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『メイドさんは出て行きたいッ!』~誕生日を忘れられたので辞表を書いたら、無自覚な家事技術で世界を救う聖女だと勘違いされました~  作者: 黒崎 凱


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第48話:『興味』

――『王都からの新聞記者が多数押し寄せています』


少し遅めの朝、執事に依って齎された異質な情報と

その、状況は……アイナたちを取り囲む環境に

妙な変化を齎すことと成った――


……


「……無視を決め込むわけにもいかん。

とは言え、状況が分からん以上、

家に上がらせるわけにも行かんが……仕方ない。


例の部屋は使えるか?エドガー」


僅かに気乗りしない様子でそう問うたレナード

一方の執事、エドガーは

スッと会釈し――


「ええ、何時でも使える状態に整えてございます」


「よし……では、私も準備をするか」


――この後、少々慌ただしくなり始めたアストラル家。

そして、暫くの後――


◆


――“接遇室《レセプションルーム》”では。


使用人たちの手により、

人数分の椅子と幾つかの小卓。

そして、ティーセットが用意されていた――


『接遇室《レセプションルーム》』


――それは。

アストラル公爵家に於いて

外部の者を屋敷の奥に通すことなく

最低限の礼を尽くすために設けられた部屋である。


「……よし、用意は出来ただ!

あとは……レナード様、後から入られますだか?

先に待っておりますだか?」


「あまり時間を掛けたくない。

それに、外部の者を威圧するつもりもない。


……最初から居よう」


そんな中、メイド長が確認を取る――


「では、使用人の配置は如何《いかが》致しましょう?

必須の人員の他は……」


「それも最低限で構わない……だが。

“土産物”の用意はしておいてくれ」


そう応えたレナードに対し

アイナは、つい疑問を口にしてしまった。


「み、土産物……?

アストラル家って“名産品”ありましたっけ?!」


違う意味で場の空気が凍った……だが

直後、レナードはそんなアイナに対し。


「丁度良い……アイナに頼むとしよう。

厨房に、来客用の日持ちがする菓子類が在ったはずだ。


それらを人数分か、少し多めに見繕い

包装紙に包み、帰りに渡せるようにしておいてくれ。

それと……手提げの袋は不要だ。


其処までする相手ではない」


僅かに不快さを滲ませつつそう言ったレナードの様子に

これ以上、何かを言える筈も無く――


「わ、わかりました……で、ではっ!

用意してきますっ!」


――直後、逃げるように

接遇室《レセプションルーム》を後にしたアイナ。


◆


暫くの後、アイナは料理長に事情を説明し――


「……成程な。

当主様も面倒事への対応が多くて大変だな、全く。

よし……そのニュアンスなら。

茶菓子は敢えて“紋章入り”にしておくか」


――そう言うと、包装に用いる袋に

紋章入りの物を選んだ料理長は

内部に生成りの紙袋を差し込み、

紋章が焼き菓子の油で汚れてしまわぬ様、配慮をした。


……アイナは、目を見開き料理長の手腕を見つめている。

そして……一方の料理長は、僅かに照れた様に。


「なに、ちょっとした工夫だ。

包むべきは包む、見せるべきは見せる……


……此奴は、料理の基本でもあるんだ!」


「は、はいっ!すごく勉強になりますっ!」


「はっはっは!照れくせえなぁ!」


――暫くの後、料理長アルベルトの手腕のお陰もあり

無事に、人数分を僅かに超える手土産を用意したアイナは

レナードの待つ接遇室へと戻った。


だが……其処で待っていたのは

アイナの予想だにしない記者団の追求だった――


◆


「……どうなんですか?お答えをレナード公爵」


――接遇室の外に漏れ聞こえる記者の声

レナードは、それら全てに対し丁寧に応対をしていた。


『コンコン』


アイナは小さくノックをして入室した……だが。

この瞬間、記者たちの視線は全てレナードから

アイナへと向けられ――


「し、失礼いたしました……ご歓談の邪魔に……」


――精一杯、取り繕う様にそう言ったアイナ。

だが、記者たちはそんなアイナに対し

予想外の発言を繰り出した――


「……こ、この方が

聖女アイナと呼ばれる方ですか?!」

「先日の夜会での伝説的なお披露目以降

公の場には一切姿を現されず――」

「屋敷内では“白の聖女”、“守護天使様”と呼ばれ

崇められているというのは、本当でしょうか!?」


――呆然とするアイナ。

一方、接遇室《レセプションルーム》の奥では

レナードが密かに頭を抱えていた。


そして、“勘違い”は加速する――


「あ、あのっ!……とっ、遠いところから

お越しいただき有難うございますっ。

これは、ご足労頂いた事へのほんのお気持ちとしてっ!

ごっ、ご当主様から……」


――まで言いかけ、アイナの差し出した茶菓子に

記者たちは釘付けとなり――


「お、おい見ろ!紋章が入っているぞ……」

「本当だ……聖女様っ!

公式にレナード様との婚姻の予定は?!」

「レナード様との舞踏会では、レナード様が

聖女様との時間を長引かせるため、意図的に

楽団へ曲を遅らせるよう指示を出したとの情報も!……」


――矢継ぎ早に繰り出される記者からの質問。

直後、狼狽《うろた》えるアイナを助ける為か

レナードは立ち上がり――


「其処までだ……話なら全て、私が答えよう。

どうか、うちのメイドを怖がらせないで頂きたい……」


――僅かに、威圧感を漂わせ言った。

だが、これが“不味かった”――


「レナード公爵……つまりそれは

『俺の女に手を出すな』ということでしょうか?!」

「馴れ初めはどの様な……!」

「箱入り聖女様の正式な“嫁入り”は何時頃に……!」


――それは意図的なものか。


この後も……代わる代わる

誤解を加速させる記者団に対し

当主であるレナード……では、無く。


遂に、アイナは“ブチギレ”た――


「だっ……誰が

嫁入り前の箱入り聖女ですかぁぁぁッ!!!」


――接遇室《レセプションルーム》に響き渡ったアイナの絶叫。

だが……最悪の誤解の中、レナードだけは

何故か僅かに笑みを浮かべていた――


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