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『メイドさんは出て行きたいッ!』~誕生日を忘れられたので辞表を書いたら、無自覚な家事技術で世界を救う聖女だと勘違いされました~  作者: 黒崎 凱


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第89話:『それでも、帰る場所』

――アイナから受け取った

『はちみつレモン水』を一気に半分ほど飲んだレナード。


直後……軽く咽ながらも、二人の帰還を喜び

笑みを浮かべていた彼は……一方で。


タオルで隠されているとはいえ、

『半裸』で――


……


「た、ただいま帰りましたっ……そ、それでその

ジッ……ジョセフさん、もしくはエドガーさんに

苦しくない服を着せて貰って下さい……ね?」


――危機的状況を抜け、皆が一安心していた頃

アイナは一人、頬を真っ赤に染め上げ

耳まで熱くなりながら、口をとがらせそう言った。


「ん?……なッ……ジョセフ、大至急私の服を。

アイナ、帰還早々嫌なものを見せた……すまない。

セシリアさんも……一度、食堂で休んでいてくれ。


後は、ジョセフやエドガーに引き継いで貰うとしよう」


「い、いえッ!嫌とかでは……と、兎に角っ!

しししッ失礼しますッ!……セ、セシリアさんも早くっ!」


「いえ、お気遣い無く……私には坊ちゃまが

『痩せ我慢』をされている様に見えておりますので

もう少し……お傍に控えさせて頂きます」


「……セシリアさんには勝てないな。

アイナ、君は気遣わなくても良いから……」


「い、いえっ!……痩せ我慢を否定なさら無いのであれば

わ、私も……い、居ますッ!」


……顔を真赤にしつつそう宣言をしたアイナ。

そんな彼女たち二人の愛情と気遣いに

少し、困ったような顔をしつつ――


「……分かった。

だが、余りマジマジと見つめてくれるな」


「み゛っ?!……見てませんっ!」


「あ、いや……そういう意味では……」


……ともあれ。


帰還早々……『ある意味』

いつも通り、と言った様子のアストラル家。


……この後、ジョセフとエドガーの手を借り

『寝間着姿』と成ったレナードは――


◆


「……帰還早々、驚かせて済まなかった。

色々と順序が可笑しくは成ってしまったが、改めて。


……アイナ、セシリアさん。

二人とも、良く帰って来てくれた。

改めて、今後とも宜しく頼む……」


――そう言って、深々とお辞儀をした。


だが……そんな彼とは対照的に、セシリアは

複雑な表情を浮かべて居て――


「坊ちゃま……いえ、レナード様。


一つだけ確認を……私の再雇用に関し

要らぬ気遣いを為さっているのであれば

光栄ではありますが、不要な気遣いです。


……無理に、私をお雇いにならずとも

私には人並み以上に蓄えもございます。


レナード様のご迷惑に成らない程度、且《か》つ

アイナの成長を見守る為、

アストラル家に通う事は在るかも知れませんが……」


「……待ってくれ、セシリアさん。

貴女は……自分を責めているのか?」


「ええ、坊ちゃま……いえ。

レナード様のお母様である、エレノア様への不義理。


……何を言って赦されるとは思っていません。

私は……私は、白を穢したのです」


――瞬間、心を閉ざした様に俯き

一筋の涙を流したセシリア。


……場の空気が凍りつく中、レナードは

アイナ以外に下がる様、命じ――


「……いや、アイナ。

悪いが、君は残っていてくれ。


君には、私が非礼を働いた時

止める役目として居て貰いたいんだ……構わないか?」


「は、はいっ……!」


……レナードの対応にアイナの表情は強張った。

だが、それでも覚悟を決め

彼の要求を受け入れたアイナ。


……暫くの後、レナードは

安全の為、尚《なお》も傍らに用意されていた

『はちみつレモン水』のグラスに触れながら

静かに、口を開いた――


「この一〇年、私はとても……苦労をした。


……貴女の判断は、一言で

良し悪しを答えられる様な過去《もの》では無い。

私は……とても寂しかった。


貴女に依って齎された我が家の白は

貴女が消えたあの日を境に、じわじわと濁り始めた。


それは、布も、屋敷も、人の心さえも……」


「ええ……仰られる通りです」


「……だが、セシリアさん。

貴女は、仕事とは言え……私達の前に再び現れた。


【家政管理院】と言う権力を掲げ……


……我がアストラル公爵家に、再び

温かな白を齎した、アイナ・リーネルと言う

『純白のメイド』を奪わんとする王都の手先として。


貴女は……現れたのだ」


――この瞬間。

レナードは、セシリアを断罪する様にそう言い切った。


明日掲載分より、1日1話へと変更されます。

ラスト10話ッ!

時間は夕方20:10分のままッ!


最後の一話まで

大切な読者の皆様とカウントダウンしながら

楽しめればと思っておりますッ!


ラストスパート、共に走り抜きましょうッ!


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