちょっと……引く。
俺が僅かに後ずさりしたのに、気が付いたのか、気がついていないのか、八束の表情は変わらない。
「だって考えてみろよ。俺の言動で、怯えてるんだぜ?ある種の全能感、つーか。まあ、やってみたら分かるわ。ちょっと楽しいぞ?」
……なんだ。ただの悪魔か。
なんか、今まで抱いてた感情、疑問なんかが、全て無駄だったように思えてきた。
確かに、ちょっと考えれば、こいつがドМなんて有り得ない。なんてことは、分かりそうなものだけど。安易な思考だった、とは思うけども。
流石にこれは分かんないだろ……。そして学べるべき点が、一ミリたりとも見つからない。
ただ、逆に安心してる自分もいた。八束らしい、うん。
こいつはこう言う男だった。……ほんと、気を使うだけ無駄だよなあ。
……いや、良かったわ。『嫌な顔されたら、嬉しい!』とか言い出すドМ野郎だったら……と思うと。今から考えても、身震いが止まらない。
うん。良かった良かった。
その気持ちは露ほども理解できないけどな!
「と言うか、このお金、どこから出たものなんです?」
話題転換の為、と言う側面もあるが、それ以上に、気になったので聞いてみる。
「普通に、国庫から出たものですよ。国から、勇者様お一人当たり、ある程度の金額を貰っていますので」
「え。まだ働いてもないのに、そんなに貰えるものなんですか?」
衣食住保証して貰った挙句、講師も付けてもらってるのに、更にお小遣いまで貰えるとは。
現代で例えるなら、ニートのヒモ男(彼氏では無い)が、女性にお小遣い貰ってる感じ?いや、女性ではなく、国に養って貰ってるから、また違うんだけど……。
「我が国に非のある話ですからね。それに、少しでも、我が国に協力してくれる勇者を増やしたい。と言うのもあるのでは?」
「あー、結局強スキル組以外は、あんまり乗り気じゃないしな。いや、そりゃそうだろうけど」
八束は、取り出した硬貨を、縦に積み上げて……いや、これなんて表現すればいいんだ?よく分からないが、何か物凄いものが目の前に出来上がっている。有名建築家がデザインした、建築物のような、複雑な構造。
最早、なにしてるんだ?と言う疑問よりも、凄いという感情しか浮かんでこない。
いや、しかし何やってんだこいつ。こんなの作ってた癖に、よく会話に入ってこれたな。
「それに、ほかの勇者様と比べて、カシオカ……いえ、お二人共、殆どお金を使いませんからね」
アンジェラさんの声に、慌てて我に返る。今は、目の前の通貨タワーよりお金の話だ。
「そうなんですか?他の人はそんなに浪費してるんです……?」
「そうですね。単純に、食事に飽きて、外食する方や、服を買っている方なんかも居ますが、一番は、修理代です」
あー、そういえば訓練の時に、色々ぶっ壊してた気がする。もっと広い所を用意出来れば良いのだろうが、まあ、無理だから破壊されてるんだろうな。




