勝利そして沈黙
敵は8本の脚で壁に這いつくばりながら、剣を壁へと打ち付ける。
「出て行けーー!!」
するとそこから皹が入り、四人を一気に襲う。
ライムは相手の攻撃を交わしながら、一気に壁をかけ上がると、相手の頭上目掛けて一気に降り下ろす。
「おりゃぁ!!」
だがそう上手くいくはずもなく、糸を別の壁に引っ掛け、素早く移動する。
相手のスピードもなかなかのものだ。
だが乗り移った壁には既にアゲハが構えて待っていた。
それに気づいた敵は手を出すのではなく声を発する……がそれを邪魔するアゲハ。
「出て行け……出て「だから出て行き方がわからねえっての!!」
「ディスコーダンス!」
どうやらやっとこさ音符の使い方や、音の使い方がわかってきたらしい。
呪文を唱えるとアゲハの周りには透明色のピアノの鍵盤が囲むように現れ、そこからなんとも言えない音色が鳴り響く。
「ぐぅうう!こしゃくな!!」
あまりの不協和音に身動きが鈍くなった隙に今度はマカが仕掛ける。
「ストームトルネード!」
その言葉で敵の回りが一瞬にして竜巻に包まれる。
アゲハもその場から距離を置き様子を伺う。
「どうだ?!」
竜巻が収まるとそこには奴の姿はない。
「やったか?」
「ど、どうだろう…」
二人が辺りの様子を見ていると、ライムがふと上を見る。
「二人とも!上!」
「「!?」」
上を見上げると、敵は二人を踏み潰しに掛かっていた。
「や、やっべ!」
「え!?」
だが、そんな窮地をライトが剣で払い落とす。
「大丈夫ですか?!二人とも」
「あ、ああ」
「ありがとう!」
払い落とされた敵はまたしても糸を壁に付け、難なく着地すると、次の攻撃を仕掛けるべくこちらに振り返る。
「バカが……」
そう呟くと当てずっぽうに糸を吐き始める。
ライムはその糸を避けながらも着々と敵の背後へ迫っていく。
(今だ!)
敵が糸を吐く瞬間少なからず隙ができるはず、ライムはその時を狙い撃ちした。
シュルシュル!!
「え……」
狙い撃ちをしようとしたが大きく振り上げた鎌は、上に張り付いていた蜘蛛のネバネバノ糸に絡まり、降り下ろすことも鎌から手を引き離すこともできない。
「ハハハ!!この糸はとった獲物は絶対に逃がさない!さて、まずはお前から食ってやろうか」
「い!いや!蜘蛛なんて絶滅したら良いのに!!」
至近距離までこられ、改めてみると、下半身は蜘蛛で、上半身は人間という奇妙な構造にゲームの中とはいえ、リアルすぎて気味が悪い。
だがそんなときマカの声が瞬く間に響く。
「わぁ!面白ーい!」
よく見ると辺りも糸が張り巡らされ、皆捕まっているではないか。
そして、身動きが取れず困っている中一人だけ上下に揺れて楽しんでいる者が1名。
「マ、マカさん」
ライトもこれには苦笑いを浮かべている。
一方アゲハは逆さ釣りで捕まり、干しもののようにぶら下がっている。
「ちょ!マカ!楽しんでる場合じゃないって!皆死んだらどうすんだ?!」
「お、それもそうだよね!!ここはあたしに任せて!」
ライムの一声で遊びを止めると真剣に考え始め、身動きの取れないまま呪文を唱える。
「皆死んだらごめんね、スヒュルブテンペスト!」
その謝罪と、呪文に驚きを隠せず顔が青ざめる三人をさらに豪風が襲う。
その風はそこだけでは飽きたらず、ついにはその屋敷おも貫き、あまりの豪風で屋根瓦が剥がれ落ち、壁は崩れ崩壊していく。
「……まさか、ここまで来てこんなラスボス級に会うとは」
「やベーな」
「吹き飛ばされちゃいます!」
その風は町を覆っていた厚い雲を吹き飛ばし、辺りは真っ青な空が顔を覗かせた。
すると、暴風とともに、物が鋭く切れ始める。
こんな状況で敵の方は無事であるはずもなく、無惨に切り刻まれデリートされた。
城も壊滅し、風が止んだ頃には跡形もなく、そこに城があったのかどうかも分からない、もはや瓦礫の山と化していた。
もはや地下の方は瓦礫に埋められ存在もしていないだろう。
そして、辺りには先程まで夜中のように暗かった町が月夜の明るさを取り戻していた。
それとともに静けさが辺りを漂っていた。




